過去拍手置き場
□1話 それぞれの始まり
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冷たい感触がする。
電子頭脳にその情報を仕入れた途端、彼の意識は覚醒へと向けて動き始めました。
「うーん・・・」
灰色の短い髪と褐色の肌を持つレプリロイドの少年は、悪夢でも見終わった後のようなうめき声を上げながらゆっくりと体を起します。
「ここは・・・」
目を開けると視界に光が入ってきます。
光といっても窓一つない部屋は薄暗く、辺りには機械の残骸や破片が散乱しており、機械の焦げた臭いが立ち込めています。
そして足元には緑の制服と赤のゴーグルをした人が二人、力無く横たわっていました。
「何だ・・・これ・・・?」
恐る恐る触ったり、叩いたりと触れてみますがぴくりとも動きません。しばらく彼らの前で立ち尽くした後、カップラーメンができそうな時間が経って
「死んでる!?」
ようやく気づき、もう一度辺りを見渡してようやく察します。ここで戦闘が行われた事に
「そんな・・・でも一体どうしてこんな所で・・・?というかここはどこだ・・・?僕は誰だ・・・?」
目覚めた途端近くに死体があった事もショックですが、少年は自分の事を何も知りません。ここがどこなのか、自分の名前は何なのか、全く分からないのです。
思い出そうと一生懸命電子頭脳を働かせますが全然出てこず、うめき声を上げながら頭を抱えていると
「・・・目が覚めたのね」
「えっ?」
転送装置を使って現れたのは、白いアーマーに身を包んだ少女。手には身の丈ほどの長さの杖を持っています。
どこか不思議な雰囲気を醸し出す幼女はその赤い瞳で少年をじっと見つめます。
「・・・」
「なっ、何・・・?」
少々不気味さを覚えたのか若干後ずさりする少年。やや怯えています。
「怯えた顔も可愛いわ・・・グレイ・・・」
「グレイ・・・?」
「いえ・・・グレイきゅん・・・」
「グレイきゅん!?」
はいそこツッコまない。
「えっはっ?それってもしかして僕の名前・・・」
「まだマインドコントロールは済んでないけど・・・私はもう待ちきれないわ・・・事故とはいえ勝手に出て来ちゃったことだし好きにしてもプロメテは怒らないわね・・・というか怒らせない・・・」
少年にとっては訳の分からない独り言をぼやきながら、少女は杖を一振り。
するとどうでしょう、トゲの付いた首輪と犬用のリード、犬耳のついた灰色のカチューシャ、さらにはお子様にはみせられない大人用のグッズなどが天井から落ちてきました。天井に誰か潜んでいるんですか?
「何これ!?どうして天井から落ちてきたの!?」
驚くポイントがズレていますが少女は気にせず首輪を手に取って
「これ・・・グレイきゅんに似合うと思って一生懸命作ったの・・・今日からアナタは私のペット・・・余計な事は一切考えなくてもいいペット・・・可愛いわんこ・・・」
「それ自分で作ったの!?すごい!」
ズレズレの会話が繰り広げられていますがツッコミポジのキャラが不在のためそのまま会話が続いてしまいます。
「さあグレイきゅん・・・これを着けてお散歩に行きましょう・・・」
少女が首輪を持って迫ってきます。少年ピンチ。本人がピンチと思ってないけどピンチ。
「(んん?首輪って犬か猫にするハズなのにどうして僕がすることになるんだ・・・?この人は人と動物の区別がつけられないのかなぁ)」
疑問を浮かべつつ、このまま大人しくペットにされたくないと考えてふと視線を下にやると、近くで死んでいる人の手元に銃がある事に気づきます。
「まだ使えそう!」
急いでそれを手に取ると少女に何発か撃ちます。致命傷になりそうな箇所は避けて