続きもの置き場
□イノチガケ
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【1】
「イルカせんせーっ!」
うみのイルカは、聞きなれたその声の主を探して視線を巡らせた。
果たして、アカデミーの校庭の彼方から金色の頭が一直線に彼めがけて駆けてくるのが見える。
くるぞ、と腰を溜めて構えると、ナルトは手加減なしでその胸に飛び込んできた。
先日背中に負ったばかりの傷に少々響いたけれど、イルカはおくびにも出さず笑顔でそれを受け止めた。
目を上げると、後から子どもがもうふたり、そのさらに後から大人がひとり、こちらに向って来る。
蝉のように自分にしがみつく子どもを下ろしながら、イルカは彼らにも笑いかけた。
「イルカ先生!オレたちこれから初任務なんだってばよ!」
「おお、そうらしいな。いよいよお前らも忍者か、がんばれよ」
言いながら、遅れて到着した子どもふたりの頭を撫でる。
サクラは、やだ、セットが乱れちゃう、と逃げるふりをして笑い、サスケは仏頂面ながらもされるがままになっていた。
それから、最後にやってきたただひとりの大人――この三人を率いる上忍師――にぺこりと頭をさげる。
「はじめまして、カカシ先生ですね。アカデミーでこいつらを受け持っていたうみのイルカです」
「…はたけカカシです。よろしく」
簡単に挨拶を交わしたところで、イルカは子どもたちの顔を見渡す。
「よし!元気に行ってこい!」
背中をぽんと押し出すと、ナルトはひと声「おう!」と叫んで再び駆け出した。
目顔で別れを告げてからそれを追うサスケとサクラを見送ったあと、イルカはカカシの方に向き直ってもういちど頭を下げた。
「あいつらを、よろしくお願いします」
目を上げたイルカは、はたけカカシの顔で唯一晒されている右目が、ふっと細められるのを見た。
そして。
「あの子たちに勝つのは大変そうですね、アナタの場合」
え、と意味を掴みかねて立ち尽くすイルカにぺこりと頭を下げ、カカシは子どもたちの後を追い歩み去った。