ディスガイア小説

□魔界劇場へようこそ
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「劇の全体的なターゲット。そう!それは不良なんや!」

「何でー?」

不思議そうにエリロンが尋ねると、アチノは

「何故かやと!?それは!これを見てみい!」

即答して叫ぶと、皆がついさっきまで絵本に夢中になっている最中に、プリニー達が黒板に貼った一枚の紙をバン!と手で叩きました。叩かれた紙の中央には円グラフがあり、上部分には「不良100人に聞いた!アチノ様が直々に調べたんだぜアンケート!」と書かれてありました。

「・・・えっ?何これ」

思わずトルネアが呟くように言うと、アチノは早速説明を始めます。

「これがウチが自力でとったアンケート、“アナタは貯金をしていますか?”や」

「貯金・・・?あーそっかあ!優等生はお金がたまったらすぐにバンバン使っちゃうけど、不良はせっせと真面目に貯金してお金を貯めてるからねー。絶好のターゲットなんだよねー」

ニトの解説と個人的な意見が飛び出すと、クラス一同超納得。

「そうや!現に100人中94人が貯金していると答え、残り三人がボランティアに使っていると答え!残り二人が家が貧しいから貯金なんてできない。と!答えとる!」

「だから不良狙いか」

一応納得はしたタユマは言いました。彼はもう講義しようとは思っていないようです。やっても無駄だって解っているので

「そや!納得してもらった所で!キャストの発表や!」

光の速さで話を進めるアチノは、ポケットから一枚のメモ用紙を取り出し、それに書いてある文字を読み始めました。

「まず脇役から発表するで!お姫様に呪いをかける悪い魔女はソネリーで、その手下達がソネリーのお供のラナとえーりん。後ウチら商人の敵盗賊ニトや」

「えー、アタイ王子様になってお姫様役の女子と、特にトルネアとキスしたいー!」

「誰がするか!!」

机の上に足を上げてブーブー文句を言うソネリーに、トルネアは大声で叫んで即、講義しました。さらに

「ちょっと・・・何で僕がアレと一緒なの?」

少し戸惑うニトからも講義らしき言葉が飛び出しますが、アチノは全てスルーして発表を続けます。

「次はお姫様に贈り物をする妖精さん達。この役はエリロンとスタレイのドクロ兄弟と、現在爆睡中のノロラと、純粋天使のミンティーや。そんで国王様と女王様はフィーノとあやめやで」

「おお!ワタシ女王様アルか!嬉しいアル!権力者アルな!」

「あのー。貴女の配役にケチつける気は全くないのですが、何で妖精が四人もいるんですか?原作には三人と書いてあるのですが」

わくわくしながら自分の女王様姿を想像するあやめと、ツッコむべき場所に丁寧にツッコむフィーノ。それから

「僕達は妖精さんかー。頑張ろうねお兄さん」

「うんですぅ。エリロンと一緒なら何でも頑張れるですぅ」

「・・・ぐーぐー」

「ノロラさーん。起きてー役決まったよー」

仲良しドクロブラザーズがお互いニコニコしながらお互い応援し合い、まだ眠っているノロラを、役が決まったことを伝えたいミンティーは、必死で彼女を起こそうとしていました。起こさない方が身のためなのですが

「最後は王子様とお姫様や!心して聞くんやで!王子様は我らがリーダータユマで、お姫様は恋する乙女代表トルネアや!」

「俺か」

「おっしゃああああ!!」

王子様とお姫様の配役に、タユマは薄いリアクションを見せ、トルネアは椅子を蹴飛ばして立ち上がり、両手を握ってガッツポーズを見せ、大声で叫びました。たくましいです。

クラス一同が唖然として、トルネアを見つめます。

そこでハッとしたトルネアは少し自嘲気味に笑って

「あ、あはは・・・嬉しすぎて・・・つい・・・」

ゆっくりと席に着きました。

一先ず落ち着いた所で、アチノが最後の説明を始めます。

「今呼ばれんかった奴はエキストラ及びセット等を動かすスタッフとしてウチの指示に従ってもらう!本番は三日後!怠育館で行うから、その本を隅から隅までよーく読んで、自分の役割を覚えておくんやで!じゃあ解散!」

「あのー、まだ二時間目の時間帯ですよ?」

フィーノの常識的なツッコミは、クラス全員に総スルーされてしまいました。

「てゆーかこの配役、かなりの混乱を起こすんじゃいないかと思ってるのは僕だけかな?」

「ニトだけじゃないアル。ワタシもそう思ってるネ。いざという時の為に本番当日は回復アイテムをいっぱい持っていったほうがいいネ」





三日後、プリニー達があちこちでたくさん告知してくれたお陰で、怠育館にはたくさんの悪魔達が集まってくれました。そしてその生徒の大半は不良でした。

ここまではアチノの狙い通りでしょう。舞台裏から客席を見る彼女の後ろには、放課後になるといつも怠育館を占領している優等生の屍がありますが、誰も気にしていません。

「ここまでは計画通り・・・」

某神になろうとした彼のような笑いを浮かべるアチノに、トルネアは問います。

「ねーアチノー、本当に皆普段着のままで劇に出てもいいのー?」
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