過去拍手置き場
□第23話 因縁でもない対決
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エリアOは火の海と化していました。
ビルは火災に見舞われ、中は火のイレギュラーだらけ。ハイウェイ上の炎のせいか、夜空の半分は赤く染まっており、星の光が見えなくなっています。
エリアOに住んでいる人々のほとんどはエリアDに逃げ込みましたが、進軍を続けるイレギュラーがエリアDに来てもおかしくない状況。人々に安息の二文字はありません。
セルパンが放ったイレギュラーはエリアOを襲撃し、どこもかしこもイレギュラーだらけ。ガーディアンのメンバーが応戦して迫ってくるイレギュラーを喰い止めているも、事態は改善には進みません。
エリアの中心区では横一列に綺麗に並んだガレオンの大群が機械的な足音を立てながら前進していき、後ろからは様々なイレギュラーが続きます。
やがて、ガレオン大群は一ミリも隊列を乱さずに一斉に足を止め、銃口を前に向けました。
その先には、イレギュラーの進軍を喰い止めるため、そして人々を守るために派遣されたガーディアンたち。銃を構えて応戦している真っ最中でした。
「ヤバイ、攻撃してくるぞ!一旦隠れろ!」
リーダー各である隊員が張りつめた声を上げれば、他の隊員は一斉にガレキの裏や建物の後ろに身を潜めます。
リーダーも近くのガレキの陰に隠れて背を預けた刹那、ガレオンの一斉射撃が始まります。
激しい射撃の中、被弾してどんどん破損していく建物やガレキ。今自分たちが背にしているガレキがいつまで持つか、不安でなりません。
「クソッ、やはり消耗戦か・・・」
「隊長・・・ここは一度撤退した方が」
「弱音を吐くな!こうしている間にも、ヴァンとエールはイレギュラーのリーダーと闘っているんだ!俺たちが弱腰でどうする!」
若い隊員は隊長の一喝に気づかされ、先へと進んだヴァンとエールに申し訳なさを感じてしまい、頭を垂れて落ち込んでしまいます。
「申し訳ありません・・・」
「落ち込んでいる暇があるなら奴らを喰い止める術を考えろ!一分でもいい、一秒でもいい!奴らの進軍を押さえる事が希望に繋がるんだ!」
「はっ!はい!」
高らかに叫ぶ隊長に、隊員は瞳を潤ませながらも敬礼。この人について来てよかった、と感謝の意を現した美しい敬礼でした。
熱いドラマが繰り広げられている頃、ヴァンとエールはエリアOの奥まで来ていました。
背の高いビルが立ち並ぶ街の広場、イレギュラーが来なければ、今頃サラリーマンやOLの帰宅ラッシュが始まっていたでしょう。
そんないつもの光景も、火の海に囲まれてしまい今や見る影もありません。
「見つけた」
一番最初に口を開いたのはエールでした。
いつも通り、彼女の後ろにつくヴァンも小さく頷けば、広場の中心部で佇む二人組を睨みつけます。
セルパンカンパニーの幹部、プロメテとパンドラ。彼らはただ静かに二人の適合者を見つめていました。
「来た、モデルZXのロックマン・・・私の夕方ヒーロータイムをぶち壊しにした張本人・・・」
今回の件とは全く関係のない台詞を述べるパンドラに、ヴァンとエールは「へ?」と首を傾げ、プロメテは少々慌てだします。
「だからその話は後でって言ったでしょ!今は仕事中なんだからプライベートな話は無し!なっ?録画してるんだから問題ないだろ?」
「・・・真のマニアはリアルタイムと録画したモノのどちらも観賞するもの・・・フルタイム憎い」
「分かった!パンドラちゃんが言いたい事はじゅーぶん分かったから!そろそろお仕事に集中しよ!ね?」
「仕事中にちゃん付けで呼ばないで」
躾とは、時に拳を振るって教え込むもの。パンドラは杖でプロメテを思い切りぶん殴り、彼を街灯まで吹っ飛ばしました。
「ぎゃあああ!」
情けない悲鳴は街灯にぶつかった拍子にピタリと止み、プロメテは地面に伏して動かなくなりました。
「・・・ホントにプロメテが嫌いなのね、パンドラって」
「何故だろう、涙がこみ上げてくるような気がする」
敵ながら情けない姿に拍子抜けするエールとは違い、ヴァンは熱くなる目頭を押さえて肩を震わせます。やっと分かり合える仲間に出会えた、そんな気がして。
プロメテがぶつかった街灯は、めしめしと錆びた金属音を奏でながら倒れ、ビルの一角を破損させます。
それに伴い、ヨロヨロと起き上がったプロメテは重たそうな足取りでパンドラの元まで戻ればヴァンとエールを見据えます。
鼻血を垂らしたまま。
「さあ、クライマックスだヴァン、エール!ロックマンが殺し合う滅びの運命は、ついにグランドフィナーレを迎える!」
「あのさー。カッコよく言ってる所に釘刺すみたいで悪いんだけど、鼻血出てるわよ」
「やかましい!」
とか反論しつつも純白ハンカチを取り出して鼻血を拭き、どこかに戻して話を戻します。