ディスガイア小説
□天使と悪魔と時々幼児
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「そうよね〜アレは即効性だし、すぐ効かないとなると天使には効果がないって事になるのかしら」
「当然だ!悪魔が使う毒など私には・・・」
威勢よく喋っていたと思ったら、突然糸が切れたかのようにその場に崩れ落ち、そのまま倒れてしまいました。
「あれれ?」
彼が動かなくなったことに疑問を覚えたリアス、頭を叩いたり髪の毛を引っ張ったりしていますが反応はありません。
「時間差だったか・・・」
主犯と言えば良い発見したなぁとぼやくだけでした。
森の中で一番大きな木。森の中に生えている木々とは比べ物にならない大きさの巨大樹です。そのふもとには巨大樹からするとミニチュアハウスのような小さな家がぽつんと建っています。
家の中はお世辞どころかお世辞すら使うのをためらう程散らかっています。テーブルらしき所には食べ物の残骸と汚れに汚れている食器が散乱しており、床は埃とカビだらけ。
窓もいたる所に汚れがあり、森の薄暗さと部屋の汚さもあってか、太陽が真上に昇っている時間帯にも関わらずランプを付けなくてはならないほど暗いです。
悪魔であってもこの汚れに異常さを覚えるほど汚い部屋の中
「はっ!」
森の中で迷子になっていた天使が目を覚ましました。テーブルのすぐ近くにあるソファーの上、叩けば叩くほど埃が出る汚いソファーです。
気だるさを押しのけながら首の後ろをおさえ体を起すと
「・・・」
天使の膝の上に手を乗せながら、凝視している子供と目が合いました。
青い髪の女の子は何度か瞬きをした後、パッと明るい笑顔を作ります。
「しっしょ!しっしょ!おきた!」
はしゃぎながらテーブルの方へ向かうので、急いで目で追うと
「あら、死んでなかったのね」
テーブルの上に座って干し肉を食べている女悪魔の姿がありました。間違いなく森で出会った悪魔です。出会い頭に吹き矢を使ってきた非常識な悪魔です。
「貴様はさっきの・・・ここは貴様の根城か!」
「そーよーれっきとした私んち。築何百年のボロっちぃ小屋。住み心地は・・・70ぐらいかな?」
何を基準で言っているのかは全く不明です。天使の彼にも、キョトンとしている少女にも分かりません。
干し肉を食いちぎり、歯ごたえしかない固い肉をよく噛みながら彼女は続けます。
「アンタが眠った後、放置して木の肥やしにしてもよかったんだけどそれはそれでおもしろくなさそうだし、わざわざここまで運んでやったわ。感謝しなさい」
「なんて上から目線・・・元はといえば貴様が私を眠らせたからこうなったのではないのか」
呆れてため息をつく天使は、さっきから薄暗くて埃っぽい部屋の居心地の悪さに顔をしかめ、宙に舞っている埃の塊を手で払い退けました。
「アンタの言い分なんてどーでもいいの、アンタ天使でしょ?今まで悪魔しか迷い込まなかったこの森に天使が迷い込むなんて初めてだわ。私はそっちの方が気になるの、だから教えなさい」
自己中心的な発言もここまでくると大したものです。おまけにテーブルの上に座るマナーの悪さといい、彼にとっては気に喰わない事ばかりが続くため、睨んでしまっても仕方ありません。
「誰が貴様なんかに教えるか」
「じゃあ金くれ」
「ハァ!?」
突然の話題変更と同時に金品要求。天使愕然。
テーブルから降りた悪魔は天使の前に立つと、いきなり顔を近づけて彼を指し
「この森は大体200年前から私のモノになってるのよ?そこに入ってウロウロしてたアンタは間違いなく不法侵入者、私有地に許可なく入るのは犯罪よ。罰として有り金全てを置いていくか私に服従するかのどちらか好きな方を選びなさい」
当然のごとく言う彼女ですが、それは全て天使にとっては初耳でした。
「私有地だと!?何を根拠にそんな事が言える!土地なら看板でも立てておくのが普通だろう、そもそも私はここに来たくて来たわけでは・・・」
弁解の最中でも悪魔は容赦も遠慮もせず「シャラァップ!」と叫べば顔を離し、今度は干し肉で天使を指して
「言い訳無用よ!理由はどうあれアンタは森に入ってしまった、その時点でアウトなの。自分のためだろうが他人のためだろうが物を盗めば罪人になる!それと一緒なんじゃないの!?」
「理屈が分からん!」
「私が分かればいいのよ!」
「よくないわ!」
二人の口論を間で聞いている少女といえば、見知らぬ男と師匠を交互に見ながらぼんやりしているだけ。肝が据わっていますね、将来どうなるのやら