ディスガイア小説
□アイテム界の幽霊船ツアー
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アイテム界にはアイテム界を漂い、略奪行為を繰り返している界賊が沢山いた。
中々出てこなくユーザーをイラつかせる猫がいっぱいいる界賊や、序盤やたらと出てくる男戦士ばかりの界賊。他にも見たことも無いオリジナルの海賊などがアイテム界という海の上をただよっている。
今日はアイテム界を漂うある界賊船の話・・・。
悲しきアイテム界の住人のある結末である・・・。
きっかけは夢見がちなプリニー娘、フーカの一言でした。
「ヴァルっち〜疲れた〜」
現在アイテム界57階。連続でここまで潜ってきたヴァルバトーゼ一行。
しかし長期間戦闘を続けているとよほど鍛えられていないと耐えることは困難です。ヴァルバトーゼのような暴君ならまだしも、普通の中学生であるフーカが長時間労働に耐えられるわけがない。パネルもない地面の上にペタリと座り「もう帰る〜」と駄々をこねる子供のようにフーカはぼやきはじめました。
ゴーストを一匹しとめたヴァルバトーゼは、子供の様な振る舞いを見せる中学生を見て、呆れるようにため息をつき
「わがままを言うな小娘。今は五十階、ここから折り返しではないか」
「折り返しだから嫌なのよ。さっきまでの険しい道のりをまた進まないといけなくなるなんて嫌!もうアタシ帰りたいー!スイーツ食べたいー!もしくは素敵な王子様に会いたいー!」
「子供かお前は」
「少なくともヴァルっちたちよりは子供よ!それぐらいわかってるわ!」
プイッとそっぽを向いて言うフーカ、その様子はすねた子供そのものでしたからタチが悪い。
ヴァルバトーゼはここでフェンリッヒを呼んで状況の打破を試みましたが、ここで彼を呼んでもきっとフーカと口論になり、余計にタチが悪くなるのではないかと思ったため直前で断念。
それにたまにはフェンリッヒに頼らなくても、自分の力で何とかするのもいいのかもしれません。彼はため息をつくとまず、フーカが疲労を忘れてくれそうなほどの興味を持つ物体を探します。
周囲を見回しても、見えてくるのはやたらとうじゃうじゃいるノートリアスと大量のオブジェ。さらに本のオブジェの上でのんびりとお茶を飲んでいるイレーナの姿ぐらいしかありません。
他に何か無いかと目を細めると、彼は普通では出ることの無い珍しい物を発見します。
「何だ・・・あれは」
彼が言って指す「あれ」とは、サイレンも鳴っていないのにアイテム界の片隅に停泊している、かなりボロい界賊船でした。
ヴァルバトーゼがそれを発見したことに気付いたフーカは、彼が指す方向に視線を持ってくるとすぐさま目を光らせて
「うわぁ!何あれ!サイレンも鳴ってないしBGMも変わってないのに界賊船がある!すっごい珍しい!」
さっきの駄々っ子はどこへやら、すぐさま立ち上がって停泊する船目掛けて一直線に走っていきます。もう船の上に乗りました。
彼女の異常なまでの切り替えの速さにしばし呆然としていたヴァルバトーゼでしたが、なんとなく、静かに停泊している界賊船に興味を持ち、何の警戒もなく近づいていきます。
「ふむ、確かに珍しい」
界賊船の上に乗った彼は、もの珍しそうにキョロキョロと船の見ていきます。
すると、少し意外なことに気付きます。
「ん?この船かなり古いな」
この界賊船はごくごく普通のガレオン船(界賊船デュエットで最初にもらえるアレ参照)なのですが、マストは矢が千本ぐらい降ってきた後のようにボロボロになっており、船体の木は所々腐っているのか、歩くたびにめきめきと不吉な音を立てます。
他にもホコリが被っている箇所が多々あるところから、手入れが全くされていないことが丸判り。こんな船、正常に動くとは到底思えません。
「誰かが古くなって使えなくなった船をここに停泊させて放置していたのか・・・?」
「ええ、恐らくその可能性が高いと思うわ。ヴァルバトーゼさんっ」
「うわっ!?」
一人考えていた彼の後ろからひょっこりと現れたのは高年齢侍イレーナ。ヴァルバトーゼにフェンリッヒ並みの執着を見せている彼女は、彼の耳元で小さくささやくのでした。
驚いて飛び跳ね、すぐさま振り返った吸血鬼を見て、彼女は「まあ可愛い」とおしとやかにクスクスと笑いました。
「っと、何だお前か。さっきまで本の上でお茶を飲んでいたのではなかったのか」
「ええ、確かにほうじ茶を飲んでたわ。だけどこの不思議な界賊船にヴァルバトーゼさんやレトンたちが入り込むのを見て、これは面白そうといてもたってもいられなくなって」
「レトンたちが・・・?」
はて、そいつらとは接触した覚えはないが・・・。と元暴君がキョトンとした瞬間
「ほー、これはまた興味が発掘した石油のようにどんどん湧いてくる物だなぁ」
「う、うん・・・確かに興味あるけどちょっと気味が悪いかも・・・」
「い、いいのかなあ・・・勝手に前線抜け出してこんな所にきて・・・」
珍しくミーミーを連れていないフリーの状態のレトンと、武器を持っていないため気弱モードのレシア、そしてこっそりユスティルと離れてレシアについてきたルファの姿を、船上で確認することができました。