続きもの置き場

□イノチガケ
9ページ/11ページ

【4】

"食われる"違いだ。
この上忍は、自分を抱こうとしているのだ。女のように。

突きつけられた事実にそんなばかな、と突っ込みを入れながら、イルカは激しい違和感に襲われた。
なんだろう、この感じ。
同性に抱きしめられ、肌をまさぐられていることについての嫌悪感は、不思議なほどない。
なのに、なにかむずむずとした、暴れ出したくなるような違和感がある。

ぐわんぐわんと頭の中がうねる感覚に耐えながら目をこじ開けると、そこにはカカシの銀の髪があった。
いつもは好き勝手な方向を向いているその毛先は、今は雨に濡れしっとりとうな垂れている。
なぜかそれをかき抱きたい衝動に駆られると同時に、イルカは電撃に打たれたかのように違和感の正体に思い当たった。

いまこの人がオレにしていることを、オレは逆にこの人にしたいと思っていた。
自覚はなかったが、オレもこの人に肉欲と――おそらくは恋情を、抱いていたのだ。

同じ想いを共有していたことは喜ばしいが、置かれた立場が無意識の妄想と違っている。
オレだってアンタを抱きたい。
その一心でカカシの手を押さえようとするイルカを、逆にカカシががっちりと拘束した。
とたんに、ついさっき感じた無力感が蘇る。
そうだ、この獣に敵うわけがない。

イルカの意識が白旗を揚げた。
文字通り"食われる"ことを思えば、ヤられるくらいなんだってんだ。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ