ZXA小説

□Zを取り戻せ
1ページ/21ページ

「時代はいつも変化を求めている!」

珍しくアルバートの研究室に呼ばれた四天王ズとツキリたちを前に、部屋の主は突然叫びだしました。

唐突に騒ぐオッサンを目前に一同は始終ポカンとしており、ツッコミを入れるつもりもない様子。サンルにいたっては三角フラスコを触っており、彼の話など全く聞いていません。

のっけから大スベリしたオッサンは一旦手を腰に当て、ごほんとわざとらしい咳をして本題に入ります。

「本日君たちに集まってもらったのは言うまでもない。ZXAのラストで行方不明となってしまったライブメタル・・・モデルZの事だ」

ライブメタル、モデルZ

その名を耳にしたヘリオスたち四人の適合者は目の色を変え、モデルZを知らないツキリは首を傾げてキョトンとしています。

「おじさまー私部外者だからモデルZとか全然分からないんだけどー」

「あっ、そうかそうか。そういえばツキリは知らなかったね」

声のトーンを少し明るくして対応するアルバート。三賢人の科学者は、子供に甘い。

「簡潔に説明するとヘリオスたちが持ってるライブメタルの仲間。そんでもってガーディアンの所有物」

「ああ!ポニーテールちゃんの物って事だね!」

正確にはヘリオスたちが所持しているライブメタルたちもガーディアンの所有物だったりしますが、ツキリはその事実を知りません。

ツキリが納得したところで、アルバートは話を戻します。

「ウロボロスが沈んだ後も私とプロメテたちで消えたモデルZの調査を行っていたんだ。それで、つい昨日ようやくモデルZの場所を特定する事に成功した」

「何だと!」

叫んだのはアトラスです。モデルZにはちょっとした借りがあるため、いつか仕返しをしてやりたいと思っていた所でした。

「あの時アタシたちを足止めしたヤツが生きていたとはな・・・復讐するいい機会だ」

「ライブメタルに生死があるのかは知らないけど・・・モデルZが手に入ったら憂さ晴らしできる他にも、色々とメリットがあるね」

アトラスの素なのかボケなのか判断がつかない台詞にツッコミを入れ、テティスは状況を冷静に分析するとアルバートは頷き

「テティスの言う通り、モデルZが手に入れば新たな適合者を迎え入れる事ができる。つまり・・・」

「また一人増えるってコト?」

投げかけてきたツキリの言葉に、アルバートは再び頷きました。

運命のゲームで戦う相手が増えるのはあまり喜ばしい事ではないため、適合者一同は苦い顔をしていますが、ツキリはちょっぴり嬉しそうです。

「そりゃいいじゃん!また一人増えて、さらににぎやかになるってコトだよね!ちょっぴりワクワクしてきた!」

「食いぶちが一人増えて何が良いんだか」

ヘリオスがため息交じりで悪態をつきますが、ツキリは輝かんばかりの笑顔を向けて

「いいじゃん。どうせ食費や光熱費とかはおじさまが持ってくれてるんだし」

「それぐらい知っている。それより鬱陶しい笑顔を今すぐやめろ」

「ああ・・・今度はできるだけオタク文化に理解を示してくれる人がいいなぁ・・・アトランさんは若干染まってきたところだし。もう一人増やして止めをさしたいなぁ」

まだ見ぬ新メンバーを想像するツキリの瞳は、恋する乙女のような輝きを放っており、嫌悪感がこみ上げてきたヘリオスは、黙って顔を逸らしました。

するとツキリの発言に不満を持ったアトラスが吠え始めます。

「待てツキリ!アタシのどこがオタクなんだ!どう見ても健全な一般人だろう!」

「健全なのは認めるけど、ツキリが進めたゲームにどっぷりはまって前作やら続編やら買いあさって、挙句の果てにはツキリがネット通販で買った同人誌を全部読破しちゃった人がオタクじゃないって言いきれないよね?」

さらりと言ってのけたテティスの指摘に、アトラスは目を丸くし、割と大げさに驚きを表現すると彼を指して

「なっ、なぜテティスがその事を知っているんだ・・・?」

「全部見てたもん。一緒に暮らしていれば嫌でも目に入るんだし」

相手の目を見ずにさらりと言い切ったテティスに反論するより先に、シャルナクがアルバートに発言します。

「ライブメタルモデルZ。場所ノ特定ガ最優先ト提案」

「ああ、そうだったね。もう少しでツキリたちのペースに乗せられるところだった」

危ない危ない、とアルバートは汗をぬぐう素振りをした後パチンと指を鳴らしました。

すると天井からスクリーンが降りてきて、さらに部屋の電気が消えたかと思うと、スクリーンに地図のような画面が映りました。

「おお。ハイテク」

ツキリが感心すると同時に、突然の暗闇に驚いたサンルがフラスコを落としてしまいました。

「後でそこの掃除しといてね。・・・では、あーあーオホン」

フラスコを割ったサンルを指して言った後、どこかで聞いた事があるわざとらしい咳払いをして、説明を始めます。

「モデルZの反応があったのは今この地図に出ているあさりが丘海岸。海に落ちたモデルZがここに流れついた可能性が高い」

「あさりが丘海岸ってなんだ?」

アトラスの質問に答えたのはアルバートではなく、瞳を輝かせて振り向いたテティスでした。

「あさりが丘海岸は貝の名スポットだよ!毎年潮干狩りシーズンになると貝がたくさん採れるし、冬にはカキが採れるんだけど限りなく天然に近い方法で養殖されてるってだけあって超絶品!何度もテレビ取材を受けてるほど人気なんだよ!さらに夏の海開きになると・・・」

これ以上喋らせると小一時間程観光スポットや海についての話題を話続けるため、アトラスはテティスを見ずに彼の口を塞いで

「もう結構だ」

会話を強制停止させました。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ