ディスガイア小説
□毛虫の金太郎
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しかし、トルネアとミンティーとあやめは話に夢中で全く気づいていないのか、呆然と立ち尽くすニトを置いて、その光景をスルーしようとテクテク歩いていきます。
ニトとトルネア達の距離が、大体1,5メートル程離れたところで
「ちょっと待ってよぉ!」
『?』
大声で叫ぶニトに、女子三名は頭に疑問符を浮かべながら振り返りました。
「何華麗にスルーしようとしてるの!?このどう見ても異常な光景をどうやったらスルーできるの!?後足元ももうちょっと見なよ!」
『え?』
必死に訴える二トの言葉に突き動かされた女子三名は、教室の壁と、床に散らばっている窓ガラスの破片と、魔界にしては珍しく青々とした空を見ました。
「きゃあ!何この大穴!ウチのクラスじゃなくてよかった!」
「うわぁ!床がガラスの破片ばっかりネ!一体何事アルか!」
「わー。今日も良い天気ー」
台詞だけで誰が何を言ったのか丸判りですね。ニトは異常事態に全く気づいていないミンティーに
「ミンティー、反対だって」
「反対?あ!大きな穴が開いてるよ!」
ミンティーが異常事態に気づいたところで
「・・・で、どうするのよ」
「スルーが一番いいネ。下手に関わって怪我とかしたくないアル」
「僕もあやめに賛成ー」
「でしょうね、じゃあ私も・・・」
全員の意見が一致したので三人はすたこらとその場を後にしようとしますが
「ちょっと待って、ミンティーは?」
突然足を止めたトルネアのこの一言で、あやめとニトの足が止まりました。そういえば彼女の姿が見えません。
まさか!と思いつつ三人は同時に振り向くと、そこには案の定穴から教室の中へ入っていくミンティーの姿がちらりと見え、すぐに見えなくなりました。
『ミンティ―――――!!』
三人は絶叫して彼女の後を追い、大穴から教室の中へ進入。そしてすぐに悠々と教室へと侵入したミンティーを取り押さえました。カーテンが閉めてあるためか、多少薄暗いです。
「ん?三人共血相変えてどうしたの?」
「駄目じゃないか!こんな危なそうな所に堂々と侵入して!もうちょっと危機感を持とうよ!」
彼女の足を押さえるニトが始めに叫び
「そうアルよ!厄介ごとに巻き込まれたくない私達の気持ちをよーく考えて欲しいアル!」
彼女を羽交い絞めにするあやめが次に叫び
「全くよ!こんな気味悪い所に関わらなくても人生を有意義に送れるわ!さあ、帰りましょ!」
彼女の片腕を掴んだトルネアが最後に叫びました。
しかしミンティーは必死な三人の気持ちなんていざ知らず
「どうして?教室の壁に謎の大穴が開いてるっていう未知の体験なんて滅多にあることじゃないよ?それってとっても素敵だと思わない?」
瞳をキラキラと輝かせ、夢を見る少女のように語りました。
「うわあ天使はとっても素敵な考え起こすアルな!それじゃあその素敵な妄想をとっと鍵付き日記帳にでも書いて明日に備えてぐっすり寝るア」
「ぎゃっ!!」
突然トルネアが大声を出したため、皆の動きがぴたりと止まりました。
「ど、どうしたアルか?トルネ」
「あ・・・アレ・・・」
震えながらトルネアが指す先には、言葉に表せそうにないほど巨大な青色の毛虫が、ドット化してゲーム内に登場させたら確実に全身が画面に入りきらないような大きさの巨大な毛虫が、もしゃもしゃと彼女達の見知らぬ誰かさんの机を食べている光景がありました。
「ひっ!」「なっ!」
その驚きの光景に、ニトとあやめは思わず悲鳴を上げ、固まってしまいます。しかし
「わー大きい虫さんだー」
怖いもの知らずのミンティーは、驚いた三人の束縛からからするりと抜けて、のん気に言いながら巨大毛虫に近づいていきました。
「うーむ・・・流石は怖いもの知らずのミンティー、あんな未知の生物にも動じてないわ」
「言ってる場合じゃないよ!ミンティー!危ないから帰っておいでー!」
ニトが叫んで呼び止めようとしますが、ミンティーはまるで聞こえていなかったように無視し、巨大毛虫の真横まで来ました。
「!」
巨大毛虫がミンティーと他三人の存在に気づき、驚きながら近くにいるミンティーの方へ頭を動かします。そしてふしゅるるるるる・・・とうなり、彼女を威嚇し始めます。