続きもの置き場

□デュエリスト
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【1】
はたけカカシは、上忍師となり第七班を率いることになるずっと以前からうみのイルカを知っていた。
といっても、直接の面識はない。
まだ暗部にいた頃、任務で彼を陰からサポートする役割を担ったことがあるだけだ。

表向きの任務としては、とある小国の大名家に現われた、亡き先代の隠し子が本物であるか見極めるというものだった。
その男の子は先代が政を退いて後、老いらくの恋で町娘との間にできたという専らの噂で、城下町ではすでに有名になっている。
お忍びながらその周辺で先代がたびたび目撃されていたこともあり、当代としても捨て置けない。
そこで、木ノ葉にお鉢が回ってきた。

城に迎えられた若君はまだ幼く、その剣術指南役兼身辺警護役を内外から広く募った。
イルカはそれに他国から応募してきた若い浪人の役だ。
怪しまれないよう公募の形はとったものの、内実は出来レースで彼が選ばれるのは決まっていた。
だが、その若君がほんとうにイルカ――当時は別の名を名乗っていたが――を気に入り、予定以上にすんなりとことは運んだのだ。

結果その子どもは確実に先代国主の血を引く者との結論に至り、外出の折りに賊の襲撃を装ったカカシたち暗部によって、
母親ともども命を落とした。
そしてイルカは。
刀を振るい、最後まで子どもを守ろうと戦い抜いて、重傷を負った。

彼は知っていたはずだ。
若君が本物だった場合は禍根を断つために始末せねばならないことも、襲ってきたのが実は木ノ葉の暗部だということも。

それでも彼は、本気で立ち向かってきた。実際、手傷を負わされた者もいたほどだ。
チャクラはいっさい使わず、立ち居振る舞いも太刀筋も、そしてその魂も完璧な侍だった。

彼は若君を守れなかったとしてその責を問われ、斬首は免れたものの傷も癒えぬうちに領外へと追放された。
そういう形で、その任務は完了したわけだ。

別途木ノ葉へ帰ったカカシは、改めて彼の素性を知る。
こういった任務で侍役を演じる訓練を受けた特別な忍。名はうみのイルカ。
居合は里でも屈指の腕前だということだった。

その後もカカシはイルカのことを気にかけ続けた。
彼の、臆さずまっすぐに向かってくる姿が、忘れられなかった。
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