ディスガイア小説

□血フェチ天使は自重しない
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「これは・・・」

このような模様は見た事はありませんでしたが、模様から感じる気配には覚えがあります。

3年前。悪魔討伐隊隊長、ベルの命を蝕んだあの呪い。1年かけて彼女を死に追いやった忌まわしき呪い。

「なぜ・・・?」

ユイカは天性の悪魔嫌い。今はまだマシなのですが昔、アニューゼが調査隊にいた頃は悪魔を見る度に嫌悪感をむき出しにして威嚇していたぐらいです。

そんな彼女がアニューゼの知らない所で何らかのトラブルに巻き込まれ、悪魔に恨まれてしまっていたとしても不思議ではありません。

「でも・・・誰に・・・?」

どこかの悪魔に呪いをかけられたのだとしたら、どこの誰がかけたのか。とても凶暴な悪魔なのか、姑息な手段を使用する悪魔なのか・・・。

3年前の事件の時は、呪いをかけた魔神が死んでしまったため解く事はままならず、強力すぎるゆえに呪術師でも大天使でも手の施しようがありませんでした。

しかし、今回は呪いをかけた本人が生きているのか死んでいるのか分かりません。生きているのなら呪いを解かせるか解く方法を聞けばいいだけの話ですが、もし死んでいたとしたら・・・。

「(ユイカが・・・死ぬ・・・?)」

最悪の場合、またあの悲劇を繰り返す事になる。

「・・・でも・・・どうすれば・・・」

「う・・・ん・・・」

眠っていたユイカがほんの少し声を出した所で我に返り、アニューゼはとっさに袖を元に戻すと一歩下がりユイカから目を逸らしました。

マイペースかつのんびり屋の彼にしてはとても俊敏な行動です。SPD低いのに。

「あれ・・・?私はいつの間に眠って・・・ってアニューゼさん?」

眠気眼をこすりつつ顔を上げたユイカの視界に真っ先に映ったのは、天井を見上げているアニューゼの姿でした。

不自然な姿ではありますが彼ほどマイペースな天使になると「また変な事してるな・・・」と当然のように流されて終わってしまうので、あまり気になりません。

「そんな所で寝るなんて・・・よっぽど疲れがたまっているんだな・・・」

視線は天井に向けたまま言えば、ユイカは苦笑いを浮かべ

「ええ・・・天魅の世話と制裁で忙しいですし、先輩としてオルソドに色々教えているのでその過労かと・・・」

ちゃっかり「制裁」とか言ってましたが、ユイカの愛の鉄拳はいつも天魅の悪行のせいです。未だに天魅と会話していないアニューゼでもそれは分かっているので、口には出さないでおきました。

「そうか・・・」

とりあえず、アニューゼが腕の刺青を見てしまった事には気づいていない様子。まずはホッと一安心して息を吐きます。

「あ!」

安心していた隙に突然大声を出されてしまい、ビクッと反応せずにはいられません。やっぱりバレた!?と表情には一切出さず、ユイカに目を向ければ

「すすすすみません!こんなみっともない姿を見せてしまって!」

彼の思惑とは180度違う反応で今度こそホッと一息。目前の天使を内心ビクビクさせているだと夢にも思わず、ユイカは慌てながら開けっ放しの本を閉じて机の上を片づけ始めました。

「(バレた訳じゃないのか・・・)」

安心しますがあの刺青を見てしまった事をいつまでも隠している訳にはいきません。黙っていた所で無駄に時間が過ぎてしまうだけです。

何もできずにただただ彼女の死を待つだけの3年前とは違います。今ならまだ行動できる。間に合うかもしれない。

救える命があるのなら、救わなくては。

「ユイカ・・・」

「何ですか?」

机の隅に本をまとめて置き、その内の3冊抱えたところでユイカは振り返り、小首を傾げて呼びかけの内容を待ちます。

「・・・お前は・・・」

「ユーイカさーん!」

突然の妨害により続きが言えなくなってしまいました。

馬鹿みたいに明るい声でユイカを呼ぶ声の主は魔王城に1人しかいません。1人だけで十分です。

「天魅、図書館では静かにしていろ」

「はーい!そんな事よりユイカさん」

「切り替え早いな」

話の流れが全て天魅に持って行かれてしまいました。常にハイテンション馬鹿な彼女の話の間に割り込む事は、アニューゼにはできません。

よって、くるりと踵を返します。

「あれ、アニューゼさん。用事があったんじゃ・・・?」

「・・・今度でいい」

「そう・・・ですか」
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