ディスガイア小説
□お姉様へ
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「ふふっ。大天使兵にもなると、ある程度のワガママは許してもらえるみたい。本当はダメ元だったんだけどね」
クスリと笑うとローファクトはテナから手を離し
「それに、私だってテナちゃんと同じ、お姉様に半年以上も会ってないのは身が裂けるような辛い気持ちだったのよ」
「え・・・」
全く知らなかったローファクトの本音に、テナは呆然としました。
「でも。そんな暗い気持ちとも今日でお別れ!一刻も早くウェウルダイムに降りて、お姉様を見つけて一緒に天界に帰って、また三人で仲良く楽しく暮らしましょう!」
この瞬間彼女の脳内に、かつて自分達とその「お姉様」と一緒に生活していた様子が、五割ほど美化されて映しだされました。
「はいっ!ローファクトお姉様!じゃあ早速準備しないといけませんね!」
準備?ローファクトが首を傾げると、テナは部屋にある棚からバスケット(かごの方)を取り出し
「お姉様と再開した時のために、お菓子を一杯持っていかないといけませんね!」
キラキラと輝く瞳を彼女にむけ、クッキーやらマフィンやらパイやら沢山のお菓子をそれにつめ始めました。ちなみに全部、彼女の手作りです。
わくわくしながら、まるで遠足のお菓子を選ぶ子供のようにバスケットにお菓子をつめるテナの様子に、ローファクトは
「遊びに行くんじゃないんだけどね・・・」
やれやれと少し呆れつつ、小さく呟きました。
同じ頃、皆と朝食をとっていたユイカはふと、たくあんを掴もうとしていた箸を止めました。
「・・・・・・」
「どうかしたんですか?」
片手にお茶碗を持つ天魅が、彼女の横から不思議そうに声を駆けました。
「いや・・・何でもない。多分気のせいだ」
ユイカはそう答えると、箸でたくあんをつかみました。
それから一時間ぐらい経った頃、テナとローファクトはウェルダイムのとある森に降り立ちました。
「ローファクトお姉様、本当にここでよろしいのですか?」
片手にバスケットをぶら下げているテナが尋ねると、ローファクトは周囲をキョロキョロと見渡しながら
「そのはずよ。問題はお姉様がどっちの方向へ行ったってことだけど・・・」
ローファクトはそう言うとまず右を見て、その次に上を見上げて、さらに左を見ました。しかし、いくら見る方向をかえても、見えてくるのは不規則に並べられた木々だけです。
「予知能力者でもない限りわからないわよねぇ・・・」
「どうします?」
テナは不安そうに尋ねると、ローファクトは彼女を心配させたくないとばかりに、少し大声で
「大丈夫よテナちゃん!こういう時は、誰かに話を聞くのが一番よ!」
「その・・・誰かって誰です?」
「それは・・・」
そこまで考えてなかったローファクトが、少し冷や汗をかいたその時でした。突然、彼女達の目の前に立っていた一本の木が、大きな音を立てて倒れたのです。
『・・・・・・』
絶句する二人の前に現れたのは一体のウッドゴーレム、レベルは結構高い方。
「ああ、あの方に尋ねるのですね!」
「そんな天才的な天然ボケ繰り出してる場合じゃないわよテナちゃん!どう見てもあのウッドゴーレムは私達を襲うことしか考えてないわ!」
慌てて叫ぶローファクトはすぐに剣を取り出しますが、テナはその真逆、武器を出さずに警戒心も強めず
「見た目だけで判断してはいけませんよローファクトお姉様。彼はただ気が立っていて、今すぐにでも暴れだしたいだけなのです」
「それじゃあ余計に警戒しなくちゃいけないんじゃないの!?」
「何言ってるんですか。これから私が彼を説得するんですから、そんな心配ありませんよ」
にっこりと微笑んでテナはローファクトに言うと、ウッドゴーレムの目を見つめてゆっくりと歩み寄り
「ほら、怖くない怖くない・・・」
と、説得ではない言葉を彼に書けた瞬間、ウッドゴーレムは容赦なく彼女を殴り飛ばし、近くの木へと激突させました。
「テナちゃーん!」
ローファクトが叫ぶのもつかの間、ウッドゴーレムはのっしのっしと、木の近くで倒れているテナに止めそさすつもりなのか、ゆっくりと近づいていきます。
ローファクトはウッドゴーレムより早く、テナの元へたどり着き、彼女とウッドゴーレムの間に入ると、剣を構え
「よくもテナちゃんをこんな目に遭わせてくれたわね!喰らいなさい!竜巻破裏剣!」
怒りのローファクト、竜巻破裏剣をウッドゴーレムにあびせますが、ウッドゴーレムは痛がる様子も無く、ケロリとしています。どうやら風属性に抵抗があるようです。
「そ・・・そんな・・・」
立ちすくんでしまうローファクト、開いてしまったレベル差を埋めるための属性攻撃が効かない以上、彼女にこれ以上成す術はありません。
今、ウッドゴーレムが目の前にいる標的を殴ろうと両腕を大きく振り上げ、彼女を見下しました。