ディスガイア小説

□地獄日和
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地獄。そこは罪を犯したプリニー生まれ、そして教育され、全魔界へと出荷されていく場所。

現在は世界を救った元暴君ヴァルバトーゼを筆頭に活動をしているこの場所に、かつての反逆に参加した経験のある少女、アーチャー族のルファは働いていました。

あまり強くは無いため看守にはなれず、なりたくない職業ナンバー1に輝いているプリニー教育係として働いている彼女は、悪魔であるにも関わらず、争いが苦手で緑や花といった自然が好きであり、さらにアクターレの大ファンであるという、俗に言う変わり者の彼女は、鼻歌でを歌いながら花に水をやり続けていました。

「アクターレ様が大統領♪アクターレ様が大統領♪アクターレ様が大統領♪」

ちなみに現在の彼女の夢は、アクターレ大統領の秘書になることなんだそうです。

はたから見れば「コイツ頭大丈夫か?」と陰口を叩かれても仕方がない様子の彼女は、ジョウロの中に入っている水がなくなるのと同時に、ふと思い出します。

「あ、そうだわ。今日はフェンリッヒさんに使われてない部屋の掃除を頼まれてたんだっけ」

三日前の夕食の献立を思い出したように呟いた彼女は、ジョウロをあるべき場所にきちんと直し、遅れるとあの狼男に何を言われるかわかったものではなので、できるだけ小走りで頼まれた場所へと向かいました。





バケツに雑巾、ハタキやモップといった掃除用具を手に持ち、指定された場所についた彼女はまず、誰も使用していないドアを開けて中へと入ります。

「うわぁ・・・すごいホコリ・・・」

文字通り本当に誰も使っていない無人の部屋のようで、大量のホコリが部屋に入ったルファに向かい襲いかかってきます。

「こういうのは普通プリニーがやる仕事だと思うけど・・・フェンリッヒさんってば閣下意外には問答無用で鬼畜なんだから・・・」

本人が聞いたら確実にボロクソに言い返されそうな独り言を呟いた彼女は、ここで文句を言ってても仕方ないとばかりに掃除を始めます。

一番最初に空気の入れ替えをするため窓を開け

「とりあえず、まずハタキでホコリを取りましょ」

ハタキでホコリを払うことにしました。

掃除用具一式が入ったバケツを入り口付近に置き、そこからハタキだけを取り出し、目に付くホコリをパタパタと払っていきます。

払われたホコリはかすかに発生する風に乗り、ルファの顔へと当たっていきます。

「げほっげほっ、うう・・・マスク持ってくればよかったかも・・・」

今更後悔しても遅いので、若干やけくそ気味に片手で口と鼻を覆いながらホコリを払っていると、棚のホコリを払っている時、突然ハタキが何かにぶつかりドサッとそれが床に落ちる音が彼女の耳にダイレクトに入りました。

「ん・・・?」

何だろう。疑問に思った彼女が下を向くと、一冊の本が棚と壁の間に落ちていました。

何のためらいもなく、彼女はその本を間から引っ張り出し、ハタキを棚に置いて開いてみました。すると・・・

「何これ・・・閣下の・・・写真・・・?」

開いてみた適当なページにあったのは、ページ一面に張りつくされているヴァルバトーゼの写真。普段の勇ましい姿から、幸せそうな表情で鰯を食べているというちょっぴり可愛らしい姿まで、色々な表情の彼の写真がそこにはありました。

次のページをめくってみると、そこもヴァルバトーゼの写真でうめつくされており、さらに次のページも・・・次のページも・・・全て彼だけで埋め尽くされていました。しかもよく見ると、ページの下の方には日付が明記されています。

「こんなに沢山の閣下の写真・・・一体誰が・・・何のために・・・?」

この疑問の渦に飛び込んでしまったルファは、この写真を撮って保存した人物は、閣下に異常なまでの執着をみせている侍、イレーナではないのかと真っ先に思いました。あのババa・・・じゃなくて侍ならやってくれそうですが

「そんな回りくどい愛しかたをする人とはとてもじゃないけど思えないわ・・・ん?これって・・・」

ふと本を閉じ、裏表紙を見た彼女の目に飛び込んできたのは、隅に書いてあるある人物の名前。

そこに明記されていた名前は・・・

「フェン・・・リッヒ・・・さん・・・・・・?」

え。確かに病気的に閣下命の彼だけど、こんなストーカーみたいなこと隠れてするとは到底思えな





「以上が昨日最後の記憶なんだけど、それ以降から今日の朝までの記憶がさっぱりないのよ・・・」

時刻はお日様が真上に昇っている頃、場所は地獄にある食堂。学校にある食堂を思い出してくれれば事足ります。

目の前の席に座っている親友、ユスティルにルファはテーブルに頬杖をつきながら昨日覚えている記憶を全て話し、ため息をつきました。

親友の話を聞き届けたユスティルは、何故か引きつった表情を作り、ルファの目を見ず若干斜め上を見て

「いや・・・アタシもよくわからないなぁ・・・」

ちょっぴり汗を流し、指で頬をポリポリかきながらそんな返事をしました。

この態度と表情からして、確実に何か知っている様子ですが、問い詰めても何も言わないだろうとわかりきっているルファは、もう一度ため息をつき

「そう・・・一体あの後何が起きたのかしら・・・気が付いたら部屋のベッドの上で寝てたし・・・」

「・・・・・・」
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