ディスガイア小説
□ドジっ娘の本領発揮
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言い方といい態度といい、完全にいじめっ子側の立場に立っているウェイルはそう言うと、トトコは椅子を蹴って立ち上がります。蹴られた椅子が後ろに倒れましたが、彼女は今そんなことを気にしている暇はありません。
「何?もしかしてアタシに喧嘩売ってるワケ?」
「当たり前だろ?じゃなきゃこんな解りやすく相手を馬鹿にするわけねぇだろ」
「やっぱり超馬鹿にしてたのかよ!」
組み立て終えた銃を握り、トトコは銃口をウェイルに向けると彼はこの展開が予想できていたのか、冷静な表情のまま剣を取り出して
「待ってたぜ。この展開!」
少し楽しそうに叫んで、銃を握るトトコへと突っ込んでいきました。それと同時に彼女は何の悠長も無く銃の引き金を引きます。
この瞬間、ウェイルとトトコの大喧嘩という名の戦いが食堂で勃発しました。銃弾が飛び交い、剣から発生する衝撃波が床や壁を傷つけていき、下手に近づけば確実に死が訪れます。今一匹のプリニーが被弾を受けました。
「うおお!お前大丈夫ッスか!?しっかりするッス!」
「こりゃヤバイッス!急いでセルテアさんとこ行くッス!」
他の二匹のプリニーが被弾を受けたプリニーを運び出そうとした瞬間、彼らは衝撃波をモロに喰らい壁に叩きつけられました。
そんな中喧嘩発生現場から一番近い場所にいるノアは、全く被害を受けておらず頬杖を付いて一人、喧嘩中の腹黒とツンデレを眺めていました。
「全く、野蛮ですわね」
飛んできた銃の弾をシールドで防ぎ、ノアは小さく独り言を呟きました。
「喧嘩するのは勝手ですけど、どうせならもっと広い場所でやってもらいませんこと?」
前回のアレからして、あまり彼女には言われたくない台詞を二人に言いましたが、目の前にいる相手を倒すことだけしか考えていない彼らに、その言葉が届くことはありませんでした。
「やれやれ、我を忘れていらっしゃるようで。はた迷惑なことですこと・・・それにしてもミルクティーはまだかしら」
やはり彼女には言われたくない台詞が聞こえたとき、食堂の奥から高い声が響き、徐々に近づいてきます。
「ノアーお待たせーミルクティー持ってきたよー」
現在の状況を全く把握していないのか、花柄の可愛らしいティーポットとそれと同じデザインのティーカップををトレイに乗せて持ってきているレシアの表情は、周りに花が散っているのではないかと相手に思わせるぐらいのんびりフワフワしていました。
「ごめんね。この前使ってほしいって言ってたティーカップが中々見つからなくて・・・きゃぁ!」
別に床が滑りやすくなっていたわけではありませんし、誰かが前もってバナナの皮を置いていたわけでもありません。ただ、レシアは何もない所で勝手に滑って勝手に前方に転びました。
しかもレシアが転んだ先には喧嘩中のウェイルとトトコがいましたが、相手を滅すことだけを考えている二人は、レシアの存在事態気付いていません。
「あ」
今日は転んだか・・・。と心の中で思いながら、ノアはもう一度自信にシールドをかけて、これから起こるであろう災厄を警戒します。
転んだレシアが持っていたトレイは、言うまでもなく前方に飛び、上に乗っていたティーポットは中のミルクティーを撒き散らしながら宙を舞います。ここからスローです。
「ん?」
「あ?」
この瞬間、やっと何かが起こったことに気付いたトトコとウェイルですが、今気付いたところでは全てが遅すぎました。
宙を舞っているティーポットの中に入っているミルクティーは、状況が全て飲み込めずポカンとしている二人の頭上にばしゃりとかかり、沸騰したてのお湯で淹れたミルクティーの熱が、ダイレクトに彼らの頭を襲います。
『あっつぅぅぅぅぅ!!』
悲鳴。地獄全土に響き渡ると思われるほどの悲鳴。状況が状況なだけに、仕方がないと思われます。彼らにミルクティーをぶちまけたティーポットが地面に着弾し、割れた所でスロー終了。
「イタタタタ・・・転んじゃった・・・あっ!」
ゆっくりと起き上がったレシアの視界に飛び込んできたのは、頭からミルクティーを被り、悲鳴を上げる二人の姿。
この様子から、一体何が起きたのかすぐに把握できたレシアは慌てだします。
「たっ!大変!私ったらまた人為的被害を出しちゃった!どっ、どうしよう!」
今にも泣きそうな顔でオロオロと右往左往するレシアに、完全に呆れているノアはため息交じりで助言を繰り出します。
「とりあえず、二人の頭を冷やしてあげたほうが良くって?」
「そ、そうよね・・・それが一番よね・・・。でも、冷やす物がないわ・・・」
危機的状況のためか思考がまともに動いてくれないレシア。ここでノアがクール系の魔法を覚えていれば事はすぐに解決するのですが、彼女はファイア系の魔法とスリープしか覚えてないため、レシアは頼るに頼れず
「どどどどどうしよう!」
ただその場でオロオロし続けていると、騒ぎを聞きつけたのかどうかはわかりませんが、食堂と廊下をつなぐスライド式の扉がガラリと開き
「どうかしましたか?」
現れたのは無口無表情という言葉が世界の誰よりも似合っている(ルファ談)天使兵フィア。一体今がどういう状況なのかさっぱり理解できていない彼女は、キョトンとしながら尋ねました。
彼女の登場と質問が出たのと同時に、レシアはバッとフィアを見て
「フィア!大変なの!詳しく説明している暇はないから省くけど、トトコとウェイルが私のせいで大変なことになってるの!」
「トトコとウェイルが・・・ですか?」
視線を自分に助けを求めてきたレシアから、頭を抑えながら悲鳴に近い絶叫を繰り返しているトトコとウェイルに向けたフィアは、表情一つ変えることなく視線をレシアに戻し