ディスガイア小説
□隊長と部下、雨の日編
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それは彼が魔界に落とされる前の話
今日は天界全土を雨雲が覆う悪天候。分厚く黒い雲からはバケツをひっくり返したような雨が降り続け、やむ兆しは一向に見えません。
「雨、やまないね」
雨粒が窓にぶつかり、水滴がゆっくりと下に落ちていく雨の日のある光景。飽きもせずにぼんやりそれを眺めているのは悪魔討伐隊の女天使兵リペでした。
顔にコンプレックスがある彼女、常に被り物をして顔を隠しています。今日はひょっとこのお面です。詳細は各自調査すること
「今日は一日中どしゃぶりなんだって」
他愛もない言葉をぼやいたのはリペと同じ悪魔討伐隊の女天使兵マリィ。外にも出れず暇をしているのか、一時間前から兄のコーリーとあやとりをして遊んでいました。
「美しくない空だよね、こんな日は家にこもってマリィと遊んでいたいけどそういう訳にもいかないのが現実だよ・・・」
「ところでお兄ちゃん、なんかブログの時とキャラ違わない?」
「だってあの時はまだキャラ固まってなかったんだもん」
「二人ともその発言ストップ・・・」
何も考慮もせず自由な発想と発言の二人にリペは静かに慌てるばかり。この三人は大体こんな感じです。
そこまで広くない個室、壁には天井まで届きそうな高さの本棚とほんの少しの収納スペースがあり、木製のテーブルがあるだけの地味な部屋です。
ベル率いる悪魔討伐隊が人気が低く、さらにベル自身も問題児とされているためあんまり待遇がよくありません。そのせいで事務所がこんなに狭いのですが、自業自得なのでベルは言い訳すらしません。
マリィとコーリーは特に不満も無いのか文句を言おうとは思っておらず、逆にこれを利用してフリーダムに過ごす毎日。危惧しているのはリペぐらいです。
そんな中
「ただいまぁ〜・・・」
悪魔討伐隊隊長ベルがいつもの元気が70%ほど失われている挨拶を繰り出しつつ部屋に入ってきました。
元気がないのも当然です。なんせ彼女は頭から水をかぶったように服も髪も全身ずぶ濡れ状態、髪から水滴が伝って落ち、足元に水たまりが出来ています。
「うわっ隊長!ずぶ濡れびしょびしょのぐっちょぐっちょのごろごろじゃないですか!」
あやとりをやめてすぐさま駆け寄ってきたマリィ、関係なさそうな擬音が飛び出しましたが全員スルー。慣れているので
「もー急に振って来ちゃって大変だったのなんのって・・・傘もないからもう濡れ濡れ」
「お疲れ様です、タオルどうぞ」
「あら、ありがとう」
リペがタオルを差し出して来たので快く受け取り、ニッコリ微笑みました。ちょっと照れくさいのか少し俯いてもじもじし始めましたがお面のせいで台無しです。
「あーふかふかぁ〜やっぱ天界綿100%のタオルはいつでもふっかふかよねぇ〜」
タオルに顔を押し当てて幸せそうな声色と表情、雨のせいで憂鬱だった気分も少しは吹き飛び夢見心地になっていました。
すると、あやとりの紐をしまいつつコーリーが席を立ち
「このままだと風邪をひいてしまうかもしれませんし、俺たちは外に出て待ってますから着替えちゃってください」
「着替え、ここに置いておきまーす」
どこから出したのかはあまりツッコまず、マリィはちゃっかり用意していた着替えをテーブルの上に置いて満足気。
「おっ!手際がいいねぇ助かっちゃうよ」
ベルはタオルから顔を出し、部下の優秀さに目を丸くするのと同時にちょっとした感動を覚えました。子供が成長するのを眺める親の気持ちってこんな感じなのか・・・
口に出すのは恥ずかしいので心の内にとどめておくとして、さっさと退室する三人とすれ違った所でふと足を止め
「そういえば・・・アニューゼは?」
『まだ戻ってません』
三人共、同時かつ振り返らずに答えて扉を閉めました。
「そう」
一人取り残されたベルは短く返した後、一度小さく息を吐いてタオルを着替えの横に置くと、突然目の色を変えて天井を睨めば
「いちいち報告だけでいらないことをネチネチネチネチ言ってもうウザイ!お前は嫁をいびるのを生きがいに感じる姑かっつーの!それを目の前で言っただけであんなに怒らなくてもいいのに・・・本っ当ムカつく」
声を大にして上司の悪口を独り言、誰かの悪口を公共の場で言うべきではありませんがそこまで大声で言うのもどうかと思われます
「一言多いのは向こうの方だって言ってんのに私のことばっか言って!自分の事棚に上げてなーにが平和のためですか、アンタは自分の平和しか考えてない堅物上司でしょーがー、これも言ったら顔真っ赤にして怒ってきたのよねーなんでかしら」
当然です
ここで豪語されている独り言の全てが扉の向こう側にいるマリィたちに筒抜けとは夢にも思わないベル隊長、腹部にあるリボンをといてぐちゃぐちゃにしたままテーブルに置きました。
「あーゆー上司にはならないように気をつけなくっちゃね、部下の信頼が一番大事なんだし」
最もらしいことを言いながら服をさっさと脱いでいき、リボンと同じくぐちゃぐちゃにしたまま置いていきます、性格が出てていますね。
「今日中に資料まとめとけとか悪魔よりあくどいんだからあの上司、お陰でシャワーを浴びる時間もありゃしないわ」
とうとう全部脱いですっ裸になりました。あまり日に焼けていない白い肌と、夜魔族並の抜群のプロポーションが目に眩しいです。
ナイスバディなアイドルを名乗ってもおかしくない天使はタオルを掴むと胸の前に持ってきて
「いつまでも廊下で待たせてるのも悪いし手早くすませちゃお。アニューゼもそろそろ戻って来るだろうし・・・」