過去拍手置き場
□第25話 二度とない再会
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前回のあらすじ。割愛
「じゃじゃーん!再びとーじょーZX界永遠のアイドルルアールちゃんだよー!ファンの皆のご声援に応えて完全復活ー!」
壁が見えないほど広大なプールの中、モデルLのフォルスロイド、ルーアルはひらひら舞うように泳ぎながら一人ではしゃいでいました。もちろんファンなんてどこにもいません。
ルアールのテンションに合わせて巨大な本体が大きな口を開けばあら不思議、スピーカーが顔を出して可愛らしいBGMを奏でてくれます。
「それじゃあ新曲!“恋し猛進せよ、恋とは戦じゃれっつぱーりぃ”を歌っちゃうよー!じゃあいっきまーす・・・」
「ちょっと!そこの自称アイドル!」
マイマイクを取り出して歌い出そうとした矢先、突然飛んできた外野からの声に不快感。すぐさま本体が口を閉じてBGMを止めました。
「邪魔すんじゃねぇ!・・・ってアレアレェ?あなたセルパン様にイジワルしてた悪者じゃない、セルパン様だけじゃ満足しないから私までいじめるつもりぃ?」
またひらひら泳ぎながら声の主に問いかけます。まるで挑発するかのように
声の主、ロックマンモデルZXの少女エールは挑発などもろともせずルアールを指して叫びます。
「アンタをいじめるつもりなんてミジンコ程もないわ!ただ、アタシを差し置いてZX界のアイドルを名乗るなんて生意気だって思っただけよ!」
「はぁ?アイドルはこの私、ルアールちゃんだしーアンタみたいなアホな小娘のどこがアイドルってゆーのぉ?おつむ悪いのぉ?」
手を腰に当ててエールを見下すルアールは相手を馬鹿にするように言えば、頭に血が登りやすいエールはあっという間に口車に乗せられてしまうわけで
「なんですって!だったらどっちがアイドルに相応しいか勝負しなさい!それで白黒はっきりつけてるの!」
「いいわ、アナタの体に敗北と言う敗北を刻み込んで、二度と私に生意気な口をきけなくなるようにしてやる、というか二度と喋れなくしてやろうじゃねぇの!」
『戦え!』
モデルHの一喝は全員に無視され「第一回!萌えと愛と情熱の結晶!この世のアイドル決定戦!」は開催されました。
「未だセルパン様に逆らうとは・・・これも若さゆえの過ちか」
「あ、あの時の深海魚マニア」
一方のヴァン、いつぞやかエールがいない日に戦ったフォルスロイド、レグアンカーと対峙していました。
部屋の壁じゅうに水槽が飾られており、その中にいるのはやはり深海魚。かなりの数の深海魚たちがのんびり泳いでいました。
「むむ・・・何故小僧が深海魚マニアだというのを知っている。それを知っているのはセルパン様だけのはず」
鋭い目つきで睨まれるヴァンですがここまでくれば全く堪えません。相手の質問にのん気に返します。
「いや、前に会った段階で大体分かったし。魚逃げ出した時のあの慌てっぷり見たら何となくそう思うって」
『ヴァン、世間話してる場合じゃないだろう』
モデルZに正論を言われヴァンはハッとして今の状況を思い出します。レグアンカー含む全てのフォルスロイドを倒さなければセルパンまでの道は開けないと。
「そうだ、エールだって今頑張ってるっていうのに俺がのん気にしちゃいられない。勝負だ!レグアンカー!」
のんびりしていた趣から一変、キリリと真剣な表情で倒すべき相手を睨みます。彼はエールが敵と張り合ってアイドル対決をしているだなんて思いもしていないでしょう。
少年の顔から覇気を感じ、レグアンカーは双方の触手をゆっくり挙げて戦闘体勢。水温が徐々に下がっていき、床に氷が張り始めました。
「来るがいい若者よ!己の浅はかさ、無知、過ち全てを気付かせてやろう!」
「うおおおおおお!」
雄たけびを上げながらレグアンカーに向かっていくもここは水中、スピードは半減してしまうため懐にもぐりこむ行為は「捕まえてくれ」と言っているようなもの。
「そこか!」
触手を伸ばしてヴァンを捕らえようとするも、飛び交う触手を右に左に避けられてしまいます。まるでどこに来るのか分かっているかのように。
「若者の癖に小癪な・・・」
「そりゃどーも」
生意気に笑って返せばレグアンカーの真下をくぐり、そのまま見向きもせず走り続けるではありませんか
「んん?どこへ・・・」
ゆっくり方向転換したレグアンカーは、壁に向かって全力疾走しているヴァンを目の当たりにして、青いボディをさらに青くさせて真っ青になります。
「まっ!待て・・・!」
「そりゃあああああああああ!」
もちろん忠告など聞かず、セイバーを下から上に振り上げ壁にある水槽を破壊。ガラスの割れる音が部屋を木霊し、自由のみとなった魚たちが一斉に逃げていきます。
「ああああああああああああ!ナンテコトヲ!」
ショックのあまり片言になっているレグアンカー、急いで魚を捕まえようとしますが何分巨大なため小さい魚を捕まえるのも手こずる上力を入れすぎると殺してしまうかもしれません。
「くっ・・・強大な体とはなんと不便なものよ・・・今度セルパン様に緊急事態用の小さいボディを作ってもらった方がよさそう・・・」
強い殺気を感じたのは一瞬の事。
彼の言葉はそこで、途切れました。