ディスガイア小説
□お留守番弟子ズ
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「俺様はいまからエトナとプリニー共を連れ戻しに行ってくる。魔王の仕事は全てお前に任せたぞ、ハンナ」
「はい殿下、じゃなくて陛下。行ってらっしゃいませー」
エトナとラハールがプリンをめぐって大喧嘩して数ヶ月。とうとう痺れを切らしたラハールはエトナの家出先であるウェルダイムへと行くことを決心しました。
実はさっきもウェルダムへ行ったのですがラハール曰く「お腹が痛くなったから負けた」といって帰ってきたのでした。うん、ベタな言い訳ですね。
まあそういう訳でリベンジをしに、そしてエトナとプリニー達を連れ戻すため、ラハールは再びウェルダイムへと向かうため、時空渡し人の元へ向かいます。
その時
「待ってくださいラハールさーん!私を置いて行くなんて酷いですー鬼畜ですー」
なんて言いながらフロンがラハールの後をついていきました。
ラハールとフロンが時空渡し人によってウェルダイムへ運ばれた後、ハンナはニヤリと八重歯をむき出しにして怪しい笑みを浮かべ
「フハハハハー!やったぜ!陛下がいなくなった今!アタシがこの魔界の魔王として君臨することができる!念願の魔王だ!イッヤッホウ!!」
心のそこから楽しそうな笑みを浮かべてハイテンションで叫びました。喜ぶのはいいのですが、隣にいるリエルがビビッてますよ。
弟子がそんな野望を吠えているとは知らないラハールは、ウェルダイムに着くまでの間
「ハーッハッハッハ!アイツのことだ、これで俺様が溜めに溜めていた仕事の山を全て片付けるに違いない!エトナ達も連れ戻せて仕事も片付く!まさに一石二鳥とはこのことだ!」
いきなり高笑いしてそんなことを言い出すのは別にいいのですが、隣にいるフロンがキョトンとしていますよ。
魔王の玉座がある大広間、ハンナは魔王の玉座に座りご満悦。ですが
「うーん・・・やっぱりこの城って埃っぽいいんだよねー」
唐突にそんなことを呟き、周囲をキョロキョロと見回しました。
「今更か」
冷静にツッコむのは特に魔王らしい仕事を全くしていないハンナに呆れているソウタです。
「お、お掃除をしたほうがいいのでしょうか」
オドオドしながら尋ねるのはさっきビビッていたリエルです。
「いや、掃除したいのは山々なんだけどね・・・陛下が帰ってきたとき城がピカピカだったら“そんなにピカピカにするな!俺様の目が腐ってしまうだろう!”って怒られるような気がして・・・」
「それ、陛下の性格・・・は無理だから思考を改善したほうがいいと俺は思う」
「無理無理、あの人退化はしないけど成長もしないから」
さり気なく主である師であり上司を馬鹿にするハンナは、魔界の情報誌を読み、さっきリエルが作ってくれたお菓子をほおばっていました。
「掃除したいとか言いながら早速玉座を汚すな!お菓子がボロボロこぼれてるだろ!」
ソウタが注意をしますが、ハンナは無視して
「掃除するにしても、プリニー無しでこの城全体をキレイにするのは不可能に近いし・・・もうめんどくさいからここだけにしよう、うんそうしよう」
「無視かよ!」
「で?ウチらは何すればいいんや?」
手を上げてロロスはハンナに尋ねます。コイツもソウタを軽く無視です。
「えっと・・・各自適当で、キレイにしすぎず汚いままにせず。ちょうどいい割合でピカピカに」
ここまでくると適当を通り越しています。いい加減すぎですが、全員納得するしかないので作業開始。
「ハンナ、お前もやるんだぞ?わかってるよな?」
「えー」
「えー、じゃねぇよ!言い出しっぺが文句言うな!」
ソウタの怒りの一喝により、ハンナも強制的に掃除に加わることになりました。
数十分後、ハンナの言うとおりピカピカにしすぎず、汚いままにもせず、いい具合に掃除できた広間ですが
「・・・どうしよう」
「どうしようって言われてもなぁ・・・」
呆然と立ち尽くすハンナとソウタの視線の先には、魔王の玉座をせっせと一生懸命磨くリエルの姿がありました。
彼女の手により磨かれた玉座は薄汚い部屋には似合わないほどピカピカに輝き、一際存在感を出しています。もう眩しすぎます。ドラキュラだったら砂になっていそうです。
「ルンルンルン♪ピッカピカになるまでもうちょっとですよー」
なんて鼻歌まじりにまだ玉座を磨き続けるリエルは、恐らくハンナの言ったことを完全に忘れている様子。
普通ならここは怒るところですが、ハンナは
「アタシが言ったことを百億光年の彼方においてきて作業に没頭するリエルちゃんも可愛いなぁ〜」
完全に親馬鹿でした。
「怒れよ!」
変わりにソウタが怒りますが
「じゃあアンタはあの一生懸命玉座を磨いているリエルちゃんを怒れる?」
「うっ・・・」
ハンナの言葉により、その怒りは十万光年彼方に置いていくしかありませんでした。
ピッカピカになった玉座ですが、流石にラハールでもリエルを叱れば家来の大部分が自分の敵になることは分かっているのでまあ大丈夫だということにしました。
「すいません・・・本当にすいません・・・」
うっかり玉座をピッカピカになるまで磨いてしまい、半泣きで謝罪するリエルに、ハンナは笑顔で
「大丈夫よリエルちゃん。もし陛下が帰ってきたときに激怒しても、アタシが“実はソウタがやった”って嘘八百言っておくから」
「俺が犠牲になるのかよ!」
さようならソウタ。アンタのことは忘れないよ・・・
「俺死ぬの!?」