ディスガイア小説
□極悪アーチャーが記憶を失いました
1ページ/10ページ
いつも通り平和なホルルト村。魔界で平和だったら問題ですが、ウェルダイムは人間界なので問題はありません。
村の一角で畑仕事を終えた青年、アデルはそこらにあった石の上に座り、青い空を見上げて考えごとを始めました。
「うーん・・・」
考える人のポーズをとり、何かを熱心に悩み、考えるディスガイア2の主人公。魔界と化していたウェルダイムを救い、ロザリンドとも公式で恋人同士と認められた彼を、ここまで悩ますことなどあるのでしょうか。
そんな彼に、興味有り気に声をかけてきたのが一人
「どうかしたのか?おぬしが悩み事とは珍しいのう」
それはトラブルメーカーお姫様、ロザリンドでした。本物ゼノンと助け合いの契約を誓い、その強大な力を手にしてしまった究極のヒロイン。ちなみにアデルの恋人(公式)
「ああ。ロザリーか・・・」
「む?アデル、おぬしちと元気がないようじゃな。どうかしたのか?」
いつも皆に元気よく(訂正・勢いよく)楽しそうに(訂正・最近疲れ気味に)ツッコミを入れてくれるアデルが、何やら深刻そうに考えているので、一体どうしたのかとロザリーは心配します。
しかし、彼から返ってきた言葉は彼女の予想とは違うものでした。
「実はどうやってリンリンを更正させようか考えているんだ」
「帰る」
「うわっ!ちょ、ちょっと待て!結構重要なことなんだぞコレ!」
悩みの内容を聞いた瞬間、ロザリーはすぐさまきびすを返して帰ろうとしますが、アデルはそんな彼女を何とか引きとめます。
「何じゃ、余はそんなくだらない悩みを聞くほど暇ではないぞ」
「毎日十分暇そうだろ!」
ロザリーの一日のスケジュール。
朝。朝食後、タローと一緒に朝の子供劇場(アニメ)を観覧する。
昼。昼食後、優雅にお茶を飲んで日向ぼっこしたりたまにアイテム界に遊びに行ったりする。
夜。夕食後、お風呂に入った後はバラエティ番組を見て、その後は寝る。
「そうか?偽ゼノンに飼われていた頃と比べればかなり貧相にはなったが、余はかなり満喫しておるぞ」
「話を微妙にずらすな!とにかく俺の話を聞け!」
最近、暇そうなロザリーを見ていると某仕事しないお姫様を見ているような気がするアデルです。
「最近、リンリンの行動に目にあまるものがあるだろ」
「どこがじゃ?」
ハテ。ヤツがそんな行動起こしたかの?ときょとんと首をかしげるロザリーに、アデルは絶叫。
「どこがって、肥料をコッソリコーヒー豆に摩り替えたり、カツアゲしてご近所の人に迷惑かけたり、タローの牛乳を日のあたる場所に置いて腐らせたり、ユイカを苛めたり、ベースパネルの中にわざと敵を投げ入れたり、タローに嘘八百教え込んだり、勝手に敵を合体させて手ごわくさせたり、無敵のジオパネル独占したりすることだよ!」
ちないに腐った牛乳は、アデルパパが勝手に飲んで大変なことになったとか。
今まさにアデルの口から語られたリンリンの悪行の数々。確かにとんでもないものですが、ロザリーはやれやれ・・・と馬鹿息子を見るように首を振ると
「なんじゃ、それぐらいのことか」
「それぐらいってお前なぁ・・・」
「リンリンは悪魔じゃ。悪魔ならそれぐらいの悪事を働くのは当たり前、お主の悪魔の端くれなのじゃからそれぐりわかるであろう」
人間だったら結構問題になる行為が多々あるのですが、悪魔なら許させる。それが魔界ルールであるとロザリーは語ります。
ところがアデルは絶叫します。
「誰が悪魔だ!」
「いや、悪魔じゃろうが」
彼はどうやら悪魔と言われると否定する癖がついてしまったようです。いい加減認めればいいのに
ロザリーはため息を一つつくと
「それに、リンリンのあの性格はいくら転生を繰り返しても確実に治らん。ああいう性格は根強く残るものじゃぞ」
例えるならYシャツについたカレーのシミと同じぐらい根強く残ります。
「そりゃそうかもしれないけど・・・」
「納得するなら諦めることじゃ。人生は短い、無駄なことにその大事な時間を費やすことはなかろう」」
「・・・千年以上も生きるくせに何が短い人生だ・・・」
ロザリーに聞こえないようにアデルは本当に小さな声でボソッと呟きました。長い間人間だと思って過ごしてきた彼にとって、千年以上生きる悪魔(天使も)の寿命はかなり現実離れしたものなのです。
まあ、実際彼も悪魔なので千年以上余裕で生きるわけですが
「何か言ったか?」
「別に・・・」
彼は軽くあしらいロザリーから目をそらし、本当にリンリンを更正させる術はないのかと模索していると
「るんるんらんらん♪」
噂をすればなんとやら、彼らの目の前をどこか楽しそうにスキップで歩くリンリンが通り過ぎて行きました。
「おお、噂をすれば何とやら。じゃな」
「そうだな・・・ってあ゛―――!!アイツ問答無用で畑を踏み荒らして行きやがった!」