続きもの置き場

□約束の橋
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カカシが次にイルカを訪ねたのは二日後。
イルカは不在だった。
「…ええー?」
またしても無断で上がり込んだカカシは、冷蔵庫を覗いて思わず声を漏らした。
二日前に入れたものが、位置すら違えずに残っていたからだ。
もとからあったものも動かした形跡はなかった。
流しも風呂場も乾いていて、一滴の水も見当たらない。
「ずっと、帰ってきてないってこと?」
俄に不安になったカカシは、考えた末古なじみの忍犬を呼び出した。

(ごめんねイルカ先生、プライバシーの侵害って奴かもしれないけど)

しかしそんな罪悪感は返された答えの前に吹っ飛んでしまった。

「イルカは、里の中におらんな」
「な…んで?」
「ワシが知るわけなかろう」
にべもなく切り捨てられてもなお、カカシはパックンに詰め寄った。
「里の外でも、近くにはいない?痕跡だけでも残ってない?」
「ないな。休みを取らされてすぐ、里から出たと思われる。昨日は雨も降ったしな」
聞いているその声が遠くなっていく。
イルカ先生。
まさか、里抜けを?
「どうしよう…」
珍しく狼狽を隠さないカカシに、パックンは冷静に答えた。
「まずは火影に報告だろう」
二日経っている。遅すぎるくらいだ。カカシにもそれはわかっていた。けれど。

『サスケは、幸せ者ですね』
不意に耳に蘇った声。
里抜けのことでいつか交わした会話が脳裏に浮かぶ。
サスケが大蛇丸に狙われ唆されたのも、里がそのサスケを連れ戻そうとしたのも、その所有する写輪眼ゆえ。
だが、そのために組織された奪還部隊が取り戻そうとしたのは、その眼だけではなかったはずだ。

自分を見つけたのがオレなら、イルカ先生は幸せだと思ってくれるだろうか。
それが、知りたい。

「まだ、里を抜けたと決まったわけじゃない」
「カカシ…」
「抜けたんだとしても、連れ戻す。オレが」
カカシは決然と言い放った。
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