過去拍手置き場

□最終話 適合者よ永遠なれ
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「お前はロックマンでも新世界の王でもない、モデルVに操られ人の命をもてあそんだ、ただのイレギュラーだ!」

真っ二つに引き裂かれたセルパンの体はどんどん崩壊の一途を辿っていきます。

それに伴いこの部屋・・・ではなくセルパンカンパニー全体の崩壊が始まりました。ラスボスを倒したらステージは崩壊する・・・よくある話です。

ヴァンに諭されたセルパンは無言のまま、崩れゆく感覚に見舞われているだけ。両腕が落ち、右半分の足元が崩れかけても一秒たりとも動じることなく全てを受け入れています。

「ちょっとー最後なんだし何か言ったらどうなのよ」

喋らないセルパンに不満を覚えたエールが苦情を入れ、シリアスな空気を早くもぶち壊した途端

「イレギュラー・・・か・・・それはお前たちが決められることではない・・・変化を拒み、人の進化を人の進化を阻むお前たちこそイレギュラーではないのか・・・」

「責任転嫁もここまでくれば素晴しいわね、アタシたちはアンタみたいな人々の脅威にはならないわよ」

とうとう左腕が落ち、轟音と共に床に大きな穴を開けます。居残っている社員は皆脱出できているのでしょうか。

「人々の脅威にはならないだと・・・なら、我らロックマンは・・・モデルVを奪い合い・・・殺しあうゲームのコマだと聞いても・・・そう言っていられるのか・・・」

「何だと!?」

目の色を変えたヴァンはふと気づきます。あの時、プロメテがあの男のが仕組んだゲームがどうのこうの言っていたような・・・

「最後まで生き残った者がこの世界の支配者となる・・・あの男が仕組んだ運命のゲーム・・・そして、お前たちにはその男の血が・・・流れている・・・モデルVを作ったあの男の血が・・・」

天井から落ちてくるガレキの量が急速に増え、セルパンの右半分が大きく傾き始めます。

ショックのあまり言葉の出ない二人はその場で呆然と立ち尽くしたまま。運よくガレキが頭上に落ちてくることはなかったのですがこのままでは危険です。

『駄目だ!もう部屋が持たない・・・脱出しなければ!』

モデルXに悟らされ二人は言葉を飲み込んで踵を返すと出口に向かって走り始めます。落ちてくるガレキをかわしながら、いつの間にか開いている出入り口へ飛び込んでいきました。

その途端出口の前に大きなガレキが落ち、進入することも脱出することもできなくなりました。

崩壊を続ける部屋に残された左半分だけのセルパン、徐々に傾いていきながら最後の言葉をつむぎます。

「滅びの運命は変わらない・・・戦いは終わらない・・・人々に心がある限り憎しみは生まれ続ける・・・感情を生み出す君たちこそ、真の・・・イレギュラーなの・・・だから・・・!」

左半分が倒れる直前、セルパンカンパニーの社長室は爆発を起こしました。

それに連鎖反応するかのように他のエリアも次々と爆発。爆発と崩壊を繰り返し、黒煙に包まれたセルパンカンパニーには、すでにかつて英雄と崇められた時の姿はありませんでした・・・。





ヴァンとエールはよく分からない空間を漂っていました。

表現力が乏しいわけではなく、辺り一面が真っ白に染まっている、地面もなければ壁も空もない空間。二人を守っているように、ライブメタルたちが周囲を回っています。

脱出に間に合わず死んでしまったのではないかと思っていましたが、ライブメタルたちもいますしその可能性は低そうです。

多分生きていると分かりましたが、彼らの心は複雑でした。

「あの男が仕組んだゲームのコマ・・・勝者はこの世界の支配者になれるって・・・つまり世界を征服するってこと・・・なのか・・・?じゃあ、俺は一体何のために・・・」

「アタシやヴァンにはモデルVを作った男の血が流れている・・・じゃあ、アタシの力は世界を支配するための力ってこと・・・?いや、それはともなくアタシとヴァンの血が繋がっているなんて・・・そもそもセルパンと繋がっているなんて・・・」

セルパンが死に際に放った真実は、彼らの心に深い傷を負わせていたのです。エールに関しては主旨と若干ズレているような気がしますが

ライブメタルたちが皆口をつぐんでいると、何もない空間から、薄桃色の光の球がゆっくり降りてきました。

「あっ・・・サイバーエルフ・・・」

それはエリアEやセルパンカンパニーで見たサイバーエルフそのもの。奇跡的にモデルVの吸収を逃れた者なのでしょうか

のんびり浮いているそれをぼんやり眺めていると

『おいおい、それっぽっちの事で追い詰められているのか?俺が知っている二人は、そんなに弱いヤツじゃなかったような気がするけどなぁ』

懐かしい声が聞こえました。
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