ロイヤルナイツの姫君
□5章
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ドルモンは、大門家の屋根の上に立っていた。遠くに現れたデジモンを見つめる
「クレニアムモン・・・ん?」
ドルモンは隣に何時の間にか立っている人物を見る
「やぁ」
「・・・どうも」
「・・ロイヤルナイツは、今、人間界に居る者は全員イグドラシルの意思に反する」
「・・・ロイヤルナイツとて神の操り人形じゃない」
「・・・イグドラシルは、それを許さないだろう。かつての私の時のようにね」
「・・もう、選定はほぼ完了している。俺も、元の姿に戻れる」
「・・・遥か昔に私が撒いた小さい種は、無限の可能性を用いて、私が望む形となった。神は絶対ではない。そして、現神は神の座に居るべき存在ではない」
「貴方はどうするんだ?」
「・・・私は、もう前線を退いた存在だよ」
「・・・貴方が撒いたものだ。貴方はそれを見守る義務がある」
「・・・創世より君は変わらないな。あれに封じられ、記憶も封じられたと言うのに・・もう、全て思い出したのだろう?」
「それは、貴方もだ。貴方は何も変わらない。その昼行燈さで何を考えているのか分からない」
「フフフ、心外だなぁ;;」
「・・だけど、それ故に、貴方は狡猾だ。だから、神も気づかなかった。貴方の考えに」
「それで?君は、私を再度前線へ出そうと言うのかい?始まり」
「・・・俺は、そのつもりだ」
「・・・そう」
クルッと彼は立ち去ろうとしたが、2人ともハッと何かに気づいて空を見上げた。すると眩い光が空を染め上げる
「・・どうやら、イグドラシルが倒されたようだな・・いや、正確にはサーバー側と言うべきか・・直に本体が来るだろう」
「・・・貴方は!」
「・・・ロイヤルナイツを救おう」
「え?」
「・・暗き底に沈みし、命を。それに・・どうやら、大分、人間に影響を受けたらしい。私も、十分過ぎる程、親馬鹿なようだ」
タッと彼は去って行った。ドルモンは空を見上げる
「・・・神イグドラシル。貴方は道を誤った。命、絆、想い、それを尊ばない者に神たる資格は無い」
ドルモンは現れた白い影を見上げていた。光希は、イグドラシルが現れたのを見て、小百合の静止も聞かずに走り出していた。息が切れて何度も倒れそうになるのを耐えながら、タッタと走る
『はぁ・・はぁ・・・はぁ』
足が縺れて、とうとう倒れ込んだ。だが、瞳はイグドラシルが現れた場所を見つめている。行かなければいけない。何としてでも、あの場所へ。起ちあがろうとするとスッと彼女の前に立つ影。見れば
『はぁ・・はぁ・・アル?』
「・・光希」
『・・アル』
「俺は君の望みを叶えるよ」
『・・アル、あそこに、行きたいの。行かなきゃいけない。皆が、居るから』
「・・ぅん。分かった、行こう」
ドルモンはドルグレモンに進化すると彼女を背に乗せて翼を広げた
「乗って、光希」
『ぅん・・・ぁ』
彼女の視線の先にはイグドラシルの前に立つロイヤルナイツ。その中に居る白い聖騎士
『オメガモン』
ドルグレモンに乗ると今度は彼方から飛んでくる紅い騎士
『!・・デューク、モンっ』
「行こう、光希」
『ぅん!』
バサッと漆黒の翼が力強く羽ばたいた。辿り着くとロイヤルナイツが全員でデジタルワールドを支えていた
『みんな!』
彼女の声にロイヤルナイツ達が視線を向ける
「ぁ!光希!マグナモン!光希だよ!光希!」
「そんなに言わなくても分かってる;;」
「フッ、やはり無事だったか」
「あれからも大事ないようで安心したぞ」
「無事で何よりだ、光希」
「・・・光希」
オメガモンの蒼い瞳がフッと優しげに細められる。瞳が「無事でよかった」と言っているようで彼女は嬉しくなった。だが、上空でデジタルワールドを支えるデジモン達へ降り注ぐイグドラシルの攻撃。それはロイヤルナイツ達にも襲い掛かった
『!・・やめて!』
彼女は、イグドラシルを見上げる。イグドラシルは彼女に「私の元へ戻れ」と言った
『え?』
「そなたは、我が後継たる資格を有している。だからこそ、私の元へ戻るのだ」
イグドラシルの言葉に彼女は理解できない。それは、他の者達も同じ。だが、ドルグレモンはそうではなかった。彼女を下して、イグドラシルと彼女の前に立つ
「イグドラシル!貴方は既に道を踏み外している!だからこそ、光希が選ばれた。全ては貴方の失態だ!」
「黙れ!オマエとて裏切り者であろう!」
「俺は、貴方に忠誠を誓った覚えは無い!我が主君は、光希だけだ!」
『・・アル?』
「・・・」
ドルグレモンは、長い首を凭れて彼女に顔を近づけて、スリッと擦り寄った
「ならば、ロイヤルナイツ共々、滅びよ!!」
イグドラシルの攻撃が周囲のデジモン達やロイヤルナイツへと迫る
『やめてぇえぇえーーーーーー!!!!!』
彼女の胸元にあったデジメンタルは呼応するように強い輝きを放つ。それは、結晶を変化させ、杖状に変わった
「まさかっ!?」
「光希!その杖を掴んで」
『え?・・ぅん』
パシッと掴むと杖の先端にある結晶が輝き、天空へ伸びる程の一条の光となった。光が収まると上空に彼女の姿があった。だが、先程までのセーラー服姿ではない。フワフワとした巫女のような姿。羽衣が纏われ、背には蝶々結びされた帯がフワフワと羽衣と共に風に靡いた。神々しい姿に全員が唖然とする。イグドラシルは焦りを見せた
「おのれ!」
「さぁ、審判はなされた。イグドラシル、即刻、神の座より降りてもらおう」
ドルグレモンはフワッと彼女の傍に行くとその姿を変えた。漆黒の鎧と裏地が蒼い白のマント、その姿にロイヤルナイツは驚きの顔を見せた
「あれは・・まさか」
『・・アル?』
「・・そう。俺の名は、アルファモン。ロイヤルナイツの1人」
『・・アルもロイヤル、ナイツ』
「そうだよ。最も、俺の場合は、ロイヤルナイツ内での抑止力的な存在でもあるけどね」
『?』
「光希、君に・・いや、君達に全てを話そう。君の持っていたデジメンタルは、選定する為の物。嘗て、あるデジモンがイグドラシルの元から持ち出した審判プログラム」