過去拍手置き場

□第18話 彼女が変われば少年は苦労しない
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今日のミッションはセルパンカンパニーの発掘部隊を襲撃し、部隊を指揮しているフォルスロイドを倒すこと。それだけでした。

「さて、今日もいっちょ頑張るか!」

嗚呼、もう二度とあの輝かしい栄光は戻ってこないのかと心の中で残念に思いつつも、すでにモデルZXにロックオン済みのヴァンは気合の入った一言をエールに言います。

前回風邪をこじらせてミッションに行けなかったエール。今日は彼女のフラストレーション解消のために苦労することになるだろうと、ヴァンは思っていましたが・・・

「そうね!今日はチームワークを駆使して華麗にミッションコンプリートを狙うわよ!」

という一言により、その思惑は根本から覆されました。

というか「チームワーク」というエールが発するとは思えない言葉に、ヴァンは一瞬今日がエイプリルフール的な何かではないかと疑い、慌てて今日の日付を思い出します。

「えっと・・・今日は四月じゃないぞ・・・?」

返事は言葉ではなくパンチでした。右ストレートが彼の頬にしっかり決まりました。

「ぐぼぉ!」

病み上がりとは思えない凶悪な威力。ヴァンは弧を描くように飛び、高速で五回ほど回転すると地面に滑り込むように落下しました。それに伴い土ほこりが舞っています。

いつもにも増して強力なパンチを決めたエール。かなりお怒りのご様子でヴァンをしかりつけます。

「何馬鹿なこと言ってるの!セルパン・・・じゃなくてモヒカンのおっさんが徐々に力を付けてきてるからこっちが力不足になりがちになる。だから足りないパワーはチームワークで補おうとしてるの!アタシのこの親切心が分からないの!?」

「ごめん・・・でもそこは言いなおす必要ないような・・・」

「何か文句でもある訳?」

「何でもありません・・・マジすいません・・・」

普段は自分の事しか考えていないかと思ったら、この世界の事をちゃんと考えているエールに、ヴァンは何度も謝罪します。

もしかしたら、自分の事しか考えてないのは自分だったのかもしれない・・・そう深く反省しながら

「分かったのならそれでよろしい。じゃあとっととここにいるモヒカンのおっさんの部下倒して、パスコートゲットするわよ!」

「はい・・・」

エールに殴られた事、それと今気づいた己の真実。その二つにショックを受けてヴァンの心はすでにボロボロ。メンタルエネルギーゼロ寸前の状態になってました。

『(大丈夫かなぁ・・・)』

果してヴァンはミッションが終わるまで持つのか、モデルXは不安で不安でたまらなかったそうです。





溶岩に包まれたイレギュラーをぶっ倒し、二人は発掘現場の奥深くへと進みます。

発掘現場はあちらこちらに溶岩の川が流れる洞窟となっており、ふと溶岩の川に目を向ければ火柱が上がり侵入者の進行を妨げます。

さらにイレギュラーはほとんどの物が炎を出す火のイレギュラーで、二人は向かってくる炎を防ぎながら奥へ奥へと進みます。

「暑い」

「ああ。暑いな」

あちらこちらから来る溶岩の熱のせいでしょうか、溶岩地帯に足を踏み入れてから口数は一気に減りました。

会話すると言っても、エールが一方的に「暑い」と述べてヴァンが適当な返事を返すだけ。

体力と気力の消耗をできるだけ抑えるため、襲ってくるイレギュラーは攻撃範囲に入ってきた時にしか狙いません。この時点でチームワークうんたらは完全に蚊帳の外になっています。

「暑すぎてヴァンと二度と会話したくない」

暑くて暑くてイライラして、とりあえず適当な相手に八つ当たりしないと気が済まないエールは、天井を歩き回っているヤドカリ型のイレギュラーを討ち落とし、ヴァンに暴言を吐きました。

「二度とは酷くありません?」

暑くて暑くて勢いのあるツッコミを出すのも面倒になってきたヴァンは、その辺をウロウロしていたガレオンを斬り、珍しく丁寧な口調でツッコみました。

「気温が上昇するたびにアタシのイライラメーターが上昇して、さらに優しさが奪われていっちゃうのよね〜・・・今にもアンタを殴ってストレス解消したい気分だけど、余計な体力使いたくないからパスすることにするわ」

「俺の身の安全は溶岩の熱によって救われた訳か・・・こればかりは感謝せざる得ないな・・・。てかエールに優しさってあったっけ?」

「あ、アンタの後ろに背中に火炎放射器背負ってるガレオンが」

「嘘つきながら俺に向かってチャージバスター討つなよ!」

殴られて溶岩の中に突き落とされるよりはマシだと思いつつ、エールが放ったチャージバスターをよけてヴァン絶叫。

放たれたチャージバスターはヴァンに当たることなく、ゴミ拾いをしていた清掃係ガレオンの腕に命中。二度とゴミを拾えなくなりました。
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