続きもの置き場

□約束の橋
1ページ/9ページ

「サスケは、幸せ者ですね」
居酒屋のカウンターで猪口を傾けながらイルカが口にした科白に、カカシは首を傾げる。
「幸せ、ですか」
「ええ。だって、里を抜けたのは状況的に明らかなのに、差し向けられたのは追討のための追い忍じゃなくて、
連れ戻すための友人たちだったんですよ?」
「あー、なるほど」
確かにそれは異例のことかもしれない。
結局、サスケは行ってしまったけれど。
「あいつに、それが伝わってればいいんですけどね」
「そうですね。今は無理でも、いつかわかって欲しいですね」
くたびれたふたりの忍は、遠くへ去った教え子に想いを馳せながら盃を干した。


まだサスケが里を抜ける前、イルカとカカシの間柄は教え子を介したつきあいに過ぎなかった。
一度その線を踏み越えて諍いを起こしたこともあったが、それが却ってイルカに分を弁えさせる結果になった。
しかし皮肉なことに、木ノ葉崩しとサスケの里抜けというふたつの負の出来事がふたりの距離を縮めたのだ。
弱体化した木ノ葉を支えるために身を粉にして働くふたりの忍は、知らず互いに歩み寄っていた。
たまに顔を合わせれば食事を共にするようになり、里を空けがちで自宅は埃の巣と化しているカカシのために、
イルカが風呂と寝床を提供したりもする。
男ふたり、付かず離れずの生活は不思議なほど心地よく自然に馴染んでいった。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ