ディスガイア小説

□ミステリーホラーハウス
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注:後半グロ注意


「暇だなー」
「そうだね姉さん」
「こう暇だと刺激が欲しくなっちゃうよねー」
今日も魔界らしからぬ平和な空気が流れるミニ魔界。カレー屋があるテラスの花壇の横に、セラフィーヌの許可を得て設置したワインレッドの3人掛けソファーがあります。リクライニング機能はありません。
ミトン、コタロウ、ソレイユの幼馴染3人組は、そこに座って好き勝手くつろいでいました。今日はアイテム界とキャラ界の時空ゲートの点検日のため日課である鍛錬が満足にできず、とんでもなく暇なのです。
ミトンは背もたれに体重をかけてもたれ、コタロウはニコニコしながら姉を見つめて、ソレイユは足をぶらつかせながらミニ魔界の空を眺めていました。
「ねーねー今日の晩飯当番誰だっけ?」
「ああそれ俺だ。姉さんは今日何が食べたい?」
「カレー以外」
「やっぱりミトンちゃんカレー飽きたんだ・・・一時期毎日カレーだったんもんね」
「今は100日に1回エリクシルカレーだけどやっぱ飽きんぞ、色んなカレーにアレンジしてくれるのはありがたいけどよぉ。アタシだってたまには食いたいぞ・・・魔界貴族のポークカツ」
「じゃあ今晩それにしようか。姉さんが食べたいって言うんだから全力で応えないと」
「お金を持っていたら持っている分だけジューシーになるんだよね〜魔界貴族って。私も楽しみだなー」
暇人3人衆はそれ以外にも、今月家賃振り込んだっけ?とか師匠から漬物届いたけどどうする?とか、他愛のない会話を続けて数十分程の時間を過ごしていると。
「大変ですー!大変ですー!」
大声を出しながら、ミニ魔界の南の物置方面から駆けて来るのはメイドのマフィン。右腕に大きなバスケットを下げて、息切れひとつせずミトンたちの方へやってきます。
それがあまりにも騒々しくて、3人はキョトンとしながらこちらに向かってくるマフィンを眺めているだけですが、彼女はソファーの手前でピタリと足を止めると。
「大変なんです!」
「何が?」
丁度正面にいたミトンが首を傾げると、マフィンは彼女の手を掴み
「とにかく大変なのですぐ来てください!1秒のタイムロスが全体的に危険なので!」
「は?」
意味の分からない言葉遣いに唖然としている間にも、ミトンはすごい力で引っ張られるとそのままメイドさんに片手で引きずられてしまいました。向かう先は恐らく現在唯一使用する事ができる時空ゲートでしょう。
「うわ〜メイドらしからぬ腕力だぞコイツ〜何か腕がメシメシ言ってる気がする〜」
「姉さーん!?」
「ミトンちゃーん!?」
突然目の前で拉致された姉兼恋人を追いかけ、コタロウとソレイユは急いで追いかけるのでした。





マフィンに連れて来られたのは名も無き魔界でした。ロストの被害も比較的少なく、とても静かで安定した魔界です。
騒がしい中心街からかなり離れた場所に深緑色の森があります。昼間でもちゃんと光が入ってきますが、木や草の深い色のせいで不思議と暗いように感じてしまう場所でした。
土で作られた道の上にはマフィンと、連れて来られたミトンとその他数名が立っていました。
「・・・ここ、どこ?」
「魔界です」
「見りゃ分かるわ!こっちの話を聞かないで連れてくるだけ連れてきやがって!」
あの腕力には抗えないと悟って大人しく連れて来られたミトンですが解放されたら話は別です。唾を飛ばす勢いでマフィンに突っかかりますが相手はとても涼しい顔で「魔界の森ですが?」と答えるだけ。間違ってはいない。
「何が大変か分からないから人員補充したのにー」
その近くではソレイユとコタロウ、さらに姫華とフィルスとスズネが何が何やら分からない趣でミトンとマフィンを眺めている光景があります。
「何なんだ一体・・・」
「さあねー」
「暇つぶしになると思って付いてきたんだけどー・・・って、どうしたの?」
スズネに声をかけられたコタロウは顔を真っ青にしたまま、二時の方向を凝視して固まっているではありませんか。
皆がキョトンとしながら彼を見つめる中、真っ青になった青年は
「あ・・・あれ見て・・・」
震える彼が指す先にあるのは木造平屋でした。こげ茶色の木の壁と赤い屋根が特徴の、どこにでもありそうな一軒家。
「ただの平屋じゃん」
「よく見る!」
刹那、コタロウは余所を向いたフィルスの首を動かして強制的に平屋を見せるのですが、その際ぐきりという音がしました、気のせいでしょう。
赤い屋根の木造平屋。よく見るとこげ茶色の木の壁全体には赤色の手形が適度な隙間を開けてびっしり付けられており、唯一手形が付いていない窓には、解読不能の文字が書かれたお札が大量に張り付けられていました。
『―――――――――!?』
まるでホラー映画にでも出てきそうな風貌に一同声にならない絶叫。マフィンだけは平然として驚く一同を眺めています。
「あ・・・あれ・・・何だ・・・?呪いの家的なやつ・・・か・・・?」
「よく分かりません」
「よく分からない家に連れてくんなよ!」
恐怖のあまりキレ気味のミトンをスルーし、マフィンは続けます。
「あれは、新しいお菓子のレシピを考えながらお散歩していた時に、偶然ここでヒテ様と会った時でした・・・」
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