ディスガイア小説
□恐怖!女体風邪!
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所変わって男子寮。一時間目が始まる直前に彼女達は女子禁制と言われていることはないこの場へとやってきました。つまり、俗に言うサボりを犯してやって来たのです。
「何で僕までこんな所に・・・」
愚痴をこぼしながら、ニトは生き生きとした様子で進むトルネアの後ろを歩いていました。
「まあまあそんなこと言わないで、お見舞いっていうのは皆で行った方が楽しいよ」
彼女の隣にいるミンティーは、ニコニコしながら全く根拠の無い事を言いました。
「ミンティー・・・それ、自分の経験から言ってる?それともただの推測からきて言ってる?」
「え?」
「あ、もういいや・・・」
一点の汚れも無い、天使の純粋な瞳を見て、ニトはこれ以上彼女の言葉の根拠を探る気を無くしました。
「トルネ、一ついいアルか?」
トルネアの隣を歩くあやめが、ふと彼女に問いかけました。
「何?」
「私達男子寮に来るの初めてじゃないアルか、そんな状態でタユマの部屋わかるアルか?」
確かに・・・と後ろのニトは何も言わずに納得した表情を浮かべました。トルネアが誰も知らないときにタユマの元へかよっていたら別に問題はありませんが
「大丈夫!ついさっき通りすがりの生屠を軽くシメて部屋の場所吐かせておいたから」
にっこりと笑って返事をするトルネアの右手には、恐らくそのシメた相手のものであろう血がこびりついておりました。
『・・・・・・・・・』
その生屠の身に何があったのか、すぐさま理解したあやめとニトはさっと青ざめますが
「トルネアってパワフルなんだねー」
ミンティーよ、お前の思考が解らない。
それから数分後、トルネアがシメた生屠に教えてもらった部屋までたどり着きました。
「ここがタユマの部屋アルか?」
「その筈だよ。タユマくーん」
ドアをドンドン叩き、トルネアは叫びますが返事はありません。
一方ドアの向こうの側では、それ程広くない部屋にぽつんとあるシングルベッドの上に、全身毛布に包まっていてタユマがおりました。
「・・・」
ドアを叩く音が聞こえた瞬間、彼は気の弱い子犬のようにビクッと反応しましたが、何も言わずさらに身を縮めました。その様子は、まるでひきこもりのようです。
そんな様子など知らない乙女四人は、返事をしないドアの向こうの彼を心配します。
「おかしいアルな・・・返事が無いアル」
「寝てるのかなぁ?」
「それは無いと思うけど・・・たぶん」
「じゃあもう強行突破しかないでしょ」
ニトはそう言うと、腰にあるポーチから一本の針金を取り出し、それを三人に見せました。
「針金でどうするの?」
首を傾げてミンティーは尋ねると、ニトは答えを返さず、ドアの前に立つトルネアに
「ちょっとどいて」
と言って彼女をドアの前からどけ、ドアの鍵穴に針金を突っ込みました。
その様子にピンときたあやめは手を叩き
「おお、ピッキングアルか!」
「そういうこと。僕達盗賊に開けられない扉はないよっと」
軽快な口調で言うのと同時に、ガチャリという音が鍵から聞こえてきました。
「開いた!」
これで部屋に入れる!と喜ぶトルネアは嬉しそうに叫びます。これで違う人の部屋だったら大変なことになってます。
ニトは鍵穴に差し込んだ針金を引き抜くと、それを手早くポーチに中にしまい、ドアノブを回して引きます。
ドアは何の抵抗も無く、するりと開きました。ドアの向こうの部屋の中は、カーテンが締め切ってある上、電気もつけていないので多少薄暗いです。
「よーし、開いた開いた」
まずニトが何の抵抗も無く部屋の中へと入り
「タユマくーん、お見舞いに来たよー」
「ついでに来たアルー」
続いて上機嫌のトルネアと、ただ単に頼まれたからついてきたあやめが入り
「(人の部屋に勝手に入っていいのかなぁ・・・。まあ、トルネア達がやってるってことはいいってことだよね!)」
最後に基準にする相手を確実に間違えているミンティーが、心の中で呟きつつ部屋に入りました。