ディスガイア小説

□トラウマはいつも平行線
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魔界では数少ない巨大な建造物である魔王城ですが、人口密度の少なさは魔界イチと言っても過言ではありません。
というのも現魔王の人望と認知度の少なさが原因ですが、魔王は現在別魔界に遊び・・・ではなく偵察に行って不在なので、この問題に気を留める悪魔は存在しません。今も、そしてこれからも。
そういった悪魔の1人であるリアスと、成り行きで魔王城に住んでいる天使アニューゼは、今日も今日とて広間の庭にある白いベンチに腰かけて、のんびりまったり過ごしていました。
「金になる話ないかな・・・」
天井を仰ぎながらぼやいたリアスにアニューゼはいつもの仏頂面を向けずに、
「唐突だな・・・そして珍しい・・・」
お金の話など滅多にしない彼女の口からそういった話が出るのは意外でした。常に戦いの話か酒の話か友人たちの話しかせず、悪魔らしさを感じさせる話題を出さなかった彼女が・・・と、内心衝撃を受けて、
「この前さ、すんごく美味そうな酒を見つけてよし買おう!って思ったんだけど、今の俺に金はなかったんだ・・・」
酒という単語が出てきて少し安心しました。
「・・・給料日は」
「2週間前に終わった」
「・・・・・・」
酒にしか興味のないこの悪魔が金を使う場所は限られています。給料を貰ったその日には、そのほとんどが酒に消えてしまう光景を彼は何度見てきたのでしょうか。
よほどの事が無い限り酒への情熱を抑えない彼女の頭に「お酒を控えてお金を貯める」という文字は存在しません。アリナが口酸っぱく説教しても、その小言は右から左に通り抜けるだけでまともに相手すらしないのです。
「あーあ・・・アイテム海で稼いでもなぁ・・・」
「何で・・・?あそこなら10万も100万も1000万もすぐに溜まるんじゃ・・・」
あそこで大量に手に入るアイテムを売ればそれぐらいすぐに溜まります。お陰でアイテム議会を開く事に何の躊躇も無くなったぐらいですから。
しかし、リアスの表情は険しいままでアニューゼを睨んだかと思えば、
「何言ってんだ!あれは全部魔王の懐に入るんだぞ!プレイヤーマネーは魔王マネー!だから俺らは毎月24日の給料日にしか金貰えないんだっつーの!足りない分は自分で稼ぐしかないんだよ!」
「・・・魔王・・・いないのに・・・」
理不尽な世の中です。ちなみに、アイテム議会を開く時は魔王の許可が必要になるとアニューゼが知るのはこの一週間後の事になります。
「あ〜・・・金欲しいな〜・・・酒・・・」
ベンチの背に持たれた彼女が押さえきれない酒への欲求を抱えながら、手足を伸ばして大きく伸びをした時、
「それなら耳寄りな情報が!」
「うおっ!?」
ベンチの裏からひょっこり出てきた天魅がリアスの顔を覗き込んできたのです。不意打ちのあまり声を上げたリアスは慌てて振り向きました。
なお、天魅登場により人見知りスイッチが入ったアニューゼは今まで以上に喋らなくなりますが、そんな事などつゆ知らず、侍の少女は目を輝かせながら話し始めます。
「さっきビラ貰ったんですよ〜ペット探し協力のビラ!」
「ペットぉ?」
怪訝な顔をするリアスに、首を傾げるアニューゼ。人見知りスイッチが入ってはいるものの、話の内容は気になるようで、振り返って天魅を見ています。
「別魔界から取り寄せるぐらいこの魔界では珍しいペットなんですって!昨日、その子が脱走して行方不明になったのでビラを配って協力を仰いでいると、これを配ってたプリニーさんが言ってました」
「そりゃまた大層動物想いなコトで・・・」
呆れてため息をついたリアスがぼやくと、頭の後ろで腕を組んでベンチの背にもたれました。
「ノリ気じゃないんですか?」
「正直あんま期待できん。だってペットだろ?たかが動物だろ?賞金がかかってたとしてもそんなモノに大した金をかけるとは思えないな」
「ペットだからこそ並々ならぬ情熱をそそぐ悪魔がいると思うのですが・・・」
「そうか?ペットって食えば終わりじゃん」
「リアス・・・それは家畜・・・」
未だにペットと家畜の区別がついていない彼女にアニューゼが訂正をしたものの、当の本人は首を傾げるだけで終わってしまったので、いつかちゃんと説明しなければ・・・と決意するのでした。
「えー・・・じゃあコレって大したコトのない金額なんですかね・・・?私、ペット探しのお値段の基準がよく分からなくて・・・」
アニューゼの訂正が聞こえなかったのか、リアスの意見を鵜呑みにしてしまった天魅がしょんぼりしながら1枚の紙を見つめます。貰ったと言っていたビラでしょう。
ペット探しにいくらかかっているのかだけは、何となく興味があったリアスは念のため尋ねます。
「一応聞くけど、いくらかかってんだ?」
「100万ヘルです」
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