ディスガイア小説

□冬の日
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突然現れたレトンにルファは驚き、小さく驚きの声を上げました。もっと驚くべき出来事があると、ほとんどの悪魔は思っています。

「レトン?どうしたの?」

「雪と言えば、フィアはどうしているのかな〜って思って」

「へ?何でフィアが出てくるの?」

雪とフィアの関係性が全く見つからないルファとレシア、同時に首を傾けて頭上にハテナを浮かべます。

レトンを睨みまくっているユスティルもその関係性が全く分かりません。わざわざ自分が言わなくても、ルファかレシアが言ってくれるはずなので、何も言わずに睨み続けてますけど。

睨まれているというのに全く動じないレトン。肝っ玉が誰よりも座っている彼は、ヘラヘラ笑いながら説明を始めます。

「アイツ人見知りが激しいとかナントカって理由で外にテント張って暮らしてるだろ?ヴァルバトーゼの許可貰って」

「そうだね」

「でもさ、テントって雨風しのぐだけのただの布きれだろ?それがやむことなく降り続けてる大雪の被害を受けてるって事は・・・」

「受けてるって事は?」

「その内テントは雪の重みでつぶれて、中のフィアはお陀仏・・・」

この瞬間、レシアの腕の中にあったホウキが彼女の腕から離れ床に落ち、大きな音を立てました。

想像力豊かなレシアが脳裏に描いた最悪の光景は、自分で自分にショックを与える結果となり放心状態に陥り、腕の中にあったホウキの存在を忘れさせてしまったのです。

それはルファも同じなのか、思わず口に手を当てた彼女は顔面を蒼白させました。

蒼然した二人を目の当たりにしたユスティルですが、どうして真っ青になっているのか理解できず、とりあえずレトンを睨み続けていました。

そうとは知らずレシアとルファは叫びあいます。

「たたっ!大変だよ!こんな所でのんびりしてる場合じゃないよ!」

「フィア・・・まだ来てないし・・・やっぱり・・・!」

「い、急いで様子を見に行こう!」

「うん!」

悪魔らしからぬ美しき友情を見せつけて、レシアは掃除をすっぽかし、ルファは朝食をとるのを忘れて全速力で食堂の外へと駆けて行きました。

やっぱり何がどうなっているのかさっぱり分からないユスティルは、ここでようやくレトンにガン飛ばすのをやめて駆けて行った二人の後ろ姿に視線を送り

「何がどうなってるんだ?」

「ルファとレシアを鈍い部類に入ってるけど、アンタも同じ部類に入るんだな。後でウェイルに言っとこ〜っと」

「何の話だ?」




皆が寝泊まりする寄宿舎の裏手にフィアの拠点であるテントが張ってあります。

雪が降り積もって滑りやすくなっている道を一度も転ぶことなく。曲がり角を曲がった二人は青色の小さなテントを見つけました。

「何だか小さな奇跡を起こした気分・・・」

「それよりレシア!まだテントつぶれてないよ!」

「本当!?よかった・・・まだフィア寝てるのかな?いつもはすっごく早起きなのに」

「それについて考えるのは後にして、まずはフィアを避難させよ」

「うん」

ホッと一息ついた瞬間。悲劇は起こりました。

雪の重みに負けたテントは無残なタイミングでぐしゃり。二人の目の前で潰れてしまいました。

『・・・・・・』

レシアとルファ。唖然。

すると少し遅れてレトンとユスティルが合流。レトンは潰れたテントを、ユスティルは唖然として固まっているルファを見てそれぞれ言います。

「おーおー潰れてるなぁ」

「ルファ?どうして電池切れたオモチャみたいに固まってるんだ?」

潰れたテントには全く気付いてないユスティルは、ルファの事以外になると馬鹿になるという事実が判明しました。

そんなおバカな子がルファの目の前で手を振っていると・・・。

「わ゛ー!どうしよ!テント潰れちゃったよー!」

スイッチが入ったオモチャのように突然動き出してパニックに陥ったルファが、頭を抱えてその場で何度も回転して思考回路をぐちゃぐちゃにさせ。

「大変大変どうしよう!フィアが死んじゃうよー!」

同じく突然動き出したレシアは涙目になり、両手を振って大パニック。しばらくの間、冷静に思考が働く状態にはなりそうもありません。

状況が分かっていても、パニックに陥る二人を見てニヤニヤしているレトンは、彼女たちをなだめようとはしません。面倒だから。

打って変わって状況が分かっていないユスティル。どうしてルファとレシアがこんなに動揺しているのか分かりません。

しかしこのままにしておけないため、まずは回り続けるルファの両肩を掴み、お互い向かい合う状態にしてで動きを止めて

「一体どうした?何で二人でパニっくってるって言うんだ。一旦落ち着け」

彼女を落ちつけようと、冷静な口調で落ち着くよう説得します。

しかし一人の天使の生死が関わっている状況に直面して冷静でいられることも落ち着くこともできないルファは、落ち着きを取り戻さずに絶叫。

「ユスティルどうしよ!フィアが・・・!フィアが雪とテントに埋もれて死んじゃうかもしれないの!」

「ええっ!?」

ナニソレドウイウコト?ルファの言葉の意味が理解できないユスティルが振り向くと、見えてくるのは雪によって潰されたテント。

ここで彼女はようやく二人がパニックになっている理由にたどり着くことができ、大きくうなずいて納得しました。
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