ディスガイア小説
□ドラゴン先生と子供たち
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「あの〜一年×組はこの凶室であってますか〜?」
扉をゆっくりとスライドさせ、中の状況を確認しながらおずおずと顔を出したのは赤髪に赤い瞳を持った人間の少女、手には書類らしき紙を持っています。
不意に現れた部外者に×組の生屠は話をやめて一斉にそこへ注目。凶師が言っていた転校生はコイツか!?と、目を光らせました。
「えっ?」
生屠一同の視線を浴びるハメになった赤毛の少女は少したじろいた後、凶室を間違えたのかと思い扉を閉めようとしますが・・・
「そうだよ。ここが×組の凶室だよ」
たった一人だけ穏やかな視線を送って返答してきたミンティーの一言によって、彼女はホッと一息つくことができました。
「何だ、間違えてなかったのか。よかったよかった」
安心しながら閉めかけていた扉を全開にすると、持っていた紙を四つに折りたたんでポケットにしまい、凶室へと足を踏み入れます。そして誰にも使われていない教卓の横で足を止めて正面を向きました。
見知らぬ女、しかも人間がこのタイミングで×組の凶室を訪ねてきた。これだけで彼女が噂の転校生と決定付けられますが、念のためタユマは尋ねます。
「お前が今日からここに来る事になった転校生か」
赤毛の彼女は間髪入れずに頷くと
「うん。理事長からの命令で今日からこのクラスの一員になるリベアと、もう一人・・・」
「もう一人いるんですか?」
スタレイが尋ねるとリベアと名乗った少女はまた間髪入れずに頷き
「うん。自称超抜無敵で最強の死神、そして将来の私のおっ・・・」
「と」と最後の一文字が言葉になるより先に開けっ放しの扉から鎌が、死告族が常時持っている物よりグロテスクな色の鎌が飛んできてリベアの頭部に刺さりました。十万ダメージ。
「あう」
全く痛みを感じてないような悲鳴を上げ、その場にコテンと倒れました。
『・・・・・・』
あまりにも唐突で衝撃的な一場面にクラス一同呆然。ミンティーはどうしてリベアが倒れたのかわからずキョトンとしています。鎌が見えてないのでしょうか
凶室がほんの週十秒静寂に包まれていると、無駄に大きく足音を鳴らしながら、一人の男が凶室に入ってきました。灰色の髪の男でした。
「誰?」
ミンティーが尋ねますが男は質問に答えず、教卓の横で倒れるリベアを見るなり彼女を指して絶叫します。ただし、物凄い剣幕で
「テメェ相棒!余計な事ペチャクチャペチャクチャ喋ってんじゃねーぞ!変な誤解されたらどうするつもりだコラァ!」
「いいじゃんギグ、いつか事実になる事なんだし」
頭に鎌が刺さっているのにも関わらず、リベアは顔を上げてギグと呼んだ男に反論。その表情には痛みをこらえる様子は一つもありません。
「よくねーよ!相棒が“恋人”とかそういう気色悪い事ほざくたびに周りの奴らが好奇と羨望の眼差しを同時に向けてくるんだぞ!鬱陶しく思わねーのか!」
「ううん全然。むしろ“もっと尊敬し、憧れなさい!”って言いたくなる」
「何でだぁぁぁぁ!」
『・・・・・・・・・』
×組一同が呆然とする中二人の口論はいつまでも続き、お互いが冷静に会話できるようになるまで三十分はかかったそうです・・・。
「改めましてリベアです。人間っぽいけど世界を喰らう者っていう種族だから人間じゃないよ」
「超抜無敵のギグ様だ。以上」
「恋人同士ですか!?」
「死ね」
ふざけて尋ねてきた生屠に対し、ギグは睨んで一言。尋ねた生屠はガタガタと震えだしてしまいました。
リベアの頭部に刺さっていた鎌はすでに抜かれており、何事も無かったかのように平然として礼儀正しく自己紹介をする姿は、正体を明かさなくても人間でないと察するでしょう。
「頭に鎌が刺さった状態で平然とする人間なんている訳ないってフツー」
「アルな」
いつものようにニトとあやめが正論を述べる横で
「ギグかぁ・・・ちょっと乱暴な感じだけどどこかツンデレ気質がある感じ・・・文句なしのランクAね!でも彼女がいるから目立った事はできないかぁ・・・」
『・・・・・・』
早速ランク付けていやがるぞこの女・・・
すでに慣れきっているあやめは何も言わずに首を振って呆れるだけですが、そうではないニトは呆れるというより完全に何か見下しているような目で見ています。
二人とは打って変わってミンティーは
「トルネアー“目立った事”って何ー?」
「内緒」
ニコニコしながらトルネアは軽く言い流すと、「どんなイケメンでもタユマ君にはかなわないんだけどね〜」と付け足しながら妄想ワールドへ入り込みました。ちなみにタユマはランクSと認定されています。
「あやめってさ・・・よくこんなヤツと何百年も一緒にいられるよね・・・」
「要は慣れと思考の切り替えネ。トルネのこーゆー所が面白いと思えば自然と慣れてくるってもんアル」
「じゃあ僕は一生慣れなくていいや・・・」
何でソネリーはこんなヤツに執着してるんだろう・・・改めて疑問に思っている間、他の生屠は転校生に夢中になっています。