ロイヤルナイツの姫君

□11章
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オメガモン達は、大門家にやってきた。大門英には今回の件のこと先に話してあったので家には元DATSメンバーが揃っていた。其処には黒髪の彼も


「・・アルファモン」

「・・・・・・」

「・・やはり、着ていたか始原」

「・・・あぁ。3ヶ月程前から人間界には来ていた」

「なに?」


アルファモンの言葉にオメガモンはピクッと反応した


「・・アルファモン、3か月も前から人間界に来ていた理由は何だ?今回の件と関係があるのか?」

「あぁ」

「!・・ならば、何故、報告をしなかった!」

「・・・確たる証拠も無いのに、報告をしろと?」

「〜〜〜っ;;」


オメガモンとアルファモンの間にピリピリと緊迫した空気が流れる。薩摩の肩に成長期に戻ったスレイプモンことクダモンも2人の間に中々入れないようだ。目の前の2人が双子の兄弟であると知ったのは、まだ、アルファモンが世界樹に居た頃に知り、しかも、生真面目で堅物なところがあるオメガモンと違い、アルファモンは結構、自由で報告書もろくに提出する気が無く、臨機応変でこれで、アルファモンの方が兄ということが驚きだった。そんな2人の間に流れた空気にクダモンや英達が声を掛けれずにいると


「・・我が盟友オメガモン」

「・・・デュークモン」


デュークモンが声を掛けた


「立ち話もなんであろう?それに、光希を休ませねば」

「・・・・・・」


チラリと腕の中の彼女を見る。すやすやと眠る光希。彼女を案内された部屋に寝かせ、彼女を英の妻である小百合と大の妹、知香に任せ、オメガモンは1階のリビングへ戻ってきた。アルファモンは七大魔王に起こった事件を調べていたという。イーターが何処から出現したのかを調べていたら、人間界のある電脳空間にいきつき、人間界にやってきたらしい


「その電脳空間の名は、EDEN」


アルファモンの言葉にトーマが説明をする


「EDENとは、神代エンタープライズが作り上げた電脳空間のことだ」

「そのEDENつぅのは、何なんだよ」

「アバターと呼ばれるアカウントで世界中と繋がることができる、簡単に言えば、チャットの一種だ」

「へぇ〜・・だけどよ、それが」

「・・大、人の話は最後まで聞け」

「っ、分かったよ、父さん;;」

「トーマ君、続けてくれ」

「はい。ここ最近、そのEDENは一気に拡大した為に神代エンタープライズも同時に一大企業になったんだ」


次にアルファモンが再び話し始める


「・・その通り。ただ、イーターによって、アバターが襲われる事態も起きている。ここ最近、人間界で起きている未知の病、通称、EDEN症候群と呼ばれているが、それが起こっている」

「なぁ?そんな大事件が起きてんのになんでそのEDENってぇのは続けていられるんだよ?今でもやってんだろ?」

「その通りだ、大門大。君の言う通り、今でも、EDENは活動している」

「その理由は僕が話そう。神代エンタープライズは政治的にも大きな力をつけているんだ。つまり、政府は手を出せないというわけだ」


そこまで話をして、英達も神代には、どう手を出して良いものかと思っているらしい。そこでアルファモンが「だが」と話す


「政府は手を出せないが、此方からは手を出せる」

「・・始原、その根拠は?」


インペリアルドラモンの言葉にアルファモンは答えた


「どうということはない。あえていえば、人間界でDATS以外にも信頼出来る者が居たというだけだ。君達、DATSは聞いたことが無いか?中野にある電脳事件も扱う探偵、「暮海探偵事務所」」

「それならば、聞いたことがあるな。確か、様々な事件を取り扱うという・・特に電脳犯罪においては高い実績を誇っていると」

「そう。その探偵のところで少々厄介になっているんだが、最近、EDENにおける犯罪が多くなってきていたんだ」

「・・・愚兄、それと今回と」

「そのEDEN症候群の原因が、メインサーバーを襲ったイーターだと言ったら?」

「!何ッ」

「ふむ。アバターの精神データを食らう。イーターに襲われた者は、データ破損でバグ化し、目覚めない、とそういうことか?アルファモン」

「あぁ。その通りだ、デュークモン。EDEN症候群患者は現在、神代が背後に居る病院で隔離され、患者家族も面会できないから、状況を知る術が無い」

「そんな状況でどうやって、その情報を」

「暮海探偵事務所には、優秀な助手が居るのさ。とにかく、暮海杏子には俺から話しておく。後日、会いに行くべきだろう」


そこまで話すと知香が慌てて降りてきた


「どうした、知香?!」

「大兄ちゃん!お父さん!光希姉ちゃんが目を覚ましたのッ!でも、様子が」

「!」


オメガモンはすぐに彼女の横を通り過ぎて、階段を駆け上る。その後に、デュークモンや英達も続く。ガチャッと部屋の扉を開けるとベッドで上半身を起こした光希が居た


「光希!」

「・・・・・・?」


扉前で彼が名を呼ぶ。チラリと彼女はオメガモンを見るが、ぼぅっとしたままだ。皆が辿り着いた時、彼女はオメガモンに向かって、有り得ない言葉を呟いた


「・・・・・・・・・・・・貴方は、誰?」

「!?なっ?!」


小百合の話では、自分の名以外、何も思い出せないらしい。理由は、1つだろう。オメガモンは有り得ないという顔をしたまま、立ち尽くした。デュークモンは彼を引っ張り、部屋から出す。他の者も、廊下で話始める


「やはり、メインサーバーが浸食を受けた時、か」

「だろうな。記憶データを盗られたとみて良い」


アルファモンはチラリと見る。オメガモンは隅で座り込んだままで唖然としていた


(私のことを、覚えていない?光希が?)


視線をデュークモンに移すと彼は「暫くそっとしておいてやれ」と言いたげな瞳で溜息を吐いているのでアルファモンも溜息を吐きつつ言う


「とりあえず、向こうは俺の方で調べる」

「・・なら、私も行こうか。手は多い方が良いだろう?始原」

「あぁ。DATSメンバーも」

「うむ。我らも協力は惜しまん」

「そうだぜ!そんなイーターなんて野郎は俺がぶっ飛ばしてやる!!」

「おうよ!兄貴〜!」

「・・・ぶっ飛ばしたら、オマエがEDEN症候群に掛かるぞ、大門大;;」

「うぇっ?!マジかよ;;」

「・・俺の話、聞いてたよな?大門大;;」


溜息を吐くアルファモンだが、DATSメンバーから「大はこういう奴だから」と言われて「大丈夫かな」と本当に心配になったのだった。暫くして、食事の準備の為に小百合達は1階へ。インペリアルドラモンは彼女に記憶喪失であること、両親の死亡、そして、自身が祖父であることも説明した。幸い、彼女は酷く混乱した様子もなかったらしい。それから、アルファモン達と合流。今後のことについて1階のリビングで話し合っている。オメガモンは、暫く廊下の隅で座り込んだままだったが、立ち上がり、目の前のドアを開けて中に入る。再び、眠っている彼女に近づく。寝顔も全て、何も変わらない彼女なのに、今、此処に居る彼女は覚えていないのだ。神イグドラシルであることも、自分のことも何もかも。開かれた手に触れるとモソッと動いて、握ってきた。縋る様に


「・・・光希」


握られていない反対の手で頬を撫でると表情は少し安心した寝顔になった。それにフッと笑う。仕草は何も変わらない。記憶を無くしているなら、不安なはずだ。どうしたらいいのか分からず、しかもイグドラシルとして大きな力も持ち得ているなら尚更。なら、今の自分がすべきことは


「・・・光希。例え、私のことを覚えていなくても、傍に居る。護ってみせる。必ず。だから、せめて・・・傍に居させてくれ」


額に軽くキスを落とす。唇を離せば、下の方からデュークモンが自分を呼ぶ声が聞こえたので、手を離し、マントを翻して、彼女に背を向け、部屋を出ていった。それから、数分後に彼女は目を覚ました。誰もいない部屋をぼぅっとした表情で見つめる


『・・・誰か、居た様な気がしたんだけど』


ふと右手を見る。何故か、暖かい


『寝ている間に・・・誰か・・握ってくれていたのかな?』


反対の手でもう一方の手を持ち、頬に当てる


『・・・暖かい』
(暖かくて、優しい手・・だった気がする。誰だったんだろう?)


ぼぅっとしたままで彼女はベッドから出る。音も無く扉を開けて、ゆっくりと階段を下りる。リビングの方を見れば、白い後姿。その姿にどこかドキッとしたが、それが何を意味しているのか良く分からず、キッチンの方を見れば、小百合と知香が夕食の支度をしている。その姿に重なる


『・・・ママ』


足は自然と玄関へと向かった



パタンッと扉のしまる音が聞こえて、オメガモンは廊下の方を振り向いた


「・・・今」


小百合と知香も音がしたので玄関を見るが誰も居ない。オメガモンは気になって、階段を上がると彼女の居るはずの扉が開いていた


「!まさか」


扉を開ければ、ベッドに彼女が居ない。なら、先程の音は。オメガモンは階段を飛び下りて、玄関を開けて、外に飛び出した。外は、人通りは無い。辺りを見回すが彼女の姿は無い。気配も何も感じないのは、彼女が無意識に気配を殺してしまっているからだろう。空は、どんよりと黒い雲が広がっている。オメガモンはタッと走り出した。人間界であるが故に飛んで捜すわけにもいかず、走って捜す。息遣いは荒くなる。だが、見つからない。その時、ふと公園の前を通ると足が止まる。公園のブランコに座る見慣れた後姿。ポタポタと雨が降り始めた。オメガモンは、ブランコに近づく。後姿は彼には気づかない。ただ一言「ママ」と呟いた


「!・・・・・・」


ふと降る雨が掛からないことに気づいて、振り返った後姿・・光希は見上げる。マントで自分に雨が掛からないようにしているオメガモンが居た


『・・・・・・ぁ』

「・・・こんなところに居たのか。随分と捜したぞ」

『・・・・え、と』

「・・・私はオメガモン。ロイヤルナイツの1人だ」

『・・オメガモン、さん?』

「・・・・・・」


チラリと見れば、彼女は裸足で雨も勢いを増し始めた。オメガモンは、彼女を抱え上げて、自身のマントを彼女に掛けると公園内の屋根のある所に入る。木でできたベンチに彼女を座らせ、足に触れる


『!・・』

「・・ジッとしていろ」

『・・・・・』


足の裏に触れて、傷が無いか確かめているようだ。切れた様子もないことを確認して、ホッとする


『・・どうして?』

「・・・我ら、ロイヤルナイツはオマエを護ることが使命だからだ」

『・・なんで、私を?』

「・・・オマエが・・光希が、新たな神、イグドラシルだからだ」

『え?・・・・・・そ、か』

「?」


もっと驚くものだと思っていたのだが


『良く、分からないけど・・急に体が大きくなってたり、不思議な力があること・・なんでだろうって思ったけど・・・言われて、分かった』

「・・・・・・」

『・・・でも』

「記憶を、無くしているのだ。光希は。だが、我らは、傍に居る。分からないことがあれば、聞けばいい」

『・・・ねぇ』

「・・なんだ?」

『・・・オメガモンさんは、私と、どういう関係、なの?』

「!・・・」

『・・あの時、他の人と感じが違かったから』


彼女の言うあの時とは、記憶喪失になって初めて目を覚ました時だろう


「・・・そう、だな。今、話しても、信じられないかもしれない。だが」


スッと彼女の頬に触れる


『・・・ぁ』

「オマエは、私にとって、大切な存在だ。護るべき主君だからではなく、それ以上に」

『・・・オメガモン、さん?』

「・・オメガモンで良い。記憶をなくす前、オマエはいつも私をそう呼んでいた」

『・・・オメガモン』

「・・・あぁ」


優しく撫でる手に気持ちよさそうに瞳を閉じた




(暖かい。握っていてくれた手は、貴方だったんだ)





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