ディスガイア小説
□無気力天使と男子な戦士
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注意;発売前に執筆しているため製品版と異なる場面があるかもしれません
魔王城にはフロンが勝手に作った自然の空間がありました。
悪魔たちはそれを適当に「フロンの花畑」と呼んでいますが実際、花はほとんど咲いておらず芝生が広がっているだけ。
それでも魔界に緑があるのは珍しいであるためそれを嫌う悪魔も多く、ここにはあまり悪魔が寄り付きません。
ただし当然、例外はいます
「暇だなー」
ウェルダイムから来た自称男性の女戦士リアス、両手を後頭部に回し城内をぶらぶらしている真っ最中。言葉通り、彼女は現在とても退屈していました。
各店の前を通り過ぎ、場内を慌ただしく走り回る悪魔を横目で流していると、例のフロンの花畑にさしかかります。
何気なく目を向けると緑の芝生にぽつんとあるベンチが留まります。真っ白で背もたれのついた長いベンチ、大人一人ぐらいなら余裕で横になれます。
ここで昼寝でもしたら最高でしょうがそこにはすでに先客がおり、ベンチに腰を下ろしている青年はぼんやりと、ただ前を見つめています。
ただの青年なら気にしませんが、リアスはふと足を止めてしまいます。
「天使・・・?」
見た目と気配で分かりました。服装からすると男天使兵、オルソドよりも年上に見えます。
普通の悪魔なら天使との遭遇は驚きに値する出来事ですが、すでに複数人の天使と顔見知りであるリアスは大して驚きません。
「何で天使がこんな所でのん気に座ってんだ?」
驚きはしませんが心の底から湧いてくる興味。見ているだけでは物足りなったのか体の向きを変えてベンチまで近づきます。
やがて青年の真横までやって来ましたが反応が全くありません。静かに正面を見つめているだけで動きもしないのです。
「生きてんのか?コイツ」
動かないだけではなく、目は死んでおり生気の「せ」の字もありません。もはや生きているのかさえ疑うような青年にリアス引き気味
「・・・死んでる?」
「生きてる」
「うおう!?」
前触れも無く口を開いて喋り始めたため驚き飛び退いてしまいます。少々オーバーなリアクションですが青年は見向きもしないどころが動きもしません。口以外が動いていません。
ほんの少しの間黙っていたリアスは警戒しつつも青年に近づき、会話を試みます。
「お前、こんな所で何してんだ・・・?」
「・・・日向ぼっこ」
拍子抜け。現状のリアスを表すのに相応しい言葉はこれ以外にありません。
言葉を失っていると青年はさらに付け足し
「ここは他の場所と違って日当たりが良い。やっぱり緑があるだけの事はあるのか・・・」
「俺に聞くなよ」
何、このマイペース天使。またもや引き気味のリアスですが青年への興味はつかないどころがどんどん湧いており、ふと頭の中に出てきた言葉を考えも無しに口に出します
「何で魔界にいるんだ?任務か何かか?」
「違う、上司に迫害されて魔界に落とされた」
淡々と、感情を込めずに返した答えにリアスの中の常識を覆す言葉があったため、目を丸くします。
「迫害?天使が天使を?」
「そう・・・どうも俺の好みが天使的にマズイから・・・ところで」
青年はようやく首を動かしてリアスに生気のない瞳を向けたので「何だ?」と首を傾げてやれば
「あんた・・・誰・・・」
やはり感情も何もこもっていない声色ですが、リアスは気にもせずしっかり自己紹介します。
「俺はリアス、見ての通り戦士で・・・今は魔王城で何か適当にやってる」
「ふーん」
心底興味無さそうに返したと思えば、リアスから目を背け再び正面を向く彼、自分から聞いておいてこの態度は、相手が短気な悪魔なら即座に掴みかかるか殴り飛ばすかもしれません。
しかしリアスはそこまで短気ではないので彼を咎めず、それどころか彼に対する興味がさらに増し
「で?こっちが名乗ったんだからそっちも名乗るべきだよな?」
少々生意気っぽく尋ねると青年は再び口を閉ざしてしまいます。悪魔なんかに名乗る名などないとでも言うのでしょうか。
「・・・アニューゼ」
などと考えている内に青年は小さい声で名乗っておりやっぱりマイペースだと再確認、表情一つ変えないため思考も読めません。
「アニューゼねぇ・・・そんで、天使が天使を迫害するほどヤバイ好みって何だ?」
「気に・・・なるのか?」
「もちろん」と小さく頷けばアニューゼはまた、生気の無い死んだ魚のような目を向けてはっきり言います。