ディスガイア小説

□がんばれエーゼル君
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頼ってくれるのはもちろん嬉しい。強いと思われているのも誇りに思います。

ただ・・・それ以上が、それ以上のポジションにシフトしないのが最大の悩み所。

恋愛対象として見られていないこともありますが、最大の原因はサラ自身が恋愛に興味がないということ

ほぼ同い年の天魅は恋愛に関して超敏感だというのに・・・あの子が興味を示すものはもっぱら盗みとかお宝とか・・・盗賊の本能を駆り立てるものばかりで・・・

ということは、サラが恋愛に興味を抱けば自分を恋愛対象として見てくれる可能性も上がるのでは?

思い立ったが吉日。独自の理論を交えたアドバイスを延々と語る天魅に、ついさっき思いついたことを伝えます。

「ノッてる所すまないが・・・一つ提案がある」

「何でしょう?」

「さっき思いついたが・・・サラに恋愛に興味を持たせるという作戦はどうだろうか・・・」

「やっても無理だと思いますよ」

即答。考えることもなく即決で提案をバッサリ切り捨てました。

折角考えた案を、何も一瞬で否定することないだろうと異論を唱える前に、天魅は理由を述べ始めます。

「例え現段階でサラさんが恋愛に興味を持ったとしても、エーゼルさんの立ち位置は一ミクロンたりとも変わらないじゃないですか。私がサラさんだったら“私に似合う運命の人を探しに行く!”って言っちゃうと思いますし」

「・・・」

どこか否定できない天魅の言い分。エーゼルは異論を唱えることができず、結局黙りこんでしまいました。

「話を戻して・・・エーゼルさんはサラさんに“弟子”ではなく“たった一人の異性”として、見てもらいたいのでしょう?」

当たり前です。彼は無言のまま大きく頷きます。

「ならば!少しずつアタックしていきサラさんのはぁとをがしっと掴む!名付けて“チリも積もれば山となる作戦”を決行するしかありません!ええ、ありませんとも!」

ことわざを由来にした作戦名はさておき、力説する天魅の迫力にエーゼルは圧倒され、本当にあの兄の妹なのかと錯覚してしまいました。

「・・・兄貴はアレなのにな・・・」

「エーゼルさん?今兄者の話をしませんでしたか?」

「別に・・・」

兄がシスコンなら妹はブラコン。兄に関する話がささやかれれば、たとえ十メートル離れた場所でもすっ飛んで来るそうです。

ブラコンという魔ビリティーが発動している天魅とは関わりたくないため、彼は適当に流してややこしい事態を回避することを試みます。

「ならいいです」

それをあっさり信用した天魅は、くるりとその場で回転してエーゼルに背を向け、右手人差し指を立てて話を再開します。

「では話を戻します。いくらサラさんが鈍感でもエーゼルさんがアタックして彼女に対する想いを表現していけば、いずれ気いてくれるはずです」

そこまで言うともう一度その場で回転し、エーゼルと向き直って彼を指すと

「一度や二度では効果は見られないと思われますが、何度も何度も繰り返していけば想いは届きます!リアスさんでもない限り絶対に!」

余計なひと言を付け足して断言しました。

暑苦しい男代表のアデルと同等の熱心さと情熱を持つ彼女の力説を、真剣に聞くエーゼルは絶対に忘れてはならないと、その言葉一つ一つをメモ帳に書き込んでいきました。

「という訳で!早速プレゼント大作戦を実行しますよ!」

驚異の速さで作戦を決行する姿勢を見せる天魅にエーゼルは驚きもせず、疑問にも思わず、一緒に右手を挙げて「えいえいおー」と叫びました。

大声で持論を連発する天魅にホルルト村住民の痛い視線が刺さります。しかし、それは二人にとってとても些細なこと。微塵も気にすることはありませんでした・・・。





それから数十分経った頃、所変わってアデル宅の前では晴天空の下、玄関先に置かれたやたら大きい壺の前にいるのは、作戦制作者天魅と決行者エーゼル。そして、何も知らずに彼に呼び出された天里でした。

アイテム界探索中に「来なかったら妹にアレをばらす」というエーゼルから脅しを含む呼び出しがかかり、真っ先に帰って震えながらやってきた彼は突然その妹に

「エーゼルさんの恋を応援するため、兄者の力を貸してください!」

という真剣な眼見つめられた上での力説を受けると、驚きよりも疑問を感じました。

「良いですけど・・・なぜ私がエーゼルさんの恋愛のお手伝いをしなければならないのですか?」

そこまで仲が良い訳でもなく、むしろ脅されてこき使われているような間柄なのに・・・。いつ銃口を突きつけられるかわからない恐怖の中、恐る恐る尋ねました。

兄の顔色が悪いような気がしましたが、気のせいだろうと処理した天魅。事情は一切知らないため、的の外れた答えを出します。

「決まってるではありませんか。兄者とエーゼルさんが仲の良いお友達だからです」

「えっ・・・」

いやそれ違う・・・違うんだよ妹よ・・・

事情を知らない彼女がどんな根拠を述べるのか不安に思っていましたが、まさかそんなふうに見られているとは思わなくて・・・天里は言葉を無くしました。

「ほう・・・どうやら第三者から見ると俺たちはそう見られているようだな・・・」

「そんな・・・」
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