ディスガイア小説

□無気力天使と男子な戦士
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「血フェチ」

「へ」

「俺、血を見たり触ったり舐めたり収集したりするのが好きなんだ・・・だから血フェチって呼ばれてる」

即座にリアスは彼の頭を心配します。

悪魔に心配されるほどなのですから迫害されたのでしょう。天使が血を求めるという考えた事もない事実は、酒と戦しか入っていない頭に深く刻み込まれました。

目を見開いたまま固まってしまったリアスに、アニューゼは小首を傾げ

「・・・大丈夫か」

「い、え?何が?」

不意に声をかけられたせいで少し動揺してしまうも平静を装います。が、どう見てもバレバレ

「すごく動揺してたように見えたぞ」

「いやするだろフツー!?」

彼に飲まれつつあるペースを奪還すべく、ここから大声で反撃を開始。

「天使が血ぃ求めるってどう考えてもアウトだろ!?あいつらの八割は頭固い連中なんだぞ!?そりゃ迫害されって!」

ほぼ実体験から基づいた解釈を叫ぶもつい力を入れ過ぎてしまったせいで息切れ。有り余っていたパワーをツッコミにつぎ込んだ結果です。

すると、アニューゼは「へぇ」と初めて言葉の中に感情を入れて

「悪魔なのにまるで知ったような口ぶりで話すな・・・俺以外の天使と会った事があるのか」

あまり関心は無いように見える素振りですが、尋ねられてちょっぴり嬉しくなったリアスは鼻を鳴らし

「少なくとも普通の悪魔よりは天使との遭遇率が高いと自負してるぞ」

自慢するように答えればアニューゼの横に腰を下ろします。もちろん何の断りも無く、勝手に

身勝手な行動にも関わらずアニューゼは表情一つ変えません。不満げな視線を送る事も苦情を入れる事もなく生気のない目をリアスに向けたまま

「血フェチと言っても・・・誰かを傷つけてまで血を得ようとは思ってない。戦いはあまり好きじゃないからな」

「戦も好きじゃないし猟奇的行為もしてないのに追い出されたってか?酷い天使もいるもんだなぁ」

ベンチの背にもたれて体を伸ばしながら空を仰ぎ、とんでもなく高い天井を見やればモスマンが空中散歩しているのが目に留まりました。

「天使的にはマズイからな・・・血フェチって」

それに釣られて彼も空を仰いでモスマンを見ます。五匹ほどまとまって飛んでいたモスマンは空の上でギャアギャアと騒ぎ、やがて一匹が墜落、よろずやに着弾しました。

そこはよろずやとモスマンの問題なので気にしないでおくとして

「清らかな種族が血が好きってギャップっつーかイメージ崩壊も良い所だからな。イメージは大事だってアリナが言ってた・・・ところで」

「ん」

改めてアニューゼと向き合ったリアス、興味で光り輝く瞳を活力とは遠く離れた天使に向ければ、彼は渋々、生気の無い瞳を向けてくれました。

「天界に戻る気ぃとかあんの?」

「ない。魔界でこうやってのんびりしている方が落ち着くし気が楽だ」

「故郷なのに?」

「ん」

短く返答すればリアスから目を逸らし、花畑近くの壁にある大きな窓をぼんやり眺め

「俺には天使よりも悪魔の方が似合いそうな気がする・・・生まれてくる種族間違えた、そう思う時がたまにある」

「お前と出会って十分も経ってないけど、お前が俺市場最高に面白い奴っていうのは分かった」

「ん?」

たった一言に「どこが?」という疑問をこめて返すと、リアスは悪だくみするようなイタズラっけのある笑みを浮かべ

「アニューゼってさ・・・酒、好きか?」

「酒・・・?まあ、そこそこ・・・だろうか」

曖昧な返事で片づけられましたが飲めるのならそれに越した事はありません。極度の酒好きは「やりぃ!」と指を鳴らして喜びますが、肝心のアニューゼは意味がよく分かっておりません。

「・・・何で楽しそうに」

「アリナもユイカも天魅も飲めないしウェイルはムカつくし忌濡は俺を女扱いするしレトンは酒嫌がるから一人酒しなきゃならないのかって不安だったんだー。よかったよかった逆転勝利だ俺」

質問にも答えずアニューゼの肩をばしばし叩いて一人喜ぶも、叩かれている本人はあまり理解できてないどころか、さらに疑問に感じる事が

「・・・女?」

「女じゃないっつーの!じゃあ夜に酒持って来るから待ってろよ!」

人の意見など聞く耳持たず、リアスは腰を上げると振り返らずに駆けて行き、あっというまにアニューゼの前から姿を消してしまいました。

「・・・・・・」

何が何の事なのか、何一つ理解できなかった彼は表情一つ変えない仏頂面のまま、彼女が走り去った方角を見る事しかできませんでした。
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