ディスガイア小説

□見合いコワせ
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魔王城から1000里ほど離れた場所にある櫓異唖瑠ホテル。既婚率現象問題打破のための見合いはここのポーティ会場で行われます。

1000里というとかなり遠い気もしますがここは魔界、時空ゲートさえあればあっという間に移動できます。世の中便利になったものです。

いつもは約束の時間を守らない悪魔ですが今回ばかりは5分前集合している悪魔が大半を占めていました。悪魔らしからぬ行動の裏には、結婚したい想いがにじみ出ています。

「おおースゴイなーここがあの超高級ホテル、櫓異唖瑠ホテルかー」

手伝いを切り上げ見合いのために訪れたチャチャマ、地上25階まである高い建物を目前に首を限界まで上げて物珍しそうに鑑賞。完全に田舎者の姿です。

彼女の手には見合いパーティの招待状がしっかり握られています。白い便箋にピンクのリボンが絡まっているオシャレなデザインは人間界のデザインを参考にしたとか

「さて、いつまでも見てるわけにはいかないしそろそろパーティ会場に行くかなーっと」

軽い口調で受付まで進むチャチャマ、どこまでも陽気な彼女はお見合いの重大性や既婚率低下の深刻性を理解しているのでしょうか





所変わってホテル中庭。

櫓異唖瑠の名に相応しく隅々まで手入れされた美しい庭、緑豊かで噴水からは清水が流れ、花壇には赤、黄、白などのバラが咲いています。

魔界らしからぬ庭園には、本来ならこんな高級ホテルに来るべきではない人物三つの影

「さて、何の苦もなく到着したのはいいけどこっからどうするかしらね・・・」

『・・・・・・』

植木の陰からパーティー会場の覗いているのはメーレです。引きこもりの彼女が部屋から出て、こんな所で監視の目を光らせています。

その後ろにはリアスとアリナ。大変不服そうな趣でメーレを睨んでいました。

「おいメーレ、俺たちをこんな所に引っ張り出しておいて何だ?よく分からんお見合いとやらの見張りでもしろっていうのか?どうなんだよ」

「いくら暇だからって監視するために呼び出すなんて迷惑極まりないわ、引きこもりのアンタが付いて来いって頼んできたから私たちは仕方なく付いて来ただけよ」

「登場するなり文句タラタラね、さすが今時の悪魔っ子」

覗くのをやめて振り向けば、不満のオンパレードを撒き散らす二人を見据え、腕を組んで話を始めます。

「アンタたちを連れて来たのは他でもないわ、この鬱陶しい見合いをブッ壊してチャチャマを結婚させないようにするためよ」

『何で?』

当然の反応です。予想がつく返しではあるのですがメーレは顔を引きつらせて気まずそう

下手に誤魔化せば変な誤解をされてしまうかもしれない。背中に一筋の汗が流れるのを感じ取った引きこもりは鼻を鳴らしつつ答えます。

「強いて言うならもしチャチャマが結婚なんてしちゃえば私の世話がおろそかになっちゃうかもしれないでしょ?そうなれば私の生活に支障が出てしまう、それを防ぐために見合いパーティーをブッ壊すことにしたの、分かった?」

『へー』

言い分は分かりましたが「あのお節介のことだから結婚してもお世話は怠らないと思う」という感想が頭の半分を占めています。

「お見合いしてほしくないなら言えばいいのに」リアスはそう言いかけようとしてやめました。こういう歳を召した女悪魔ほど頑固なモノはない上、一つ文句を言えば百倍になって返ってくることは経験済み。主に師匠で

離し終えた年増は二人に背を向け再び木の陰からパーティー会場を覗き見。ここからどうやって見合いパーティーをブチ壊すのか皆目見当もつかない二人は不満そうな趣のまま言葉を投げかけます

「お前の言い分とか動機は分かった。それで、仕事を無事終えたらいくら払うつもりなんだ?」

「は?」

とっさに振り返ったメーレが見たのは後頭部で手を組んで返事を待っている自称男の女戦士。いきなり金の話が出て来るとは思わなかったため、大きく口を開けて愕然としています。

アリナも同様にぽかんとしている様子ですが、リアスはリアクションなど気にも留めず

「俺らはお前に頼まれたからめんどくさい労働をしなきゃならない、もちろんタダ働きするほど俺は気前の良い悪魔じゃないし働いたら労働に見合った報酬を払うのが世の中の常識だろ?お前たちのいざこざには一切の興味もわかないしな」

最もな言い分にメーレは口をつぐみ、アリナは感心した声をもらします「アンタにしてはよく考えてるわねー」というお褒めの言葉も添えて

反論の余地もないのかメーレは苦い顔を浮かべ、少しの間黙ります。考えて考えて・・・やがてリアスから目を逸らすと

「多分金塊がまだ余ってたハズだしそれあげるわ。今は金の値段もそこそこ高いし高値で買い取ってもらえるはずよ」

さりげなくとんでもないことを言い出してまた見張りに戻りました。

あまりにもありふれた事のように話すのですから、二人は喜ぶのも忘れて唖然として

「えっと・・・金塊・・・?しかも余ってるってどういうことよ・・・」

「複雑な事情があるのよ。あまり詮索するんだったら報酬のランク下げるわよ」

「よし、あまり深くは追及しないで俺たちのやれることをやろう」

「そうね」

光の速さで納得した二人、文句も疑問も口にせずメーレの指示に従って黙々と作業を進め始めるのでした
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