ディスガイア小説
□魔界劇場へようこそ
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一年×組。×はペケと読みます。
タユマが仕切るこのクラスは、今日も誰一人欠けることなく出席しています。
出席してる時点で不良確定ですが、タユマ曰く「一見全員出席して不良のようにしているが、優等生のように凶師の授業をロクに聞かなかったり、凶師からカツアゲして、不良なのか優等生なのかややこしくするのが俺のやり方だ。文句はつけさせん」だ、そうです。それをクラス全員に守らせている所を見ると、タユマはかなりの大物悪魔のようですね。
まあ、それが原因なのかは知りませんが、このクラスに凶師はほとんど・・・ていうか全然来ません。カツアゲ等が怖いようです。
そんな今日も元気に学級崩壊している一年×組の真ん前にある教卓から、それを力強く叩く音がしました。
何事かと、凶師でも来たのかと思い。全員顔や視線を教卓へ向けると
「時代は劇や!」
何やらわけの解らないことを叫びだすアチノの姿がありました。
彼女の目は、まるで腹ペコの飢えたライオンが、目の前に食料のシマウマをを発見した時と同じように、ゴウゴウギラギラと熱く燃えています。
「いきなり劇ってどういうこと?」
トルネアが尋ねると、アチノは背後から燃え盛るオーラを発生させて
「劇や劇!劇やって金儲けしてウハウハゴーゴーや!」
そう力説しますが、クラスメイト全員、意味不明。理解不能。そこで
「詳しい説明を求める」
「あっ、私もー」
タユマとミンティーが手を挙げて言うと、アチノは燃え盛るオーラを一旦とめて
「やれやれ、天使のミンティーはともかく、ウチらのリーダーが無知なんてちょっぴり失望やわー」
「(むかっ)」
見下すように言うので、タユマが若干彼女に怒りを覚えました。
「解っとらん奴の為に説明したる。このクラスでちょいと劇をやって、金を稼ごうと思ってんねん」
「わー面白そー、でも、何で劇なの?」
ちょっとわくわくしながらニトは尋ねます。
するとアチノは再び燃え盛るオーラを発生させて
「よくぞ聞いてくれましたぁ!まず偉大なる第一回一年×組劇場のチケット代を格安にして売る!そしてその公演で客の心をグッと掴み、第二回公演時にはチケットの値段を第一回目よりも少し高くして売る!そして第三回の公演時には・・・って感じで金をどんどん集めて大儲けするんや!」
目を黄金のようにキラキラと光らせて豪語しました。
「わかった。すでに俺の了解無しで第二回目以降の公演を考えていることがよーくわかった」
頬杖をつくタユマは、教卓で力説する金の亡者をどうやって再起不能になるまでボコボコにしようか考えながら、脅すように言いました。一部のクラスメイトがビビッてます。
「でも値上げなんてしていいの?逆に客足途絶えない?」
そんなタユマにビビることなく、エリロンはアチノに質問をぶつけました。
「大丈夫や、ファンっつーもんは例えどんなぼったくりのような値段のグッズでも、どんなに高い写真集でも買ってしまうもんなんや。それがファン根性ってもんなんや」
「てかもうファンができること前提で話が進んでるんですね」
アチノの自身あり気な返答に、フィーノが冷静にツッコみますが、彼女はそれを無視して続けます。
「だから!この第一回目の公演は超重要なんや!ここで生徒達の心をわしづかみにせんと、沢山稼ぐことができへんねん!」
再び豪語する彼女、もう完全に公演する気満々ですね。クラスメイトの反対意見等は総スルーする気ですよこの悪魔。
「もぐもぐ・・・劇するのはいいとして・・・もぐもぐ・・・何するアルか?もぐもぐ・・・」
まだ二時間目の時間帯にもかかわらず、包み隠さず堂々と早弁をするあやめは言いますが、食いながら喋るのは行儀が悪いですよ?
「ふふん。実はもう劇の内容からキャストまで全てウチが考えてあんねん。プリニー共、例のアレ配るんやー」
「アイアイサー」
凶室のドア付近で待機していたプリニー達がびしっと敬礼すると、彼女が言った例のアレという物をみんなに配っていきます。
「どうぞッス」
「どうも。・・・ん?何これ絵本?」
不思議そうに見るトルネアの手にあるのは、本屋さんで売られてそうな小さい子供向けのミニ絵本でした。タイトルは「ねむり姫」
「私これ知ってるー。眠りに落ちたお姫様を、王子様がキスして起こすって話。小さい時よく読んだー」
「さっすがは天使、この手の話は詳しいんやなぁ」
アチノはミンティーを褒めますが、それぐら誰でも知っている気がします。悪魔の世界では別なのでしょうか。
ミンティーが言った話の大まかな内容を聞いたクラスメイト達は同様します。
「えっ?これってそんなラヴロマンス的な話なの?」
「ゼンゼン悪魔向けじゃないネ」
「どっちかっていうと人間か天使向けだよ。あるいは不良」
皆がそう口々に言うと
「ふっ・・・皆甘い・・・ベビーカステラより甘いわ・・・」
全てを悟ったラスボスのようにアチノが呟くので、クラス一同の視線が再び彼女に向けられます。