ディスガイア小説

□極悪アーチャーが記憶を失いました
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今、アデルの目の前には全国の農作物愛護協会の人が見たら激怒する出あろう光景が広がっていました。果たして生存している植物はいるのでしょうか、ちょっと疑問に残るような光景でした。

その光景を作り出した張本人は、そのまま何事もなかったようにスキップでその場を去ろうとしています。

自分が手塩にかけて大切に育てた作物を全て駄目にされたためアデルさん激怒します。

「アイツめ・・・よくも俺が育てた作物たちを・・・!」

一刻も早く作物の敵を打ちたいアデルですが、作物を駄目にした相手は自分の仲間です。しかも彼が何よりも苦手な人種である女の子です。

怒りにより目つきを鋭くさせて立ち上がった彼ですが、そのままがっくりと膝を付くと

「駄目だ・・・!性格はアレだが偽ゼノンを倒すために協力した仲間な上、女・・・!ソイツを殴るなんて俺の流儀に反する・・・!」

心底悔しそうに力いっぱい拳で地面を殴りました。ちょっと地面にヒビが入りましたよアデルさん。

どうやらリンリンはアデルが自分を殴れないことを想定して、こんなとんでもないことをやってくれたようです。ホラ、彼女ちょっとほくそ笑んでます。

情けない彼にロザリーはため息をつきつつ首を振り、テストで0点をとってしまった息子を見るような目つきで言います。

「やれやれ・・・作物をやられたというに流儀のせいで仕返しもできんとは・・・そんなことでは作物愛護教会会長の名が泣くぞ?」

「作物愛護教会って何だよ」

そんなモン聞いたことねぇけど。心の中で省略されたアデルの思い。

「男のくせに細かいことを気にするでない。それよりもいまあ大切な作物の敵討ちが先じゃぞ」

「敵討ちって言われてもなぁ・・・」

女と仲間を殴ることができないアデルは、スキップで立ち去ろうとしているリンリンの後姿をただ悔しそうな表情で見つめることしかできません。

やっぱり情けない彼に、ロザリーはたのもしい台詞をはきます。

「安心せい。流儀のせいで何もできないおぬしの変わりに、このロザリンドが直々に最近調子に乗っておるリンリンに制裁を下してやろう!行くぞゼノンよ!」

天まで届きそうな大声を出し、アデルが「お前が制裁を下すとか言っておきながら結局ゼノン任せかよ!」とツッコミを入れるのと同時に

「了解したぞロザリンドよ・・・我の未来の夫のため、人肌脱ごうではないか・・・」

ロザリーとゼノンの人格がコロリと入れ替わりました。これだけで本編のシリアスさが一気に失われる気がします。

ちなみにサバイバルデスバトルの回で薄々勘付いている方もいるかもしれませんが、ゼノン自信もアデルのことを将来の夫と見込んでいます。もし、ゼノンが前世男だったらかなり問題がありますが、実際はどうだったのか一切不明なので多分問題ありません。それに今はロザリーですしね!

「なっ・・・!」

驚きを隠せないアデルが次の言葉を発するよりも早く、ゼノンは動いていました。

「カルマリパレード!」

ゼノンの十八番。例の触覚魔王を追い払った技が「何でしょうか?」と振り返ろうとしたリンリンに見事炸裂。それは地面に大きな穴を開けるほどの大爆発を起こしました。

「・・・・・・・・・」

アデル絶句。奇跡的に彼の畑は無事、他の人の畑は無事。民家が二三軒木っ端微塵に破壊されましたが、魔王であるゼノンがそんな細かいこと気にするわけがありません。

余談ですが、その後アデルは潰された民家に住んでいる人々に多額の賠償金を払うことになります。今はそんなこと知る由もありませんが・・・

「ふう、こんなもんじゃろ」

すぐにゼノンモードから戻ったロザリー、マラソンを完走しきった人のような清々しい笑顔で地面に広がる巨大なクレーターを眺めます。

これは流石に助からないんじゃないか・・・?アデルが極悪であることに定評のあるアーチャーの死を確信し、新しい弓要因雇ったほうがいいかなぁ・・・と考えた瞬間

「うーん・・・」

かすかに聞こえてきたリンリンの声。それが彼の耳に入った瞬間、バッと彼は顔を上げてクレーターの中心を見ました。

もう奇跡としか言いようがないっ!そう直感したアデルは夢中で駆け出し、クレーターの中心まで物凄い勢いで来て、倒れている彼女の前でひざまずき

「リンリン!生きてるか!」

全力で彼女を心配しているのか、血相を変えて叫ぶと彼女の両目がぱちりと開きました。ロザリーがちょっぴりヤキモチを焼いています。

両目を開けたリンリンはむくりと起き上がり、周囲をキョロキョロと見回し

「何ですか・・・?今の・・・」

ちゃんと声を発しました。あの攻撃でここまでピンピンしていると逆に、今ここにいる彼女は実は零体的な何かではないのかと思ってしまいそうですが、仲間の命の無事を確認したアデルはそんなこと微塵にも思わずホッと安堵の息を吐きました。

「よかった・・・生きてた・・・」

「なんじゃなんじゃ、折角余が・・・というかゼノンが天誅を下したというのに」

自分以外の別の女の子を心配する彼の様子に若干ヤキモチを焼いたロザリーは、多少不機嫌そうに口を尖らせて言いました。

無論、アデルはそんな彼女に反論します。
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