ディスガイア小説

□女の戦と書いてダイエットと読むべし
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それはまだ、ヴォイドがヴォイドダークだった頃、セラフィーヌに恋敵が誕生する前の頃、めっちゃ分かりやすくいうとEDを迎える前。
絢爛魔界の姫魔王セラフィーヌに雇われた悪魔たちは、今日も今日とて戦場に投げ出されたりロケットで見知らぬ魔界に飛ばされたりアイテム界やキャラ界で時間を潰しまくったりと忙しい日々を送っていました。
日々激務に勤しむ彼らですが、その中でも心安らぐ時がありまして。
「兎兎魔界の名産はなんつってもウサギさんの大好物の代名詞ニンジン!栄養たっぷりの甘くて美味しいニンジンは別魔界でも人気なんだぞ!」
魔力を吸収する槍を破壊するために兎兎魔界を訪れたキリアたち反乱軍ご一行、そこからこっそり外れた悪魔数名が楽しみにしているのが、情報屋を生業にしているパイレーツ、ヒテの「魔界名産品プレゼン」です。試食は自己責任でご自由に。
「うめー!生でもイケるぜ!」
「姉さんが生で食べるなら俺も生で食べるね!」
「キャロットパイとか久しぶりに作ってみたいな〜ゼリーもいいね!」
「人様の畑を勝手に荒らしていいのか……?」
「いいんじゃない?それより、今日の晩御飯ポトフがいいな〜ね〜コタロウ〜」
「おい」
畑からニンジンを引っこ抜いて生で食ってる姉弟がいたり、掘り起こしたニンジンを袋に詰めている小悪魔がいたり、呆れる侍の横でニンジンを両手にごっそり抱えている天使がいたりと、好き勝手していたワケですが当然無許可です。
侵略されているから大丈夫か〜と適当にした為に、現魔王のウサリアにバレてめちゃめちゃ怒られたものの、ニンジン美味しい!と褒めたら機嫌を直してくれてお咎めもナシになりました。
ソレイユがこっそり「チョロイ……」とほくそ笑んだのは見なかった事にしようとフィルスは誓ったそうです。
また別の日、一部のシモベご一行様だけで魔界調査を行った際には。
「牙竜魔界は和食が有名なのは知っての通りだと思う。その中でも俺のオススメは人食いイチゴをまるまる1個使った喰われ苺大福”!人食い苺特有の甘いのかすっぱいのかよく分からない不思議な刺激と、甘苦い黒小豆から作った苦甘い餡子と!つきたての餅みたいにもちもちとした皮と一緒になって生まれるのは何とも言えないワンダーランド!それが口いっぱいに広がってなぁ……この感覚は病み付き間違いなし!だぞ!」
場所は牙竜魔界の城、瓦屋根のど真ん中に喰われ苺大福が販売されている店が建っており、彼らはそこで休憩をとっていました。
なお、力説していたヒテは既にサッカーボール程の大きさの大福を36個を完食させています。まだイケます。
「なんでこんな大きい大福を36個も食べれるの?バカなの?」
「ソニードの旦那は25個テイクアウトしてたぞ!」
「バカでしょ」
日頃の恨みがこもった罵倒を口にしたフィルスは瓦屋根の上に腰を降ろしました。手にはすぐ近くの屋台で買った喰われ苺大福があり、早速ひと口食べてみました。
「あ、美味しい。でもひと口じゃあ餡子まで辿り着けない……」
「なかなかボリューミーだよなぁ」
フィルスの横にいるミトンが持っている大福は、およそ3分の1ほど食べられていますが食べている本人はやや苦しそうな表情。これが一般的な反応で、上記の情報屋と暗闇騎士の2名がおかしいのです。予備知識です。
その隣にいるソレイユも同じぐらい疲れた顔を浮かべて、
「これは1個買ってみんなで分け合って食べるモノだよ……あるいはヒテさんとソニードさん専用」
「皮めっちゃ伸びる!」
さらにその横のコタロウ、半分ほど食べた大福の引っ張れば引っ張るほど伸びる皮を楽しそうに伸ばしていました。
「やっと苺までたどり着いたが……なんだこの桁外れの大きさは・・・スプーンで中をほじった方が早くないか……?」
一番端に座っている姫華は、餡子の部分を食べ進めてようやく巨大な苺に辿りついていましたが既に苦い表情。小食でもなければ甘いものが苦手な訳でもなく、この常識はずれな量の餡子と苺に圧倒されているのです。
そして、苺大福を見るだけで満腹感を覚え始めたフィルスは、
「学生時代に本で読んだ事あるけど、人喰い苺って苺のヘタの部分がハエ取り草みたいにな形になってて、苺の甘い香りに釣られた悪魔や魔物をパックリ飲み込んで24時間かけて消化するんだって。その栄養分は苺の実に蓄えられるから、更に甘みが増して次の獲物を誘いやすくなるそうだよ」
さらっと出て来た人喰い苺の概要に悪魔4名は食べるのを止めてやや引き気味。全く気にしていないのは店のおじさんと話こんでいるパイレーツだけです。なお40個目を食べ終わりました。まだ食べます。
「今一番聞きたくなかった知識だぞそれ……つまり何か?アタシらは悪魔の血肉を溜め込んだスイーツ食ってんの?奴らの血肉は苺になって苺はアタシらの血肉になんの?」
「それが自然の摂理ってやつだよミトンちゃん……分かっちゃいるけど引くよね」
完全に食欲を失ったミトンとソレイユ、残りは持って帰ってゆっくり食べようと話し始めた時です。コタロウが再び口を開いたのは。
「この苦しみをミニ魔界で悠々と過ごしている悪魔たちにも味あわせてやろうよ姉さん。そしたら少しは気が紛れる」
「おっちゃん!苺大福7個くれ!ついでにテイクアウト用の袋か何かくれ!」
「あいよー」
「おい」
姫華の静かな制止など聞く耳持たれず、手土産として持ち帰った喰われ苺大福はミニ魔界に残っていた悪魔たちを色々な意味で苦しめる事になるのでした。
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