過去拍手置き場

□第21話 真実と扉。ついでにモデルV
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全てのライブメタルが揃い、パスコードの修復も終わった日、ヴァンとエールはプレリーの呼び出しを受けて司令室へと呼び出されました。

何度も足を踏み入れた司令室ですが、今日は何だか空気が重いような感じがして、いつもはお気楽な二人も口をつぐんでしまっています。

司令官の椅子に座っているプレリーは二人に背を向けて座り、膝の上にあのぬいぐるみを乗せて窓の外に映る晴天を眺めていました。

やがて、二人に気付いたプレリーは椅子を回転させてこちらを向きます。

それに合わせて膝の上のぬいぐるみが降りて、プレリーが椅子から立ち上がりました。

「ミッションの遂行お疲れ様。今日二人を呼んだのは他でもないわ。あの研究所で見つかったデータの修復に成功したの」

「あのデータの・・・」

前回、プロテクタスの爆発とミサイルの爆発で研究所はほぼ壊滅。データの発見も絶望的となりました。

しかし、偶然見つかったプロテクタスの亡骸(破片)からデータが見つかり、ついでにモデルPのパスコードを読み取る事にも成功。

データはほとんど壊れており解読は不可能になっていましたが、プレリーたちが修復をほどこしてくれていました。

「すごいわね。爆発が原因とはいえ、あのボロボロのデータを三日で修復しちゃうなんて」

「ええ、でもフルーブが全然起きないのよ、何故かしら?」

彼女の笑顔には「逆らってはいけない」と本能で感じるような、かなり凄みが秘められていて、フルーブが逆らえなかったのも納得がいきます。

「(プレリー・・・大分キャラ変わってきたな・・・」

エールみたいにならなきゃいいけど・・・。ヴァンの心境は複雑かつ、不安でした。

「それで、データの中身なんだけど。やっぱりおねえちゃんが残したデータだったの」

「プレリーのお姉さんが・・・」

相変わらず謎のヴェールに包まれているプレリーの姉、プレリーの足元をちょこまか動き回るぬいぐるみを眺めていると、本当にどんな人物だったのか検討もつかな・・・

「あれ?」

「まずはモデルVの正体についてなんだけど・・・」

ヴァンが空気に合わない間抜けな声を出したのを無視して、プレリーは説明を始めます。

「数百年前の戦争の時世界の全てを支配しようとした男がいたの。彼は野望を果たすため宇宙に巨大な要塞、ラグナログを作り、自らも融合してその一部となったわ」

「融合・・・」

ぽつりとエールの頭の中には、ロボットと融合して戦うアニメか漫画が浮かび上がっているのでしょう。何となく予想できたヴァンは、苦笑いを浮かべているだけ。

ぬいぐるみがプレリーの椅子に飛び乗るとそこにちょこんと座り、足をブラブラさせています。

ヴァンが一人何かを言いたそうにしていますが、プレリーは気にせず話を続けます。

「彼は英雄に戦いを挑んだけど、破れたわ。その後ラグナログは崩壊して世界中に降り注いだ・・・その時の光景は今でも覚えているわ」

ふと見上げるプレリーの瞳には薄灰色の天井しか映っていませんが、揺れる瞳の中にはきっと、当時の光景があるのでしょう。

「モデルVはその男の意思が宿ったラグナログの破片なの。おねえちゃんは強大な力を持つそれに対抗するためにモデルXたちを作り上げた・・・その後のデータは、壊れていて分らないけど」

「そう・・・ねぇモデルX、アンタはプレリーのお姉さんについて何か覚えてないの?」

ポケットからモデルXを取り出し、エールは静かに語りかけました。

問われたモデルXは少し困った様子で

『ごめん、実は何も覚えてないんだ。僕たちが作られた時のデータは消されてしまっているから・・・』

「そう、消されちゃったのなら仕方ないわね・・・チッ

『とか言いながら舌打ちするのやめてもらえる!?』

大体予想はできていた反応なのでヴァンは一言もツッコみませんが、結構純粋な性格のモデルXにとっては、心を打ち砕く酷い反応だったに違いありません。

「あれ?コッソリとされるの嫌だった?じゃあ今度から皆にも分かりやすいようにしてあげる」

『違うからね!決してそういう意味で言ったんじゃないから!というかコッソリとされてもされなくても嫌なモノは嫌だから!普通!』

『お前たちいい加減にしておけ、まだ話は終わってないだろう』

ここでモデルZがぴしゃりと一言。鶴の一声と表現するに相応しいその声は、言い争っていたエールとモデルXを一瞬で静かにしてくれました。

たった一言で騒がしかった二人を静めてしまったモデルZに、ヴァンは尊敬の色を隠せません。輝く瞳の中には、強い憧れが見えました。
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