ZXA小説
□バレンタインファンタジー
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バレンタインデー当日。
世の中の多くの男女がそわそわする今日この頃、朝食を終えたツキリは皆を呼びとめバレンタインデーのチョコレートを渡そうとしていました。
「では、毎年恒例ツキリの手作りチョコレートを配るよ。今年もパウダーとのマッチが超絶妙なトリュフチョコ詰め合わせだよ」
ニコニコしながら彼女は冷蔵庫から、昨日徹夜して作ったラッピング済みのチョコレートを取り出すと、一人一人に手渡していきます。
「まずティー君」
「わーありがとうツキリ。毎年楽しみなんだー」
受け取ったテティスは笑顔を見せて答えました。本当に楽しみだったようです。
「次にダンナと影さん」
「ふん。お返しなどしないぞ」
「・・・感謝」
あんまり素直ではないヘリオスと、表情は全く変えませんが一応喜んでいる様子のシャルナク。全く素直ではありませんね、前者が
「それからメテ公とパンちゃんにも」
「おっ、サンキューツキリ」
「嬉しい・・・」
まるで友達からジュースでも貰った様な様子のプロメテと、小さく微笑んで素直に喜ぶパンドラ。彼女が喜ぶ理由は、この箱の中身がトリュフではなく、ドーナツマンをモチーフにしたツキリ特製ドーナツマンチョコレートだからです。普通のチョコレートでは、彼女はこんなに喜びません。
「さらにサンルとベニちゃん」
「ツキリありがとー」
「・・・ドーナツマン・・・」
ニッコニコに微笑んでサンルは元気よく礼を言い、自分がもらったチョコレートの中身が、パンドラの物と全く同じだということを知っているベニは、早速箱を開けています。行動が早いです。
さて、最後に回されたアトラスのチョコレートは一体なんでしょうか。彼女は黙って自分のチョコレートの登場を待ちます。
「最後はアトランさんだね。えい」
小さな掛け声と共にツキリは壁を叩くと、叩いた壁の横が上下に開き、そこからベルトゴンベアが出てきて、その上を流れてきたのは透明なケースに包まれている巨大なチョコレートケーキ。ウェディングケーキぐらいの大きさはあります。
そのケーキのあまりの大きさと、いつの間にかできているハイテクシステムに、アトラスを除く一同は呆然として
「ツキリ・・・一体これは何・・・?」
「何言ってるのティー君。君はチョコレートケーキがわからないほど幼稚な電子頭脳を持っているの?」
「そうじゃなくて!こんな巨大な、ウェディングケーキ上等な大きさのケーキ、一体どうやって作ったの!?」
「愛と勇気」
自信たっぷりに言い切るツキリに、テティスは何も言い返せなくなりました。
さて、自分に送られるチョコレートがウェディングケーキ上等なサイズの、巨大チョコレートケーキだと知ったアトラスは、それを呆然と見上げた後
「ツキリ」
「何?」
褒めてくれるかな?褒めてくれるかな?とご飯を貰う直前の子犬のようにワクワクしているツキリ。尻尾があったら高速で振っていることでしょう。
アトラスはそんなツキリを見ると、ぽんと彼女の肩を叩き
「今年もすごいなお前!」
「でしょう!」
この瞬間アトラスに甘党疑惑が浮上しました。前からあったような無かったような気がしますがそれはさておき
「去年のケーキより豪華な上、大きさも倍増しているな。しかも所々細かい所もある」
「でしょう?この日のために私、お菓子作りの本とかウェディングケーキ載ってる雑誌とか、他にも参考になりそうなもの一杯買ったんだ!一ヶ月前から!」
正月終わってからコイツ漫画以外の本買うようになったな〜と思っていたプロメテは、今のツキリの台詞で色々と納得ができました。
「今回のケーキは一週間で食えるか疑問だな・・・」
「大丈夫だよ。アトランさんならできるできる」
出来てもらっても困るよ。byテティス
「よし、じゃあ早速部屋に持って帰って食うか、これアタシの部屋に運んでおいてくれ」
「アイアイサー!」
びしぃ、と敬礼したツキリがもう一度壁をばしんと叩くと、ケーキはベルトコンベアと共に壁の向こうへと消えていき、上下に開いていた壁は何事もなかったかのように閉まりました。
「このハイテクシステムは一体・・・」
唖然とするヘリオスの耳に、このシステムはアルバートがツキリにせがまれて作り上げたものだという真実が入るまで、後二分五十秒・・・
さて、アトラスは自室で一人、ツキリに貰ったチョコレートケーキを食べていました。
「まさか壁を叩くだけでケーキが出てくるなんてな」
システムを作ったアルバートに関心しながら、彼女は豪快に手でケーキを食べていました。
ちなみに今彼女が食べているケーキは、ツキリが作ったウェディングケーキ上等なサイズのケーキを何分の一にカットしたモノで、本体は壁の中にしまってあります。壁を叩いたら出てきます。
「あのオッサンも無駄な仕事するなぁ」
関心しているのか呆れているのかわからない表情でアトラスはぼやきました。多分後者だと思われますが