ディスガイア小説

□片想いの受難
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いつものような魔界の一日。いつもと変わらない魔界の一日

「さて、今日はどうするか」

魔界に修行(建て前)に来て早数か月、魔界のシステムには慣れても悪魔嫌いは治らない天使兵オルソドは、随分暇そうに魔王城広間をウロついていました。

丁度ローゼンクイーン商会の近くを通ると、よろず屋から出てきたリアスとアリナと鉢合わせ

「あ、オルソドだ」

「平和そうな顔してるわねー、後日談だから事件が全く無いって言っても平和ボケしすぎなんじゃないの?」

「のっけからメタい発言するな。というか別に平和そうな顔なんてしていない」

軽く内部事情に触れた所でオルソドは嫌悪感丸出しの表情で顔を背けます。天魅の友人だと言っても悪魔は悪魔なので

そのまま踵を返し、二人の前から立ち去ろうとすると

「それよりお前暇だろ?ちょっと手伝え」

突然言葉を駆けられて振り返れば、リアスが果物が入った小さなバスケットを差し出しているのが目に入りました。

この状況はよく考えなくても荷物持ちを任されようとしていると分かります。そうでなくともこの悪魔嫌いが悪魔から差し出された物を受け取るハズがありません。

不信感&嫌悪感120%の趣でバスケットとリアスを交互にみやれば

「どうして僕がお前たちの手伝いをしないといけないんだ。悪魔に力を貸すなんてゴメンだし、借りたくもない」

やや丁寧な口調でも悪魔に対する憎悪を含ませるのは忘れません。天魅に一目惚れする前の彼だったら問答無用で刃を向けていました。

アリナが今にも噛みつきそうな勢いで睨んでいますがリアスはそれを制し、ニヤリとほくそ笑むとこう言い返します。

「天魅が風邪ひいたって言ってもか?」

刹那、オルソドの顔が強張りました。





「天魅さん!」

扉の金具を一つ破壊しながら開けたオルソドは断りもなく天魅とユイカの相部屋に入ってきました。

ベッドにいる天魅もベッドサイドの椅子に座っているユイカも突然の登場に目を丸くして驚き、一瞬言葉を失ってしまいましたが

「オルソドさん?どうしたんですかそんなに慌てて・・・」

驚きながらも天魅は尋ねつつゆっくり首を傾けます。声色はいつも通りですが顔色はあまり良くなく、体調が優れてないのは一目瞭然、首元にはひえピタが貼ってありました。

そんな彼女を見たオルソドは蒼白し、扉を直すのも忘れてベッドサイドに飛んでくると

「ちょっと目を離している間に、アイテム海で悪魔共を惨殺している間にこんな事になっているなんて・・・」

「おい」

「気づくのが遅れて申し訳ありません!お体の具合は大丈夫なんですか?」

悪魔は嫌いだけど無益な殺生はもっと嫌いな先輩天使に睨まれるのも気にせず、オルソドは必死に尋ねました。

その勢いとユイカをスルーした度胸に圧倒された天魅、苦笑いしながら答えてくれます。

「ええ・・・今はまだ落ちついてるんで大丈夫です、メンリンさんの話によれば今日一日安静にしておけば明日には完全に回復するようです」

「それはよかった」

胸を撫でおろしてほっと一息、言葉にできない安心感が胸いっぱいに広がりました。

彼が幸せ気分に浸っているのも気にせず説教でもしてやろうかとオルソドを睨み続けるユイカはふと、部屋の外が騒がしい事に気づきそちらに目を向けます。

「・・・外が騒がしいな」

「それはローゼンクイーン商会からここまでの最短ルートを素早く見い出し、邪魔な壁や窓は全て破壊してきたので悪魔共が騒いでいると思いますよ」

「お前はもう少し周りを見て行動しろ!」

先輩からのありがたーい一言が送られても彼は首を傾けるだけ。悪魔の住処など例え魔王の居城である魔王城であってもどうなっていいと思っているようです。

すると、金具の一部が外れてほとんど扉として機能していない扉の向こうから

「あら、やっぱりアンタの方が速かったわね破壊魔天使」

「ちーっす、邪魔するぞー」

アリナとリアスはオルソドよりも少し遅れて部屋にやってきました。あの時リアスが差し出したバスケットはアリナの手にあります。

「誰が破壊魔だ」と睨むオルソドを無視して、アリナはバスケットをユイカに差し出し

「はい。珍しくアイツが気を利かせて買ってきたお見舞い品、ありがたく食べときなさい」

「ああ、悪いな」

ユイカはバスケットを受け取り、アリナだけでなくリアスにも礼を言いました。若干照れながら

その光景をニヤニヤしながら眺める天魅は、いつの間にやらメモをとっているアリナに向かって

「そういえばアリナさん、アリナさんは何も持ってきてないんですか?」

「ないわよ」

即答でした。
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