ディスガイア小説

□自称超絶最強美少女大魔王ハンナちゃんの一日
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ソウタは、疲れきっていました。

「・・・・・・」

ラハールがフロンと共にエトナと彼女の僕のプリニーを連れ戻そうとウェルダイムへ旅立ってから数日、ラハールがいない間魔王代理を任せられたハンナは、魔王(仮)という称号を使い、暴走の限りをつくしていました。

自分の悪口を少しでも言った悪魔をその場で殺したり、魔界の悪魔達から税金とか言って金を奪いまくったり、自分に敵意を持っている悪魔がいる町や村を滅ぼしたり・・・・・・なんていう悪事は一切働いていません。

彼女の暴走の相手、それは自分がラハールの弟子になってから、ずっと一緒に過ごしてきたエトナの弟子、ソウタなのです。

「・・・・・・」

自室のベッドの上で死体のように眠っているソウタは、会社でストレスを溜めまくり、もう人生に疲れきった悪魔みたいでした。

そんな彼の様子を、部屋のドアの隙間から見ているロロスと牡丹は

「うわー完全に死体みたいやー」

「ソウタ君発狂寸前だね。後どれ位したら死んじゃうかな?」

「さあ・・・それはウチにもわからへんなぁ・・・こりゃあはよう陛下に帰ってきてもらわんと」

「別に私はいいと思うけどなー、彼が死んじゃっても、私の生活には何の支障もないんだし」

「でも、ソウタが死んだらリエルちゃんが悲しんでしまうで?牡丹ちゃんやって、あの子の悲しむ顔はみとうないやろ?」

「あ、それあるかも」

「やろ?最近リエルちゃんアイツのことばっか気にかけてんねん、それでハンナはん不機嫌っぽくてな、いっつもアイツに八つ当たりしとるらしいねん」

「それ、すっごい悪循環」

牡丹が素っ気無く言うと、突然ベッド上で死体のように眠っていたソウタが起き上がりました。

「おっと、気づかれたか?」

「じゃあ、私達は退散しよっか」

彼が部屋を出る前に、ロロスと牡丹は音も無く退散。それを目撃している悪魔は、誰一人としていません。

部屋から出たソウタは、さっきちゃんとドアを閉めた筈なのに、何故かドアが少し開いているという事に全く疑問を持たず

「・・・・・・」

死んだ魚のような目で、その場に呆然とつっ立っていました。

すると、一人の魔王側近の悪魔が自分に近づいて来るので、ソウタはゆっくりと顔をそちらに向けます。

「ソウタ、ハンナ様が呼んでるぞ」

またか。ソウタはそんな目をしました。魔王側近の悪魔は彼に何も言わずにその場をさっさと去りました。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・ハァ」

長い長い沈黙の後、彼はとてもとても重いため息を一つ、その表情からは人生に絶望している様子がよく覗えます。

ここでずっと立っていても仕方が無い、ソウタは己の足をゆっくりと動かし、謁見の間へ向かいます。その間

「(こんな生活がいつまで続くのだろうか・・・)」

そんなことを思い始めていました。実はこんなことを考え始めるのは今日が初めてじゃなかったりしますが、それはそれとして置いといて

「(これもあの女が魔王の称号を持ったからだ・・・何で陛下はあんな女に魔王の称号をやるんだろうなぁ・・・)」

実際にはあげたのではなく、自分が留守の間、魔王の仕事を彼女に押し付けるために、仮の魔王の称号を名乗ることを許可しただけなのですけどね。

「(陛下・・・何でまだ帰ってこないんだよ・・・せめてフロンさんでもいい・・・誰でも良いから帰ってきてくれよぉ・・・)」

ここまで考えると、彼の目に少し涙がたまってきました。きっと心の汗でしょう。

そんな憂鬱な彼が、ふいに窓の外に視線を移すと

「ん?」

突然空が光りました。白い光でした。

「眩しっ!」

ソウタは思わず腕で目を隠すと、白い光が消えた空から、何が落ちてきました。

「はいぃぃ?」

驚きの声を上げるのもつかの間、それは魔王城の裏へと落ちました。

慌てて窓からその様子を覗おうとするソウタですが、ここからでは魔王城の裏がよく見えません。

これは事件だ!ソウタは走ってハンナがいる謁見の間へと急ぎました。





謁見の間、ソウタはドアを突き破りそうな勢いで部屋に入りました。

「ハンナ!大変だ!」

緊急事態を伝えようと急ぐソウタですが、彼がこの部屋に入ってくるや否や、ハンナは玉座から飛び降り、彼の腕を乱暴につかみ

「知ってる!裏に何かが落ちてきたんでしょ?見に行くに決まってるじゃん!」

どこか楽しそうに言うと、もの凄いスピードで謁見の間を去りました。
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