ディスガイア小説

□お姉様へ
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唐突ですがここは天界、皆さんご存知大天使ラミントンが収めているあの天界です。

魔界とは違う純潔な空気と風が流れ、空はいつも穏やか、そんな至って平和なこの世界で一番偉い人が、つまりは大天使が住んでいる例の宮殿。そこでは毎日のように天使兵が忙しそうに働いていました。

天使兵とは、大天使の身のまわりの世話をしたり、天界を守るために戦ったりするとても優秀な兵士のことです。より頭がよく、強い天使が上級クラスになれるとの噂。

そんな天使兵の一人、大天使兵であるローファクトという名の天使は、宮殿内の廊下をてくてくと歩いていました。

「はあ・・・お姉様が去ってから半年以上・・・一体お姉様は何時お戻りになるのかしら・・・」

「お姉様」と呼ぶ誰かを心配しながら、ため息交じりで呟く彼女の手には、ケーキ屋さんの箱がありました。本日のおやつのようです。

彼女はしばらく歩くと、とあるドアの前で足を止め、ドアノブに手をかけ

「テナちゃーん、ケーキ買ってきたけど食べるー?」

先ほどとは打って変わってのん気な声を出しながらドアを開け、部屋の中にいるテナという人物に声を駆けました。

しかし、彼女が見た光景は

「お姉様に会いたいお姉様に会いたいお姉様に会いたいお姉様に」(以下同文)

テーブルの上に頭を載せて、ブツブツと呟く中級天使兵、テナの姿でした。

「テナちゃ―――ん!」

彼女の異常な様子に、ローファクトは叫ばずにはいられませんでした・・・




三分後、二人はテーブルに向かい合わせで座っていました。それぞれの手元にはローファクトが買ってきたケーキと、テナが淹れた紅茶がありました。

「ごめんさいローファクトお姉様・・・心配をかけてしまって・・・」

あまり元気のない表情のテナはうつむき、静かに謝罪しました。

「いいのよ。テナちゃんがお姉様を想う気持ちはよーくわかっているから。ああなっちゃうのも無理はないわ」

ローファクトは明るく返事をすると、紅茶を一口飲みました。

「それにしても、お姉様は今、どこで何をしているのでしょうか・・・」

「見当もつかないわね・・・あのお姉様が悪魔にやれるとは考えられないし・・・」

「でも、音信不通になってしまっていますし・・・まだ一度も帰ってきていませんし・・・」

「妙ねぇ・・・」

「ああお姉様・・・一体私は後、どれぐらい待てばアナタに会えるのですか・・・?」

「テナちゃん・・・」

「お姉様に会いたいお姉様に」(やっぱり以下同文)

「・・・・・・」

とても悲しそうな表王の彼女を見て

ローファクトは「何とかしなくてば」そう決心しました。




翌日。天使兵の朝は早い。

「はあ・・・」

昨日、ローファクトとお茶を飲んだこの部屋の流しで、テナは雑巾を絞りながらため息をつきました。

「きっとまた、ローファクトお姉様を困らせてしまったわ」

ぽつりと独り言を言い、彼女は続けます。

「お姉様がいなくなって・・・というか上司様からのご命令で人間界に降りて・・・私のお姉様離れのいいチャンスだと思っているのに・・・あんあ様子じゃ当分無理ね・・・」

そこまで呟くと、彼女が絞っていた真っ白な雑巾がびりっと音を立てて破れてしまいました、

「あら破れちゃった・・・この雑巾、随分古いものだったかしら?」

疑問に思いつつ彼女が首を傾げた瞬間

「テナちゃん!」

やけに嬉しそうなローファクトが、ドアを壊さんばかりの勢いで開いて現れました。

「あ、ローファクトお姉様、おはようございます」

テナが振り返って軽くお辞儀をすると、ローファクトは瞳をキラキラと輝かせて彼女の両手を握り、興奮気味に喋りだします。

「喜んでテナちゃん!お姉様捜索の許可が下りたわ!」

「えっ・・・?」

一瞬、目の前にいる先輩が話したことの内容が全くわからなくなったテナは、呆けた表情を浮かべますが、その三秒後、彼女はその意味を理解すると

「え・・・ええっ?えええええ!?」

びっくり仰天。絶叫して驚きを見事に表現しました。

「どう?すごいでしょ?私がんばって上司にお願いしたの“お姉様を探させてください”って」

得意げにローファクトが話すと、テナは目をぱちくりさせて

「でも・・・よかったのですか?ただの天使兵が図々しくお願いなんてして」
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