ディスガイア小説
□雨の日のホルルト村
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「おお!窓の外が全部水じゃ!」
「水族館みたいですねー」
アデルがひどい目にあっているとも知らず、ロザリーとタローはのん気にはしゃいでいました。
「おっ、何やらアデルに似た魚がおるぞ」
「あっ、本当だー兄ちゃんそっくりー」
気づけ
アデルの家の屋根には、もう誰もいなくなったかと思いきや
「止まないな、雨」
「引かないわね、水位」
「止まらないないな、風」
リアス、アリナ、ユイカの三人が屋根の上に避難している姿がありました。並んで体育座りしていますよ。彼女達
「ところで話は唐突に変わるが、さっき師匠の声が聞こえなかったか?」
アデルが水の中に落ちた現場を見ていませんが、声だけはかすかに聞こえたリアスは二人に尋ねますが
「気のせいよ。気のせい」
「空耳だろ」
「そうか・・・やっぱり気のせいか」
軽くあしらわれてしまいました。果たして二人は厄介ごとには付き合いたくないからか、ただ単に本当に聞こえなかったのかのどちからでしょうね。
「で、これからどうする」
再び唐突にリアスは二人に尋ねました。
「どうするも何も雨が止むか水位が引くのを待つしかないだろ」
さらりとユイカが正論を口にすると、リアスは飽き飽きとした表情で
「だよなぁ・・・どんだけ待てばいいのやら・・・。こんな状況じゃあ昼寝なんてできやしない」
「のん気ねー」
呆れるようにアリナが言うと、彼女の視界に大きな木の板に乗ってどんぶらこと流れていく侍兄妹、天里と天魅の姿が映りました。
『・・・・・・・・・』
二人と目が合ったアリナはしばらく固まった後
「何やってんの!?」
驚きのあまり立ち上がって叫び声を上げました。それによってリアスとユイカも板に乗って流れている二人の存在に気づきます。
「何だ・・・アレ」
「何で、流れてるんだ?」
そして呆然。
そんな三人の心境を知ってか知らずか
「あっ、リアスさんにアリナさんにユイカさん。やっほー」
天魅はにこやかに笑顔を浮かべて三人に向かって手を振って挨拶をしました。確実に危機感ゼロです。
「やっほーじゃないだろ!?何でお前ら水の流れに身を委ねてんだ!」
思わずリアスがそう叫ぶと、すかさず天里が事情を説明
「いやぁ・・・お恥ずかしい話、私たちも泳げないもので・・・」
「ああ・・・カナズチなのね。リアスと同類で」
さり気ないように呟くアリナ。ですがリアスは無視しました。真実なんて否定しただけで無駄ですからね。
「しかも兄妹そろって・・・か」
どうしようもなく可哀想なものを見る目でユイカは言いました。
「このままだとどこか知らない土地に流されてしまいますー。助けてくださーい」
緊張感に欠けた様子で、天魅はSOSを出しました。
助けたいのは山々なのですが
「泳いで行けと?」
「無理よ、絶対。特にアンタじゃ」
大自然の力の一つ、洪水の流れに巻き込まれてしまったら、たとえ悪魔でもひとたまりもないでしょうね。特にリアスだと
「ちなみに先に言っとくけど、水を凍らせて渡ろうとしても、その前に氷が水に流されてアウトよ」
「そうだよなぁ・・・どうするか・・・」
侍兄妹を助け出す方法は何かないかと、リアス達は模索します。ぽっくぽっく
ちーん
「ひらめいた!」
リアスはそう叫ぶと同時に、ユイカに視線を移します。
「えっ?」
「矢の後ろに紐を付けて、それをあの木の板に刺して、それからロープを引っ張ればいいんだ!」
「なるほど」
INTがめちゃくちゃ低いリアスの天才的なアイディアに、アリナは即座に納得しました。