続きもの置き場

□デュエリスト
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【2】
「ナルトはアナタとは違う!」
イルカの叫びは、言葉以上の意味を持ってカカシの心に突き刺さった。
ああ、違うさ。
オレはナルトとも、アンタとも違う。
そう思った瞬間、カカシの頭に血が上った。
言わずもがなの挑発まで口にしてしまったのは、我ながらどうかしていた。
直情的な彼を長年見続けて、影響を受けた部分もあったかもしれない。

それでも、彼の道と自分の道はやはり交わらないのだ、と。
第七班を預かってからこのかた、こつこつと築いてきたイルカとの関係を、カカシは自ら捨て去ってしまったのだった。

しかし。
中忍選抜の二次試験が終わったあと、イルカはカカシの部屋を訪ねて来た。
自分が間違っていた、あのときの言葉はできれば忘れて欲しい、と潔く頭を下げる。

イルカが謝罪しているのは、手放した子どもたちのことに口出しした件だ。
それについてのわだかまりならばカカシにもすでになかった。
だが、あのときの彼の言葉は本質を突いている、その思いは消えない。
けんもほろろにあしらって追い返そうとするカカシに、イルカは訴えた。

「オレはっ…アナタのことももっと知りたいんです!」

思わず目を瞠ったカカシに、イルカはなおも言い募る。
「アナタは…オレの憧れなんです。信じていただけないかもしれませんけど…」
言葉に詰まって俯くイルカに、カカシは複雑な期待を込めて聞く。
「憧れって。一体オレのなにに?」

イルカは頬を染め、目を伏せたまま言いにくそうに答えた。
「カカシさんは…もちろん腕も立つと伺っていますし…仲間を大事にされる優しい方だと…」
「それだけ?」
顔を覗き込むと、はっとしたように後退って距離を取る。
「いえ…あの」
その表情と挙動に、カカシは確信した。
この人、オレに気があるんだ。

それはカカシにとって願ってもいないことだった。
だが、それはイルカがカカシのすべてを知った上でそう思ってくれるならの話だ。
あのとき、あの若君の命を巡って対峙したのがこのオレだと、わかってなおそう言うのなら。

いや。
わかっていなくともいいじゃないか、と囁きかける声がする。むしろ好都合だ、と。
暗部時代の話は、いかに彼が事務方でも知りようがない。
オレ自身が口を噤んでさえいれば。

カカシは腕を伸ばし、強引にイルカを抱き寄せた。
腕の中でぎくりと体を竦ませるイルカに、マスクを下ろしながら顔を寄せる。
「イルカ先生」
首筋まで紅く染めながらも、その黒い瞳はまっすぐカカシを見つめていた。
拒絶の色はないのを確認し、唇が触れんばかりの距離で言ってやる。

「教えてあげるよ。知りたいなら、いくらでも」

永い永い躊躇いの後。
イルカは泣き出さんばかりの顔で、観念したようにゆっくりと目を閉じた。
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