日本一小説
□リベアさんの暇つぶし
1ページ/4ページ
喰世王。それは誰もがその名を耳にするだけで震えだす恐ろしい暴君。
ある時ある瞬間から突然この世界に君臨し、わずか数日で大陸プロテストを支配した、まるで神のような恐ろしく、とんでもない力を秘めた彼・・・じゃなくて彼女。
依然として謎が多い喰世王、今回はそんな彼女の日常を除いてみましょう・・・
喰世王、彼女の名をリベアと言い、死神と呼ばれる男、ギグをその身に宿しています。
一部の人々は「彼女は死神に操られている」と口にしていますが実は全く逆、彼女は望んで彼と残虐行為を繰り返しているのです。
さて、前置きはそれぐらいにして、本題へとまいりましょう。
世界をその強大な力のみで支配した少女、喰世王リベアは今・・・
「退屈だー!」
ベッドの上をゴロゴロ転がり、ひたすら退屈だと叫んでいました。その姿には、残虐行為を繰り返しているあの恐ろしい姿とは似ても似つかぬ姿でした。
「退屈だー!退屈退屈退屈退屈退屈退屈だー!」
「うるせ―――!」
退屈だと叫ぶ彼女に、ついに死神(あるいは破壊神)のギグの絶叫が飛びました。
「毎日毎日退屈退屈叫びやがって!テメーは録音機か何かか!」
脳内にキンキン響くギグの声を聞き、リベアは転がることと叫ぶことをやめ、うつぶせに寝転がり枕の上に頭を置くと
「だってこの世界には、もう私を楽しませるぐらい強い奴はもう存在しないんだよ?それに最近、みーんな喰世王のことを恐れて攻撃なんてしてこやしない。ギグはこれが退屈以外の何であると思ってる?」
「じゃあどっかテキトーな集落でも襲って、そいつで暇でももてあそべばいいじゃねぇか。どうせ人間なんて腐るほどいるんだしよぉ」
「それも考えたけど・・・どうせ戦うなら“自分はどこの誰にも負けない!”って感じのプライドが高い奴がいいなぁ・・・そんでソイツのプライドを体と共にズタズタにして、じわりじわりと殺してやりたい・・・最近の希望」
どうやら喰世王は相当どSなようです。
「クックック・・・お前もおもしれぇ事考えるようになってきたじゃねぇか、初めて会ったときはただの大食い女だと思ってたけどよ」
「そりゃどうも・・・。でも今時そんな奴、もうこの世に存在するわけないもんね・・・強い女って不幸」
常人では考えられない、てか考えたくもない発言を繰り返したリベアは、そこまで言うとついに枕の上に顔を埋めてしまいました。
実はここ最近、彼女はずっとこんな様子で、ベッドの上でゴロゴロと転がり、こうやってギグと愚痴をこぼしあったり、自分を神と崇める女装野郎に軽い嫌がらせをして遊んだり、趣味でも増やそうかと料理に挑んだものの、結局手下住人を病院送りしてしまったりと、まあ充実はしていたものの、欲求不満な日々が続いていました。
「フラストレーションたまりすぎて、爆発したい気分・・・」
「自爆だけはやめろ。俺まで巻き添え喰らって粉々になる」
自分のためだけかよ!とは叫びたくても叫ぶ気力がないリベア。彼女はもういっそ、このまま二、三十年ほど長い眠りについてやろうかと考えていた時でした。部屋の扉が叩かれたのは
「なにー?別にお楽しみ中じゃないから入っていいよ」
何だよお楽しみ中って・・・ギグが呆れるのもつかの間、ドアが開き、そこから一人の闘剣士、ペリトが入ってきました。
彼女は入ってくるなりすぐに跪き
「ご主人様、お話がございます」
「何?」
枕から顔を上げ、しぶしぶペリトを見るリベアの表情は、かなり気だるそうでした。
ペリトは顔を上げると
「実はその・・・ネーガが・・・」
「?」
ペリトに案内され、リベアは地下へと続く階段を下りていました。
「本当に召喚なんてできんのかよ」
疑わしそうに尋ねるギグに、先頭を進むペリトは冷や汗をかきつつ答えます。
「本人は“私の才能と知的センスにかけて、すごいものよんでみせる”って張り切ってましたけど・・・」
「成功例はないの?」
「はい・・・正直私も心配で・・・」
「まあ結果がどうであれ、暇つぶしになるからいいか・・・あ、見えてきた」
無駄に長い階段の先に見えた、焔術師ネーガの研究室へ続く扉。ペリトはドアノブに手をかけるとゆっくりと引いて
「ネーガー入るわよー」
というかけ声と共に、リベア達と一緒に部屋に入ると、最初に映った光景は
「め〜がで〜るめがで〜る、私の頭の種発芽〜」