日本一小説

□旅の始めはスパイシー
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レナ(後のベルビウス)に「世界を喰らう者を倒してこい!」(本当はもっと穏やかな口調)という命令を受け、狭い里から飛び出したダネットとリベア。

この時、どうせフィーヌに勝てなくて、すぐにリベアは自分の力を求めてくるだろうと、ギグは思っていました。

そう、二人があの事態に陥るまでは・・・





旅立ってから一日経ちました。太陽は青空の上でさんさんと輝いています。今日は晴天です。

森の中を、リベアとダネットは重い足取りで進んでいました。一歩一歩地面を踏みしめる音がとても重いです。

まだ世界を喰らう者は見えません。ゲーム本編だとあっと言う間に奴の元にたどり着きますが、実際に行くとなると何日かはかかってしまうのです。そういうものなのです。

しかし、それを頭の片隅にさえ置いておかなかった二人は

「お腹すいたですー・・・」

「餓死しちゃいそう・・・」

食料を節約せずに勢いだけで全て平らげてしまったため、極度の空腹に襲われていました。空腹状態のため、足取りが極限に遅くなっているというわけです。

「昨日考えもせず、パクパク飯食うからこーいう目に遭うんだっつーの」

その状況に酷く呆れたのか、ギグはまるで他人事のように言いました。

リベアは黙っていましたが、単純なダネットはその言葉にカチンときたようで

「なっ!なんですって!お前は私が馬鹿だと言いたいのですか!」

何の関係も無いリベアを睨んで激怒しました。怒るダネットをなだめながら「ああ・・・これからギグが何か言うたびに私が怒られるのか・・・」彼女は心の中でぼんやり思いました。

しかし二人の口論は簡単には止まらず。

「旅の初日に食料食い尽くす奴を、馬鹿って言葉以外でどうやって表現するんだ?アホって言えば満足か?」

「どこまで人を馬鹿にしたら気が済むのですか!それに、馬鹿って言う方が馬鹿なのです!」

「だったらお前も馬鹿じゃねえか!」

「そーいうお前こそ馬鹿なのです!ほら、お前も何か中のお前に言うのです!」

「・・・・・・」

あんまり関わりたくないなぁ・・・と本心から思うリベアですが、ギグを体に宿している以上、彼が起こしたトラブルと無関係になることなんて不可能なので、とりあえずどうやって二人の怒りを静めようかと名案を考えていると

「うっ・・・」

突然小さく声を上げて、彼女は前へ倒れました。

「!?」

唐突に起きた事態に、ダネットは驚きを隠せず真っ青になって彼女のもとへ駆け寄り

「ど、どうしたのですか!?お前!大丈夫ですか!?」

力なく倒れている体を必死に揺さぶり叫ぶ彼女。しかし、リベアは文字通りうんともすんとも言いません。

「何故返事をしないのですか!・・・はっ!まさかお前・・・中のお前に体を乗っ取られて・・・死・・・!」

「んなわけねーだろ」

最悪の結果が脳内によぎったダネットの耳に、ギグの声が入ってきました。

「なっ!来るならかかってきやがれです!」

何故か立ち上がって後ずさり、剣を取り出して戦闘態勢に入るダネット。声しか聞こえないギグですが、音で彼女がどんな行動をしたのかは大体わかるので呆れつつ

「そう簡単に体を乗っ取ることができるわけねえだろ。出来てたらとっくにやってるっつーの」

「え?そうなんですか?」

「お前、俺様を舐めてるだろ・・・」

「舐める?本体が無いのにどうやって舐めるのですか?」

「駄目だ、話にならん」

ギグ、ダネットとの会話続行を諦めました。そして

「おい相棒。いつまでこんな所で寝てるつもりだ。フィーヌのトコまで行くんだろ」

いつまでもその場で倒れこむのはいい加減やめて欲しいと思ったギグは、リベアに声をかけますがやはり反応はゼロ。

「・・・・・・」

「何だよ。まさか喰らう者を前にしてビビって腰が抜けちまったって言う気じゃねえだろうな」

まるで挑発するように彼が言うと

「・・・別に・・・そんな理由で・・・倒れてるわけじゃ・・・ない・・・よ・・・」

やっとリベアが口を開いて喋り始めましたが、かなり弱っている声でした。

「お、お前・・・本当に大丈夫なのですか・・・?」

「心配しなくてもいいよダネット・・・ただ、ちょっとお腹が空いただけだから・・・」

「え」
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