ディスガイア小説
□地の果てまで血を愛して
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その内の一つを取り出し、赤い液体とラベルをまじまじと眺めて苦い顔
「日付と名前だけじゃなくてどの部位からの出血かも事細かくメモってやがる・・・」
「キモイな」
「つーか血を集める時点できめぇよ」
瓶をボックスの中に戻して蓋を閉め、念のために鍵もかけて施錠完了。これで厳重に物を保管しているだけのクーラーボックスになりました。怪しいです。
「おいレトン、本当にあの変態天使の気味悪ぃコレクションが金になんのか?」
黄金色の鍵をレトンに手渡しそんな疑問。
血の入った瓶はほとんどが手のひらサイズであるため輸血にも使えそうにないため病院関係者にも売れそうにありません。
しかし、レトンは笑いながら鍵を受け取り素早く懐に入れると
「なるってなるって、いーい取引相手見つかったんだーしかも貴族ときた!懐には庶民が目玉飛び出る程の大金抱えてるハズだからな。アニューゼの血液コレクションが大金になるぞー」
しししと怪しく笑うダークサイドに墜ちた自由人は片手でクーラーボックスを叩きます。今日の彼の頭には金のことしかありません、罪悪感など発生するハズもない
「なぁ、コレ全っ然開かないぞー」
一人盛り上がるレトンの横から出てきたのはソネリー、取っ手が付いている小型の金庫を抱えて頬を膨らませていました。
女の子が好きで男嫌いに定評のある彼女ですが、今日は珍しくウェイルとレトンと共に行動しています。普段なら好き好んで男と手を組むなんてありえないのですが・・・
「んなもん番号が分からなかったら開くワケねぇだろ馬鹿」
早速噛みついて来たのはウェイル、行動を共にしているとはいっても相手と仲良くする気は一切ありません。自分のために働いてくれればいいとしか思っていないのです、悪魔の良い手本です。
上から見下す態度に加え、嫌いな男にそうされてしまえば彼女の表情も険しくなり
「ムカッ。言われなくても分かってるしーただ状況報告しただけだしー今からぶっ壊すつもりだしー」
生意気な口調で言い返せばウェイルを睨みつけます。売られた喧嘩は買う主義のウェイルも当然睨み返し、両者一歩も引かないにらみ合いの火ぶたが切っておとされます。
「はーいはーいはーいはーいしーつれーいしまーす」
ふざけた台詞を出しつつも二人の間にレトンが割って入ってくるまで30秒ぐらい睨み続けていました。
「金庫を壊したら中身までしっちゃかめっちゃかになるから下手な真似しちゃマズイって、ここは俺に任せとけ」
ヘラヘラ笑いながらダイヤル式の金庫に手をかけくるくる回し始めます。金庫破りする時は聴診器を着けるハズですが彼にそんな物は必要ない様子。適当にダイヤルを回しているようにしか見せません。
どうせ開くワケないだろう。ソネリーもウェイルも呆れた目で見て
「別に野郎の手を借りなくてもアタシ一人で十分だっつーの」
「んなもんテキトーに回したところで開かねぇよ」
時間の無駄じゃねぇのと呆れ、中身を傷つけないように金庫を破壊する方法を思案し始めた時にがちゃり
「開いたぞ!」
『マジ!?』
一応隠密行動中なのですがそれも忘れて狭い場所で絶叫。声が上へ下へと反響して耳障りな雑音へと変化します。
まるで最初から番号が分かっていたかのようなあざやかさで金庫を開けた自由人「騒ぐなよー」と注意しつつも笑い飛ばし、金庫の中身を取り出します。
「んー?今までのヤツよりも小さい瓶がいっこだけ、しかもラベルが付いていない?」
親指と人差し指で小瓶をつまんでじっくり眺めてみますが、ラベルがないだけので他の瓶とは何の変りの無い血液入り小瓶。
「何でだ?他の血と何の違いがあるって言うんだ?」
レトンだけでなくソネリーも首を傾げ、ウェイルが舌打ちをすれば
「わざわざ金庫に入れてるなんてよっぽど大切な物なんじゃねぇの?同じヤツにしか見えねぇけど」
「まあ保管場所が違ってても結局中身は同じ血だもんな、一緒にしても問題ないかー」
細かい事は気にせずにレトンはクーラーボックスの鍵を外して蓋を開けて文字通りぽいっと・・・ではなくそっと優しく入れました。割れたら困るので繊細に扱います。
それと同時進行でソネリーは空になった金庫をポイ捨て、空のまま置いておけば誰かが使うかもしれませんが、鍵の番号知りませんよね?
「金庫の中も血だったし、本っ当に金目のモン持ってねぇんだなあの変態天使。どうやって生活してんだ?」
「天界にいた頃は天使兵の仕事で生活費稼いでたんだろうけど、今はどうしているのやら」
レトンは再び施錠したクーラーボックスの上に足を組んで座り、腰のホルスターから銃ではなくゲーム情報の載った雑誌を取り出します。しかしホルスターにはちゃんと銃が収まっています、なのに雑誌が出てきます。不思議ですね
雑誌のページを適当にめくり「あれ?魔界ウォーズまた発売延期になったの?」とある意味ブラックな発言をしていると
「あんな奴の生活にはこれっぽっちも興味ないけど、他の金目の物なら見たぞ」
頭の隅に追いやっていた記憶を引っ張り出してソネリーが一言。雑誌に夢中のレトンは聞いていませんが
「見たなら何で持ってきてねぇんだよ。持ち逃げしようとする魂胆じゃねぇだろうな」
一言も聞き漏らさなかったウェイルはソネリーを睨みます。本当に持ち逃げするつもりならわざわざ打ち明けたりしませんが置いといて
意外にも睨み返さなかったソネリーはぽつりと「本来ならそうするつもりだったんだけどな・・・」と述べ、ウェイルの目つきをより一層鋭くさせて。
「枕元に十字架があったんだよ、真ん中には見たことのない綺麗な宝石が埋め込まれた高そうなヤツ。売ったら金になりそうだと思って盗ろうとしたんだけど、それに手を伸ばすと絶対に叩き落とされてさぁ」
やれやれと言いつつソネリーは手の甲を見せればそこは赤く腫れていました。しかも片手ではなくて両手、痛々しい光景です。