ディスガイア小説

□アイテム界の幽霊船ツアー
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「お前達、なぜこんな所にいるんだ・・・?」

「おおっヴァルバトーゼ。俺たちはただ静かに停泊してるこの船に興味があったから近づいてきただけだぞ」

ヴァルバトーゼに対して一ミリも敬意を見せないばかりか、同じ学校にかよっている友達に接するような態度でレトンはのん気に答えました。

そんな彼の後ろで、不気味な船体に脅えながらくっついている少女二人も、ヴァルバトーゼの質問に答えます。

「わ、私はただレトンが皆の元を離れて行ったのを見たからそれが心配で・・・」

「私も同じです・・・」

そりゃあまた仲間想いな話デスネ・・・。イレーナが感心し、ヴァルバトーゼが少しだけ驚いていると

「ヴァルっちーヴァルっちー!あっちに面白そうなもの見つけたー!・・・・・・ってあれ?何でイレーナちゃんたちがいるの?」

船のかじを持って大変楽しそうな様子で走ってくるフーカは、いつのまにか船上にいるイレーナたちを見てちょっとびっくり。

「ただ勝手について来ただけだ。それよりもう気が済んだか小娘、そろそろ戻るぞ」

「えーもうちょっとだけ探索してもいいじゃん!アンタがフェンリっちを説得すれば話はややこしいことにならないんだし」

まるで友達の家に遊びに来て、親が迎えに来てもなかなか家に帰りたがらない子供みたいです。脳内の年齢がが実際の年齢と比例していない少女にヴァルバトーゼは呆れを隠し切れません。

「それとこれとはワケがちが・・・と小娘、手に持ってるそれは何だ?」

「これ?船の端っこに落ちてたの。アレでしょ?船に乗ってる人が握ってる・・・ハンドル!」

「ハンドルではなくそれはかじ・・・」

訂正しようと言葉を続けた時、突然地面が揺れ始めました。正式には古くなった船じたいがゆれ始めたのです。

まさか崩れる!?と思ったヴァルバトーゼでしたが、彼の予想とは裏腹に船はギシギシと木がきしむ音を上げながら勝手に動き出し、アイテム界という名の広い海へと航海を勝手に始めるではありませんか。

船が予想以上に揺れるため、今にも壊れそうな船体を掴むことしかできない彼ら。今なら船から飛んで陸上へ戻ることも可能でしたが、それもままならない状態になっていました。

「なっ!?何なのよコレ!どうしてこんなボロ船が勝手に動き出すわけ!?」

「俺が知るわけないだろう!」

二人仲良く(?)マストにしがみついて振り落とされないように耐えながら、突然の事態にパニックになりながら絶叫。その声は船の上どころか、船に乗っていないメンバー達の耳にも入ってきました。

それに一番最初に気付いたのは、エミーゼルでした。

「おい、何かヴァルバトーゼたちの声が聞こえないか?」

「え?」

宝箱の中身を念入りに調べていたアルティナが、吸血鬼さんの声なんて聞こえたかしら・・・?と首を傾けた瞬間、彼女の横を風のような勢いで駆け抜け、ステージの淵で絶叫する狼が一匹。

「ヴァル閣下ぁ―――――!!」

まるで出稼ぎのために家族の元を三千里ほど離れ、簡単には会えなくなってしまう母親を見送るような子供のように狼・・・てかフェンリッヒは愛しの(本人否定済み)彼の名を叫びます。

「フェンリッヒ・・・お前・・・」

酷く呆れるエミーゼルの横で、別に驚くほどのことでもないとばかりに冷静なウェイルは何気なく言います。

「そういえばあの船に、ババアとルファとレシアとレトンが乗ったのを見たぞ」

「ええっ!?レトン君が!?」

「ニャア!?」

彼が船に乗っていたことなんて全く知らなかった忌濡とミーミーが驚きの声を上げ、さらにユスティルがショックのあまり倒れました。

「ギャー!過保護・・・じゃなくてユスティルが超ショックのあまり失神したー!マジありえないしー!」

「これは使い物になりませんわ。一度ベースパネルに戻しましょう」

倒れるものが現れる中、取り乱すのではないかと考えれていた一人は、冷静さを保っているのか去っていく界賊船を静かに眺めていました。

「・・・・・・」

「何だ。お前は意外と冷静なんだなぁ天使」

レシア至上主義者の天使兵フィアは、宿敵ウェイルにナメられた口をきかれても、何も言い返さず黙っているだけ。ただこんな男の相手をしても余計な体力を使うだけかと思っているのか、始終黙っていましたが。

「ちょっとは何か言ったらどうだ」

と、彼がほんの少しだけ彼女に触れると、彼女は表情と体勢はそのままに、精密に立たされていた木の棒のようにパタリと倒れました。

立ったまま、表情も体勢も変えず倒れた彼女を見下した彼は思わず

「お前が一番動揺してるんじゃねーか!」

そんなツッコミを入れてしまいました。

彼らの後ろでは今にもステージから何十メートルも離れた船に飛び移ろうと、今まさに飛び立とうとしてるフェンリッヒを必死になって止めるエミーゼルとアルティナの姿がありました。

「やめろフェンリッヒ!いくらお前のヴァルバトーゼ大好きぱわー(注:フーカ命名)があってもあんな遠く離れた船には到底届かないぞ!」

「早まらないで狼男さん!アナタの吸血鬼さん大好きぱわー(注:フーカ命名)がいくら上昇しても無駄なことぐらいわかっていらっしゃるでしょう!」

「うるさい!貴様たちに何がわかる!ヴァル閣下のためなら俺はこんな命など捨ててやるぅぅぅ!」

「うわー!フェンリッヒが壊れたー!誰かー!誰か何とかしてー!」
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