ディスガイア小説

□夏盛りの男達
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美少女だらけのプールという、天国のような場所と打って変わって、一年×組の凶室。

カーテンを閉めていないため、夏の日差しが容赦なく入り込んでくるため気温と湿度はうなぎ登り。今日は無風なため涼しい風すらなく、まるでサウナのような状態でした。

もし、この場に卵と鉄板が用意されていたら、火を使わなくとも目玉焼きが作れてしまうのかもしれない。・・・と、錯覚させるぐらい蒸し暑い状態でした。

こんな灼熱地獄みたいな凶室にいる生屠など、誰一人としていないのが世の常です。

それに今は夏休み、わざわざ夏期講習のために訪れる熱心な不良なら別ですが、さすがにこんなに暑い教室で勉学に励もうと思う生屠など、いる訳がありません。

と、思われていましたが、一年×組の灼熱地獄凶室にたった一人だけ、ある人物が着席していました。

その人物は、夏期講習を受けにきた不良生屠でも、蒸し暑い場所に好き好んでやって来た訳でもありません。

ただある執念を原動力にして、灼熱地獄に耐え続けているのでした。

「・・・・・・」

夏の日差しが照りつけるお陰で汗はダラダラ、五月蠅いほど泣き続ける蝉の声が容赦なく鼓膜を揺らしています。

彼の席は凶室と比べると、遥かに涼しい廊下に近い場所にあるため、直射日光は避けられましたが、それでも暑いものは暑い。

一言も喋らずかつ、微動だにしていない彼の名は

「おーい冷夜、いつまでそんな蒸し暑い所で黙りこくってんだ?」

彼の名を読んだ声は、タイルが一枚だけ外されている天井から聞こえました。若い男の声でした。

冷夜と呼ばれた侍は、夏真っ盛りだというのにモコモコ(ファーとも言うかもしれない)がついたいつもの和服のまま、ただ黙ってその声を聞いていました。

「そんな暑そうな格好で、暑そうな凶室にいるのを見てるとこっちまで暑苦しくなるし、凶室じゃなくて、もっと涼しくて日の当たらない所に行ってさあ・・・」

「インテリ」

ここでようやく冷夜は声を出し、天井裏でうつ伏せ体制になり、パソコンをいじっているガンナー、インテリを呼びました。

掲示板サイトに書き込みをする手を止め、ようやく言葉を発してくれた冷夜の声を聞きのがさまいと、一旦沈黙して次の声を待つことに。

灼熱の凶室の中に一人いる、冷夜が呟いたこととは・・・

「ミンティーの水着姿が見たい・・・」

果てしない男の夢でした。

その夢に「灼熱凶室にい続けて、ついに脳細胞が炎症を起こしたか!」とは言わず、インテリは肩を落とし

「俺だって、あやめの水着姿を拝みてぇよ・・・」

果てしない男の夢に、激しく同意するのでした。

ご存じのとおり、冷夜はミンティーにインテリはあやめに恋心を抱いており、その想いは日に日に大きくなっていく現状に、お互い頭を悩ませていました。

「悪魔のくせに恋なんて・・・」と悪態をつく輩もいるかもしれませんが、二人の想いは本物で、あの子以外に素敵な女性なんているもんか!と豪語しています。ただし、心の中で

そこまで好意を抱いてしまった女の子の、可憐な水着姿を一度でもいいから見てみたいと思うのは、健全男子なら当たり前といっても過言ではありません。・・・しかし

「でも、無理なんだよ冷夜。あのプールは男子禁制、無理に入れば中にいる女子全員の反感を買ってしまう危険性があるし、なにより・・・」

ため息をつきながら、インテリはパソコンの画面を掲示板サイトではなく、今朝手に入れた一枚の写真に変えました。

それは推定二十メートルほどの高い壁が、プールを囲うフェンスの内に立ち、プール全体を囲っている画像でした。

「あんなに高い壁を建設されてしまった以上、何の手出しもできやしない」

フェンスをよじ登ったり、破壊する悪漢は結構いるため、その対策として立てられた防護壁。

それは並大抵の力で破壊することなど不可能で、なおかつ見張りも休むことなく警備しているため、突破するのは難しいのです。

実はついさっき、防護壁を破ってプールに潜入しようと試みましたが、見張りのモスマンに見つかり集団攻撃を受けて敗退。その後もモスマン軍団に執拗に追い回され、サウナ並みの暑さの凶室に身を隠す羽目になったのでした。

「さっき酷い目に遭ったから解るだろ?あんな厳重な警備をしいてあるプールに入り込むなんて不可能だし、城壁は天高くそびえ立ってるから覗きだって無理だ。ミンティーとあやめの水着姿は・・・多分あーゆう関係にならないと一生拝むことはできないんだろうなぁ・・・」

インテリはため息をつき、マウスを動かして防護壁を何度もクリック。こうすれば壁が壊れないかなー・・・という淡い夢を抱きながら

「そろそろモスマンたちも諦めた頃だろうし、昼飯食いに行かね?」

「・・・それもそうだな」

レベルは自分よりも劣っていたものの、数で物を言わしたモスマンに負けたことと、愛しいあの子の水着姿が見れなかったことが、ショックだった冷夜(特に後者が百倍ショックだった)は、いつもよりも一オクターブ程低い声で返事をして、汗も拭かずに席から立ち上がりました。

「インテリ、もしかしてお前天井裏から食堂に行くつもりか?」

「当たり前だ!夏の日差しは俺の天敵!いつも以上にギラギラ輝いて、地上全てのモノを照らしてる憎き太陽の下に出るなんて、できるわけないだろ!」

「豪語するな。いいから降りて来い。俺がこんな蒸し暑い凶室にいて、お前が見るからに涼しそうな天井裏にいることに無性に腹が立つ」

「そんな理不尽な理由で俺を地上に引き摺り下ろすつもりかよ!絶対嫌だからな!俺は先に行って・・・」

「一分以内に降りてこなかったら暗黒剣Xの字斬りの刑な」

「支度するんで待ってて下さい!」
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