ロイヤルナイツの姫君
□初めての小さき温もり
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ロイヤルナイツの1人。その顔から、幼年期デジモン達が大泣きしてしまうという人物。クレニアムモン。彼は、目の前の同僚にありえないと言う顔を向けていた
「オメガモン。今、なんて」
「・・光希を頼む」
「・・・冗談だろう?!」
クレニアムモンは叫んだ
「オマエ、何を言っているのか、分かっているのか!?」
「あぁ。十分に」
「私に、光希を預けるだと?!」
「あぁ」
「マグナモンは?!」
「今日はアルフォースブイドラモンと外勤だ」
「ロードナイトモンとデュナスモン!」
「急遽入った任務で外だ」
「エグザモン!」
「四聖獣に呼ばれて出かけている」
「・・・」
「そして、デュークモンと私もこれから長期任務だ。世界樹内に居るのは、オマエかドゥフトモンくらいだ」
「・・・・・・ドゥフトモン、か」
「つまり、オマエしかいないのだ、クレニアムモン;;」
オメガモンはポンッと彼の肩を叩いて「では、頼んだ」と言って去って行った
「・・・て、私は;;」
クレニアムモンは溜息を吐きつつ、チラリと自分のベッドで眠っている少女を見る。起こさないように近づいて寝顔を見る
「・・・可愛い」
顔に似合わず、意外と彼は可愛い物好きである。ただ、その顔故に怖がられて泣きまくられてしまうのだが
『ん〜』
「?!」
パチリと開いた蒼い瞳がクレニアムモンの目と合う
「・・・・・・・・ぁ;;」
『・・・』
キョロキョロと辺りを見回してから、うるっと彼女の瞳に涙が溜まっていくのでクレニアムモンは、わたわたと慌てた
『ぅ、ふぇっ;;』
「ちょっ!?た、頼むから、泣かないでくれ;;」
また、顔で泣かれると思ったクレニアムモンだが、彼女は
『ふぇ・・オメガモン、どこぉ?』
「・・・え?オメガモン?」
『ぇっ、ふぇっ、ぇぐ;;』
「オメガモンは、任務で暫く帰って来ないんだ;;」
『ふぇ?・・に、んむ?・・お仕事?』
「ぁ、あぁ。だから、その間、私と居るように、と・・だから、その;;」
『・・・くー?』
「?」
ピョンッと彼女はクレニアムモンにピッタリと引っ付いた。驚く彼に彼女は「くー」と彼の名を言いながら、スリスリと擦り寄る
「・・・っ///」
『?くー?』
「・・いや、なんでもない。そ、それより、何かあれば、言うんだ、ぞ;;」
『ん。分かったぁ〜』
(・・・本当に私を怖がってない。初めてだ。こんな、の)
とりあえず、お腹が空いたと言うのでオメガモンが置いていったデュークモン特製パンを渡すとモグモグと美味しそうに食べている彼女。その間にクレニアムモンは黙々と書類整理を終えてしまう。それが済みチラリと見れば、ベッドでコロコロと転がっている彼女。実に暇そうだが、声を掛けなかったなと思う
「なんだか、暇そうだな」
『ぁ、くー。お仕事、おわった?』
「え?・・あぁ。もしかして、待っていたのか?」
『ぅん』
「暇なら、話し掛けてきても良かったんだが」
『でも、くー、お仕事。邪魔しちゃうもん。お仕事してる時、邪魔しちゃダメ』
「・・光希、それは、誰に言われたんだ?」
『?ま〜ぐ』
「あぁ〜、マグナモンか;;」
『邪魔しないで良い子にしてたら、お仕事はやくおわって、そしたら、あそんでくれるからって』
「・・あぁ、まぁ、確かにな;;」
『まーぐ、ぶーいお仕事のときは、ぜったいにって言ってたよ』
クレニアムモンは「確かに」と思った。アルフォースブイドラモンに仕事中に行こうものなら絶対に仕事そっちのけで彼女と遊ぶことを選ぶだろう。マグナモンはその辺を十分に分かってるから彼女に言ったのだろう。ただ、子ども、と言うのは言われてもこんなに物分りが良い訳が無い。幼年期デジモンとて手が掛かる。いや、彼女よりもとてつもなく手が掛かる。彼女もデジモンに置き換えれば、幼年期〜成長期くらいだろう。なら、言われて、分かりましたと大人しく出来ないはずであるし、スレイプモンからの情報でも分かる。なのに、この物分りの良さは何だろうか。やはり、自分と我らが違うことも分かっているからだろうか?だが、今、思うのは、何をして遊ぼう。正直、何をして遊んであげたら良いのか分からない。アルフォースブイドラモンなら、考えずに遊ぶ方法を思いつくだろう。マグナモンはそれを見たりしているから、その中から、自分で出来るものをチョイス出来るだろうし、ロードナイトモンは彼女の可愛さをより可愛くする方法を模索し、写真を撮りまくってそうだ。デュナスモンやデュークモンは、何だかんだで遊ぶ方法を思いつくだろう
「・・光希は、普段、何をしてもらっているんだ?」
『?ん〜、ぶーいね、お空一緒に飛ぶよ。まーぐもしてくれるし、お菓子くれるの。ろーはね、いっぱいいろんな服着せてくれるの。りゅなは、写真とったりして、良い子良い子してくれる。あとろーとりゅなの時は、おちゃかいするの』
「・・あぁ〜・・;;」
正直、ロードナイトモンとデュナスモンの場合は、普段と大して変わらないなと思う
『えくじいちゃ、お茶入れてくれるよ。ろー達のとこで飲むのと違うお茶くれるの。美味しいよ。あと、オセロとか、はしゃみしょうぎとかするの』
「エグザモンのところは、娯楽の物が置いてあったな。和風のが主だが」
『がんはね、帰ってきた時に、たかいたかいしたり、あたま撫でてくれるの』
「がん?・・あぁ、ガンクゥモンか」
『えすもだよ』
「えす・・ジエスモンか」
『あと、お菓子もくれる!いろんなお菓子』
「あぁ。彼らは旅しているからな」
『りゅーくは、絵本読んでくれるし、パン作ってくれるし、グラニ乗せてくれる!』
「・・デュークモンはな;;」
ある意味、彼は色々と熟知している。話では、成長期時代に色々遊んだからだそうだ。だからかと思うが
「・・・光希」
『なぁに?』
「オメガモンは?」
彼は年間のイベント事も知らないし、デュークモンのように成長期時代と言う記憶も無い。そうした子ども遊びなど知らないだろう。彼は、何をしてあげているのか?
『オメガモンはね!良い子良い子してくれるし、抱っこしてくれるし、ギュってして一緒に寝てくれるよ』
「・・・遊びは;;」
彼女の言葉だと、遊んでると言うよりは、かまってる。そんな気がする。だが、正直、あの堅物なオメガモンが絵本を読んであげていたり、ごっこ遊びなどをしているとか有り得なさ過ぎるし、ある意味大丈夫かと思いたくなるから、まぁ、良いのかと思う
『くー、あそぼ』
「え?あ、あぁ・・・な、何を?」
子どもなど相手にしたことも無いクレニアムモン。何をしてあげればいいのか分からない
『ん〜、とね。ギュってして』
両手を広げて言う彼女にドキンッとした。壊れ物を扱うかのようにドキドキしながら、腕に抱くと嬉しそうな彼女
「こんなことで良いのか?光希」
『うん!ギュってしてもらったり、なでなでしてもらうの大好き!みんな、優しいもん!』
笑顔で見上げてくる彼女は、本当に良い子だとクレニアムモンは思うし、ドキドキと胸が高鳴る。そっと頭に手を乗せて、なでなでと撫でる「えへへ」と嬉しそうにする
「・・・」
(可愛いな)
ベッドに抱いたまま横になると彼女の方はスリスリと擦り寄り腕の中ですやすやと眠ってしまった。クレニアムモンは、心が温かくなるなと思いつつ、つんつんと頬を優しく突いたり、撫でたりするとふにゃっと笑う彼女。「暖かいな」と思いつつ瞳を閉じた
それから、3時間後。早足で世界樹内を歩くオメガモンとそのやや後ろからクスクスと笑いながら追いかけるデュークモン
「クレニアムモンに任せているのだから大丈夫だろう?我が盟友オメガモン」
「そんなことは分かっている」
「・・そう言いつつ、足早だが?」
「最初に泣いているんだぞ。それでもドゥフトモンよりはと思って預けたのだ。大丈夫ではあるだろうが、泣きだしていないか」
「・・オメガモン、親バカと言う言葉を知っているか;;」
「なんだ、それは。とにかく、思ったよりも早くに終わったのだからな」
「・・早くに終わったと言うか、終わらせたと言うか・・物は言いようだな我が盟友よ」
そう今回の任務。本当なら、夜遅くに帰ってくるぐらいかかるはずだった討伐任務。それをオメガモンがガルルキャノン連発で敵を焙り出し、出てきた奴らはデュークモンに任せて、敵の本拠地を入口からガルルキャノンをぶち込んだ。ついでにいえば、本拠地の入口を特定するために上空からガルルキャノンやらグレイソードの衝撃波を辺りに連発した。だから、基地含め、周辺は焼け野原やら、氷漬けやら散々な状況になってしまったのだが、依頼したデジモン達も何か言いたかったが、オメガモンの苛々が分かったらしく、何も言えず、オメガモンが急いで帰った後でデュークモンが彼らに謝罪してからオメガモンの後を追っていた。デュークモンは、本当に別な意味で疲れた。そう考えているとガチャガチャと音がしたと思えば、ガチャッとオメガモンがグレイソードを構えて、扉を切り開けようとしていたので全力で止めた
「とにかく!オマエは下がっていろ!オメガモン!!」
「何だと!こっちは、今、散々」
「とにかく!!下がってろ!!馬鹿者!!!」
台詞を盗られて、渋々下がったオメガモン。デュークモンは、コンコンっと叩くが応答が無い。ただ、扉は鍵が掛かっていなかったので、開けて入ると目の前の光景に微笑むが後ろからオメガモンの怒鳴り声が聞こえたので慌てて、彼の口(?)を塞いだ
「むぐぅっ!?むぐぐ?!」
「静かにしろ、オメガモン。光希が起きてしまうではないか;;」
そう言われて、チラリと見るとクレニアムモンと光希がすやすやと眠っている。近くには、絵本が開いたままであるので読みながら寝てしまったのだろう。だが、すやすやと気持ちよさそうである
「どうやら、杞憂だったようだな、オメガモン」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・ふむ。彼女を取られて不満そうな感じか、我が盟友よ」
「・・・・・・煩い」
プイッとそっぽを向いたオメガモンにデュークモンは「フフフ」と笑った。するとモソモソと動いたクレニアムモンは目を覚ました
「・・ん?なんだ?」
上体を起こせば、目の前にオメガモンとデュークモンが居たので驚いたが、デュークモンから「鍵が掛かってなかったぞ」と言われて、「そういえば」と呟いた
「それにしても、早かったな」
「あぁ。思いのほか早く終わったのでな」
「・・そうか」
「・・・・・・;;」
オメガモンはチラリとクレニアムモンの腕の中を見ている。それに気づいたクレニアムモンは彼女をオメガモンに渡した
「・・まぁ、迷惑をかけたな」
「フフ、いや、大丈夫だ。また、何かあれば言ってくれ」
「!・・そうか」
スタスタとオメガモンは光希を抱えて去って行った。デュークモンは深い溜息を吐いたのでクレニアムモンは「どうした?」と聞いた
「・・いや、クレニアムモン。今度から、勤務変更を考えていきたいのだが」
「?どうしたんだ、一体」
「・・いや、早くに終わったと言っていたが、正確には、早くに終わらせたと言うのが正しい。それと、近々、苦情が来ると思う。敵の基地周辺のデジモン達から;;」
「・・・なんだか、嫌な予感がするが・・・まさか、ガルルキャノンとグレイソードであぶり出したのか;;」
「有無を言わさずな。しかも、今回が討伐だったからか、本拠地が分かるや否や、入口からガルルキャノンだ;;」
「・・・あぁ、なるほどな。そうだな。今度は私が行こうか;;」
「・・・・・・出来れば。もう、ある意味、疲れた;;」
「お疲れさまだな、デュークモン;;」
ポンッと彼の肩を叩くとデュークモンは「ホントにな」と言って、テクテクと去って行った。オメガモンは、自室に帰ってからベッドに彼女を寝かせて、風呂へ向かいシャワーを浴びる。その途中でデュークモンが返ってくるとシャワーを浴び終えたオメガモンが早々に戻ってきて彼女を抱えるとベッドに潜り込んでしまった。しかも、すぐにすやすやと寝息まで聞こえてきたのでデュークモンはイージスをタライ代わりにオメガモンの上に落としてやろうかと本気で思ったという