ディスガイア小説
□修羅の国の宿屋事件簿
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修羅の国。それは選ばれたものしか足を踏み入れることの出来ない幻の王国・・・もといプリニー天国である。
そんな国でレベル上げを行ったアデル一行は、ホルルト村へ帰るため、ガルガンチュワ(人間界の物ではない物を指す)に、粛々と乗り込もうとしていました。
「今日の晩飯は何だろうなぁ」
一番初めに乗り込んだアデルがそう呟いた瞬間
「ストォー―――――――――ップ!」
突然、よく響く男の声が背後から聞こえてきました。
「・・・・・・」
この時アデルは、早く帰って母の作った晩御飯を食べて風呂入ってプレネールさんがキャスターを勤めるニュースを見て寝たいと激しく思いましたが、運命に逆らう気力なんて全く起きなかったため、嫌な予感を感じつつ後ろを振り返ります。
「すぐに帰ってもらったらちと困るぜ!」
そこには案の定。堂々と腕を組んで仁王立ちするラウトの姿がありました。
このタイミングで何かやらかす気か!?一部を除く全員がそう思いましたが、構ってやらないと後がうるさいので渋々耳を傾けます。
「実は俺な、修羅の国を探索中スゲーもん見つけたんだ!」
「前置きはいいから結論だけを言え」
リアスの最もな意見。それにラウトはなんだよーと頬を膨らましますが、とりあえず答えます。
「この修羅の国にさ、修羅の国にさ!何と!宿屋が存在していることを発見してしまったのだ!・・・ってコラー!きびすを返してガルガンチュアに乗り込もうとすんなー!」
全員呆れたのか、興味が無いのかはわかりませんが、ぞろぞろとガルガンチュアに乗り込んでいきます。前にもこんなシーンがあったような・・・なかったような・・・
「言っとくけど今日はここに泊まる予定だから帰っても晩飯ないぞー」
『なにぃ!?』
ラウトに案内されたのは「修羅の宿」という看板が入り口の扉の上に掲げられた、物々しい雰囲気を持つ宿屋でした。
壁には血を表現しているのか、赤いペンキがぶちまけられたように塗られており、周囲の植物はほとんど枯れ、コウモリが周辺をあわただしく飛んでいます。
「(悪趣味・・・)」
そう思うアリナの横で、サラがガタガタと子動物のように震えていました。そりゃ怖いわ。
しかし、全然平気そうな二人の馬鹿と一人のマゾ。まとめて3馬鹿は
「おおー!スゲーなラウト!お前よくこんなの見つけたな!」
「えっへん!どうだ!スゲーだろ!」
「何だかすっごい刺激の予感!ワクワク!」
それぞれとても楽しそうにはしゃいでいました。ちなみに二人の馬鹿はヤイナとラウトで、一人のマゾは主役Bのことです。え?わかってる?・・・そうですか
先頭のラウト、横開きで多少錆び付いているドアをめしめしといわせながら開けて中へ入りました。そんな彼の後ろを皆は何も言わずについて行きます。
受付と書かれたカウンターまで行くと
「・・・何だ・・・ッス」
愛想−120%のプリニーがこちらを睨んで言いました。どうやら彼が従業員のようです。
ラウトはそんな態度を気にすることなく
「予約してたラウトだけど」
「ああ・・・お前か・・・ッス、やっと来たな・・・ッス」
「(接客態度二重罰・・・)」
ひそかにユイカはそう思いました。しかし決して口には出しません。面倒だから
プリニーは受付の引き出しから鍵を四本取り出すと、ポイッとカウンターの机の上に捨てるように置き
「これが部屋の鍵だ・・・ッス。せいぜい気をつけることだな・・・ッス」
「気をつける?何のことだ?」
リアスが首を傾げると、ラウトが答えます。
「実はこの宿ってちょっとした曰く付きらしくてな。何でも夜中に一人で出歩くと大変なことになるって・・・」
彼がそこまで言った瞬間
「オメガコメット」
「ギガクール!」
ユイカのオメガコメットと、アリナのギガクールが同時に飛び、氷属性が弱点のラウトはボロボロになってしまいました。
「触らぬ神に祟りなしですよ。ラウトさん」
床に力なく倒れたラウトを、天里はなぐさめるように言いましたが、果たして倒れている彼に、この言葉は届いているのでしょうか。
攻撃後もただならぬオーラを発生させている二人に、天魅は首を傾げつつ
「もしかして二人共、幽霊の類が苦手・・・」
『違う!!』
同時に絶叫した二人の言葉は、宿全体を揺るがすような声でした。